東京都新宿区、四谷三丁目という好立地にあるレストランバー「Orso Verde(オルソ・ヴェルデ)」がオープンしたのは、今から8年ほど前。気さくなマスターと腕利きシェフが営む隠れ家イタリアンは、タレントや業界人をも虜にしながら繁盛してきました。そんなオルソ・ヴェルデを、なぜ譲渡するという決断に至ったのか、継承先を決めた背景とともに、オーナーの大熊正秋様に詳しくお伺いしてまいりました。
譲渡事業 | |
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店名 | Orso Verde(オルソ・ヴェルデ) |
業種 | イタリアン・ワインバー |
拠点 | 東京都 |
譲渡理由 | 選択と集中 |
譲受側 | |
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区分 | 個人 |
業種 | 飲食業 |
拠点 | 神奈川県 |
譲受理由 | 起業・副業 |
兄弟で始めたイタリアン・レストランバー。目指したのは「お客様との距離が近い店」
元はイタリアン・レストランで接客をされていたという大熊様。当時の勤務先は事業縮小の一途を辿っており、その最中にいた大熊様は『誰かに雇われるということの不安定さ』を感じられていたそうです。
そのような背景もあり、自身で事業を興すことを検討するようになった大熊様は、同じく飲食業に携わり、イタリアンシェフとしてご活躍されていた弟さんと一緒に、2014年に本店舗を開業されました。
「うちはイタリアンレストランとしてお店を始めましたが、お客様が望めば和食も出しちゃうような使い勝手の良いお店にしたいと思っていましたし、ホームパーティみたいな感じで使ってもらってもいいとも思っていました。とにかく、利用者の要望に何でも応えられるお店でありたいと考えていました。
料理が美味しいのはもちろん大事ですが、価格の安さで勝負してしまうと、大手チェーン店には到底敵いません。そのため、私たちはお客様との距離が近く、彼らの隣りに座るようなイメージで、スナックのようなお店を目指しました。」
新規顧客をたくさん増やすというよりも、『コアなリピート客を増やす』ことを目指して運営されていたという大熊様。コンセプト通りのお店を実現するには、自分たちがお客様のことを把握することが重要で、そのためにはコアなリピート客で成り立つビジネスモデルを作る必要があると考えての構想でした。
「その甲斐もあってか、お店は『知る人ぞ知る隠れ家』的な場所として、タレントさんや業界の方々にもご利用いただけるようになって、比較的高い単価でお店を運営することができました。」
お二人の作るコンセプトは、一部のお客様がもつ需要と重なり、オルソ・ヴェルデは順調に常連客を増やしながら成長していきました。
コロナ禍を機に事業を見つめ直す中、心の中に芽生えた新領域への熱い情熱
そんな順風満帆な隠れ家レストランを、なぜ今回譲渡するという決断に至ったのか。そこには、コロナによって生じた余白の時間から生まれた、新たなビジネスへの心の変化がありました。
「一言で言えば、『新しいことに興味関心を抱いてしまった』ということですね。私たちのお店は年配の常連さんも多かったので、コロナ禍において『うちに来てください』とも言えず、お客様とお会いできない期間が長く続きました。
そんな中、お客様からうちの人気メニューである『フレンチトーストを自宅で食べたい』というご要望をいただいたんです。そこで、自宅でもお店と同じ味を再現できるようにレシピを改良し、2年がかりでようやく完成させました。そしたら、このテイクアウト用のフレンチトーストが想像以上に好評で、売上が伸びていきまして。
これまでは、お店という限られた空間でコアなお客様に対してサービスを提供していましたが、通販という形で広く多様なお客様に自分たちの作ったものを届ける、というのも非常に面白いと思い始めたんです。」
加えて、大熊様はコロナ禍で客数が伸びなかったことによって『食材の廃棄』に直面することになりました。お客様が来るかどうかわからない状態でも、食材を準備しなければならない店舗ビジネスは食品ロスが多く発生します。そのことは、大熊様の意識を食品業界の抱えるビジネス課題へと向かわせていきました。
「食品ロスは、多くの飲食店が抱える問題だと思います。一方で、飲食の通販は冷凍や真空パックという手法を用いるので、食材のロスがほとんど出ません。そういった意味でも、この新しい事業にやり甲斐や可能性を見出したんです。」
こうして新領域へと踏み出された大熊様は、自身を『そんなに器用ではない』と客観視されており、レストラン事業と通販事業、二足の草鞋は履けないとのことで、愛着のある四谷の店舗を譲るという考えに至りました。
譲渡の決め手は、ビジネス視点より「お客様が楽しめる場所」を創ってくれるかどうか
お店の譲渡について顧問税理士に相談してみたところ、ネットを利用した小規模M&Aというマーケットを知り、バトンズの登録に至った大熊様。譲渡先を探し始めてから3ヶ月ほど検討した末に、同じく個人事業主であった西澤様に引き継ぐ決断をされました。(譲渡スキームは、西澤様が新設した法人に譲り受け)
「譲渡先を決めるにあたって一番大切にしたのは、『自分たちが去った後のお店を盛り上げて、常連のお客様を喜ばせてくれる方かどうか』という点でした。
お店自体は順調でしたし、このまま続けていくこともできたのに、私たちは勝手にやめる決断をしたわけなので、ご利用いただいていたお客様に残念な想いをさせたくないと思っていました。だからビジネスセンスがどうかというよりは、面白いお店・楽しめる場所を創ってくれそうかどうかを見ていました。
西澤さんを選んだのは、何人かお会いした候補者の中で一番明るくて、好感の持てる方だったからです。彼女なら、たとえ自分がオーナーとしてレストランに残るとしても、相棒として一緒に仕事をしたいとも思えました。
また、元・自衛隊という経歴の持ち主でもある彼女は防衛省の知り合いも多いとのことで、そんなコミュニティが常連客の中に加わっていくのも面白いと思いました。」
登録した翌日から反響があり、多くの候補者が名乗りをあげた本案件。実は今回、M&Aアドバイザーとして合同会社アジュール総合研究所の伊藤圭一様が仲介に入られており、伊藤様の手厚いサポートがあってこそ成立したご成約でした。
「基本的には、私がお会いする前に伊藤さんの厳しいチェックが入っていました。伊藤さんが候補者の方と事前に何度かメールのやり取りをしてくださり、お人柄や本気度などを見て太鼓判を押してくださった方々とだけ面談をさせていただきました。
もしも伊藤さんがいらっしゃらなかったら、誰に会ってどんな話をすればいいかも分からなかったでしょうし、相手の何を見て熱量を判断すればいいのかも分からなかったと思いますので、本当に助かりました。」
伊藤様の陰のサポートもあり、無事にM&Aを終えられた大熊様は、新たに「合同会社ダブルプランニング」という法人を設立。「ORSO LABO(オルソ ラボ)」という飲食店で、通販商品やBtoB用商品を作る事業の準備を進めつつ、譲渡された店舗にもコンサルタントとしてサポートされるそうです。
「通販事業に加えて、飲食店のコンサルティング事業も始めようと考えていまして、実は西澤さんとも半年の契約を結んでいるんです。通販事業では、飲食業向けに、食ロス削減を目指した食材の卸業を考えていたり、やりたいことはたくさんあります。
今回の経験を通じて、M&Aというものに対する印象も大きく変わりました。当初は、M&Aといえば大手企業の買収劇というイメージがあったのですが、小規模M&Aというものがこんなにも身近で便利なものであり、活性化しているマーケットであるということに驚きました。今後は、自分で事業を育てて小規模M&Aとして売却するのもいいなと思っています。」
これから、新たなビジネスへの挑戦に向けて、晴れやかな表情が印象的だった大熊様。お客様にも社会課題にも真摯に向き合うクリエイティブな経営者として歩まれる次なる道に、活躍の期待が膨らみます。
大熊様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
大熊様、西澤様のご協力のおかげで、トップ面談から成約までスムーズに進行する事ができました。お二人のご尽力に、心より感謝申し上げます。今回のM&A成約のポイントは、「成約後に、大熊様と西澤様がビジネスパートナー化」されたことに尽きます。
西澤様は、買収意欲が高いものの起業して間もなく、不安や心配もありました。ですが、承継後、大熊様より当面の間は飲食事業のサポートを受ける事を条件として、懸念点を払拭。安心して事業買収に踏み切る事ができました。一方、大熊様は譲渡後に食品の通販事業を新規に立ち上げる予定でした。西澤様は大熊様より商品を仕入れることとなり、初めてのお得意先になりました。お互いの利益が合致し、「成約後もビジネスパートナー」として歩むこととなった成功事例です。
スモールM&Aにおいては、譲渡スキームに事業譲渡が多く活用される傾向にあります。事業譲渡の場合、売り手側は売り切りとなりシナジー効果がゼロとなってしまう事が一般的です。しかし、M&A交渉のみで終わることなく、成約後、お互いが「Win×Win」になるようなビジネスマッチング商談も同時に行うことで、事業譲渡代金プラスその後の定期的な売上も見込める形式で成約する事も可能なのです。
「M&A交渉」×「ビジネスマッチング商談」この二つを掛け合わせる形式でスモールM&Aをご成約いただく事は、新しいM&Aの在り方になるのではないかと感じた成功事例でした。
お二人のビジネスが、今後更に発展されることを、心よりお祈り申し上げます。
この案件を担当した「合同会社アジュール総合研究所」の紹介ページ
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