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秋田から世界へ。M&Aを通じて介護事業の海外展開モデルを作る

2023年03月20日

秋田県を拠点に置き、介護事業を複数経営する阿波野聖一様は、2011年に「株式会社あきた創生マネジメント」を設立以降、M&Aで事業を拡大しつつ、現在4つの介護事業所を運営されています。バトンズを利用してのご成約は今回が2回目となる阿波野様に、M&Aの交渉で大事にされていることや、今後の展望、地方におけるM&Aのあり方についてお話を伺いました。

 


 

譲渡企業
社名 SKC株式会社
業種 サービス業(法人向け)
拠点 宮城県
譲渡理由 選択と集中

 

 

譲受企業
社名 有限会社おーがすと
業種 介護事業
拠点 秋田県
譲受理由 新規事業への参入

 


コロナが転機となり、海外展開を視野に入れた事業へ方向転換

Photo by iStock-1338380214

サラリーマン時代から介護事業に長年携わってこられた阿波野様は、2011年の東日本大震災を機に「株式会社あきた創生マネジメント」を設立。数年間ほど介護事業を推進されたのち、事業の存続と拡大のためにM&Aを検討し始めました。

「介護経営は国や時勢に左右される事業なので、どうしても売上変動が激しくて。事業を継続していくためにはある程度の規模感が必要で、効率性も求めていかなければいけません。そのため、2015年ごろからM&Aを検討し始めました。」

最初に継承されたのは、秋田県能代市にある2つの事業所。続いて、2019年にバトンズを通じて「有限会社おーがすと」を継承されました。2017年からの数年間で、5事業にまで事業を拡大してこられた阿波野様でしたが、2020年にコロナ禍が到来。介護業界にも大きな影響をもたらしました。

「もうね、すごい打撃でした。一人クラスターが出れば、利用者さんを止めなきゃいけない。3年以上それをずっと繰り返していると、もう売り上げなんてあってないようなものくらいまで落ちていくんですよ。飲食、観光業もかなりダメージを受けたと思いますが、介護も一緒なんですよね。風評被害もひどかったし、このままだと事業を続けていくのは厳しいなと。」

コロナによる大きな打撃を受けた介護事業でしたが、実は2017年ごろから外国人材の受け入れを行ってきており、教育コンサルにも力を入れていたのだそう。コロナ禍でメイン事業が八方塞がりになったことで、阿波野様は別事業に主軸の方向転換をはかります。

海外人材に関わるコンサル事業や介護現場のテクノロジーの導入コンサル事業の方で収入源を作ろうと、スイッチを入れ替えました。2022年には特定技能の登録支援機関を取得しまして、今回バトンズさん経由で引き継がせていただいたのも、海外のインターンシップ事業になります。」

10年先を見据えて、海外事業展開のための土台を作っていく

Photo by iStock-1248161455

今回阿波野様が引き継がれた事業は、海外の大学と日本の中小企業を結ぶインターンシップ事業。もともと海外とのパイプ作りを構想していた阿波野様は、今回のM&Aを機にそのビジョンを大きく前進させます。

「今後は、経験を価値に介護のノウハウ、また多様性が活きるチームづくりや教育を海外に持っていく流れを作りたいと思っています。

まずは人材を日本で受け入れてノウハウを教えて、それから海外で事業展開をする流れをイメージしています。」

スタッフ全員が外国人の介護事業所を国内に作り、それをモデルに海外展開を目指す阿波野様。国内の介護事業は少しずつ縮小していきながら、海外の比率を大きくしていく予定とのこと。

「諸外国は、日本と違ってまだ国自体が若いところも多いので、そもそも『介護』という概念がない国もあります。今は海外からの実習生が日本にきて介護の仕事をしてくれていますが、彼らが母国に帰ったとしても結局その仕事がない。

でも、10〜20年後には海外でも日本と同じように高齢化が進むわけじゃないですか。その時に、自分たちが今働いてる経験を母国で活かせるのであれば、今からその土台を作っていくことがすごく大事だと思うんです。」

今後の海外ニーズを察知し、日本でその土台作りを実行中の阿波野様。現在、インドネシア出身の働き手が14人ほどおり、今後も更なるインターン生を受け入れる段取りもしているそうです。

「あとは受け入れる側で、食文化であったり、宗教の文化を受け入れる土台を作りたいです。海外人材をどんどん受け入れて、この地域にいわゆるチャイナタウン的なコミュニティをどんどん作っていきたいなと思っています。

正直な話、これから日本国内だけでビジネスを拡大していくのは難しいと感じています。10年後の秋田なんて、どれくらい人がいなくなっているかわかりません。だったら、一緒に私たちが海外需要に乗っていった方がいいだろうなと。大学生のインターン生や、技能実習生、彼らがスキルをつけて、国に帰って、うちのノウハウを海外展開する。それを秋田から発信できればいいなと考えています。」

秋田を拠点に、海外展開に向けてM&Aを積極的に検討している阿波野様は、ビジョン実現の鍵は「海外にいる人とどれだけパイプを繋げていけるか」だと言います。

「事業展開は、観光客を呼び込むのとはわけが違うから、もっと太いパイプが必要になる。心揺さぶられるような事業を、またバトンズさんで見つけたいですね。」

お互いの事業に対する熱い想いが交渉成立の決め手となった

Photo by iStock-1390646116

今回の譲渡対象であるインターンシップ事業を事業譲渡されたのは、SKC株式会社の安達孝志様。バトンズで二度目のご成約を果たされた阿波野様に、安達様との交渉時のことについてお伺いすると
「今回は、交渉に入ってから成約までがかなり早かったんですよ。相手先も同じ東北で宮城県だったこともあり、1回面談をした段階で意気投合しちゃって。その次の次くらいには、お互いの会社を行き来して話して、値段交渉を少しして、譲渡まで結びつきました。」とおっしゃっておられ、人格的にもマッチしたお相手であったことが伝わってまいりました。

加えて、安達様とのやり取りの中で『事業に対する想い』を強く感じられたそうで、「社長さんも、本当は事業をやめたくはなかったんだと思います。ただ、コロナの3年間でどうしても事業転換しないといけない状況で、苦渋の決断としての事業譲渡だったはず。

外国人のインターン生に対しての想いが強くあったことに、私は共感しました。社長さんご自身も、想いを引き継いでくれる人じゃないと、どれだけ金額が高くても売りたくないというおっしゃっておられました。」とのこと。安達様が3年かけて作ってきた事業の想いを引き継ぐ先として、阿波野様の描くビジョンに託した形となりました。

想いを伝えるためにも、買う側は目的と条件をしっかり伝えることが大事だと思います。売り手さん側も、そこが明確でないと不安になると思うので。相手に想いがちゃんと伝わって、共感できるところまで持っていけなければ、必ず最後に問題になる。心配な部分や、マイナスに感じるところは、先に出してしまう方がいいですね。」

また、今回は売り手様のM&Aアドバイザーとして「ブルーバード合同会社」の鈴木様が仲介に入られていました。鈴木様はレスポンスの速さと事業理解度の高さがあり、交渉がスムーズだったと話します。

「これまで何度かM&A交渉を経験してきましたが、仲介会社さんの中には、意外と相手の事業内容を知らないまま喋っているケースもありまして。決算書しか見てなくて、事業説明をきちんとできない人とか。ただ売りたいという気持ちだけが前に出ている仲介会社もいることは確かです。

正直、数字の話だけされたって、それは過去の産物であって、今後どうなるかはわからないじゃないですか。『今まで』だけじゃなく『これから』どうなるかをある程度予測できてないと、仲介会社とやり取りするのは難しいなと思っていて。

その点、ブルーバードさんはちゃんと事業の説明ができて、今後の道筋や、最終的なサポートもできますと話をしていただけたので、そこがひとつの決め手になりました。」

前に進むために、M&Aを今後も取り入れていきたい

Photo by iStock-1372123791

成約後も、安達様に顧問的な立場としてサポートを受けつつ、1年ほどかけて徐々に引き継ぎを行っていくのだそう。稼働中の事業ということもあり、数ヶ月で全て引き継ぐのは難しいと阿波野様は話します。

「過去に1回、それで失敗した経験がありまして。ですので、前回バトンズさんで成約した際にも、半年ほど引き継ぎ期間を設けさせていただきました。

その時は従業員も20人ほど引き継いだので、スタッフを不安にさせないためにも、社長さんに半年残ってもらって引継ぎを行いました。社長が変わったら、急に辞めると言われる可能性もありますから。

引き継ぎはしっかりやる。逆に、自分は決算書はほぼ見ないですね。決算書よりも、人。会社の雰囲気と、社長さんの人柄。それから、その事業性がどうなのか、しか見ない。

今回は従業員さんの引継ぎはありませんでしたが、会社の雰囲気と社長の人柄で、会社のことは大体わかるんじゃないかなぁと思います。挨拶なんかは小さいことだけど、人としての根幹の部分だから意外と大事ですね。」

長年バトンズをご利用いただいている阿波野様に、最後にバトンズの変化感についてお伺いすると、サービスの充実度や案件数の増加について触れていただきました。

「当時と比べてかなりサービスが増えたし、M&Aの案件自体も増えていますね。でも、東北や秋田の案件はまだまだ少なくて。自分は、それが本当にもったいないなと思っています。地方ほど、後継者不足の問題が課題だと言われている割には、M&Aにネガティブイメージを持っている人がまだまだ多くて。

でも、会社のことを考えたり、今働いてくれるスタッフのことを考えたら、悩んでばかりいられないはずなんです。せっかく利用いただいているお客さんや取引先がいらっしゃるんだったら、黒字で倒産してしまうのはすごくもったいない話。

だからこそ、元気なうちに、引継ぎ先を探すっていう方が絶対いいと思います。私も、将来的にあと10年くらいでバトンを渡したいなとは思ってますね。」

会社の壮大なビジョンを描きつつ、さまざまな角度でM&Aを構想されている阿波野様。事業は今後どのような一途を辿るのか、その行方と可能性に期待が膨らみます。

阿波野様と有限会社おーがすとの今後のさらなるご発展を、バトンズ一同心より応援しています!

この案件を担当したブルーバード合同会社の紹介ページ

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