バトンズの中で20%近くにも及ぶ、飲食事業のM&A案件。今回、都内有数の好立地にお店を構え、12年以上続くカフェダイニング店を継承されたのは、上場企業のPMI活動と海外事業展開を軸としたコンサルテイングを行う「ConecTAr合同会社」になります。そこで代表社員を務める日下部俊彰様は、M&Aのご経験も豊富な起業家。そんな日下部様に、異業種である飲食業に参入された背景や、交渉時のこと、引継ぎ後の事業展望などについてお話を伺いました。
譲渡企業 | |
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スキーム | 事業譲渡 |
業種 | 飲食事業 |
拠点 | 東京都 |
希望条件 | スピード |
譲受企業 | |
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社名 | ConecTAr合同会社 |
業種 | 法人向けサービス・コンサルティング業 |
拠点 | 東京都 |
譲受理由 | 新規事業への参入 |
自走できる事業展開を目指し、M&Aの検討をスタート
もともと証券会社に勤務されていた日下部様は、投資案件やフィナンシャルアドバイザリー事業など、仕事を通じて多くのクライアントと向き合ってこられました。お客様との信頼関係を構築していく中で、直接お仕事のご依頼を受けるようになった日下部様は、2016年3月に独立を果たされます。
「お客様から事業を手伝ってほしいと言われたことをきっかけに独立し、今年で7年目になります。バトンズをチェックするようになったのは昨年ごろからで、自走できる事業展開をしていこうと思い、案件を探していました。」
属人性の高い日下部様の手掛ける事業は、個人のスキルや信頼があってこそ成り立つビジネス。万が一、日下部様が病気で倒れるようなことがあれば、事業が成り立たなくなるという不安定さも兼ね備えていました。事業の継続性を考えたとき、個人の能力に依存しないビジネスの基盤を作っていく必要性を感じた日下部様は、新たな事業の軸を作るべく、M&Aを検討し始めます。
業種は絞らず、幅広く案件を見ていたと話す日下部様。『事業の継続性があること』『10年以上の業歴があること』『従業員ごと引継ぎができること』の3点を重視しながら、案件探しを実施しておられました。
これまで、仕事を通じて多くのM&Aを経験されてきた日下部様ですが、上場企業が対象の案件だったため、小規模事業のM&Aは初めての経験でした。
「証券会社に勤めていたころにもM&Aに携わったことはありますが、ネットの方が、交渉依頼をして中身を見てみるまでわからない部分が多い、という印象があります。掲載情報と、情報開示依頼をして得られる情報の相違がある印象ですね。
また、売り手様に個人事業者が多いこともあって、こちらが資料をお願いしても断片的なものしかいただけなかったり、『資料が無くなりました』『覚えていません』と言われてしまうことがあるのも、上場企業では起こり得ない、小規模事業ならではのことです。
このように、小規模事業と上場会社ではM&Aで起こりうる事象に違いがあります。それは非常に勉強になりましたし、経験として今後の交渉に生かしていきたいです。」
数百億円単位のM&Aを行なってきたご経験がある日下部様にとって、M&Aを行うこと自体へのハードルは低かったものの、ネットを通じたM&Aは新鮮だったと振り返ります。
「先入観に囚われないように」データのみから事業を分析
バトンズに登録してからは、常時5~6件の交渉を並行して進めていたという日下部様。初めの頃は、良い案件を見つけていざ交渉を申し込んだら、すでに成約済みだったということもあり、M&Aマッチングサイトのスピード感に驚いたといいます。本業との違いを感じることもありつつ、成約に向けて複数の案件で交渉を進めていきました。
「『いいな』と感じる事業の共通点は、社長様がご自身の事業に対して思い入れがあるということでした。今まで自分が育ててきた事業を我が子のように思っていて、『自分は辞めざるを得ないんだけど、運営されるならここに気をつけた方がいい』など、事業を続けていってほしいという想いが伝わる方は、非常に好印象でした。」
バトンズでも、人気の高い飲食業のM&A。今回の事業継承にあたり、日下部様が大事にしていた判断基準を伺いました。
「実は、本案件を検討するにあたって、交渉が成立するまでお店には一度も行ってないんです。なぜかというと、最初にお店に行ってしまうと『雰囲気がいい』とか『お客さんの入りがいい』とか、現場を見た自分の先入観に囚われてしまうからです。
なるべく、今までやってきた通りに『累積された生のデータ』だけを見るようにしました。赤字の事業であっても、『データ上でどこに問題があって、なぜ収益が立っていないのか』を数字で分析して、立て直しが図れそうなら検討候補に残しました。
業種よりも、やりたいことよりも、そもそも事業が成り立つかどうかを数字に換算して、それを判断基準にした方がいい、と私は思います。」
異業種展開を進め、人材の維持と流動性を高める
今回の「カフェダイニング」店を引き継ぐ決断をした最終的な決め手は、店の規模感よりも『従業員が魅力的だった』ことだと話す日下部様。引継ぎ後も、従業員と密にコミュニケーションをとりながら関係性構築に務めています。
「もちろん、引継ぎ後は自分が現場に入ってサポートする場面もありますが、本業との兼ね合いもあるのでフルコミットはできません。なので、きちんと自走できる環境が整っているかどうかは一番大きいポイントでした。従業員の方々にはこれからお願いしたいことが山ほどあるので、まず初期の段階で誠意を見せて関係性を構築しないといけないと思っています。
そのために、なるべくいろんなことを共有し合い、すぐに対応できるようにしています。会話の頻度を増やすのはもちろん、常に連絡が取り合えるようにチャットツールも導入しました。」
今後も近いエリアでM&Aを展開し、本業以外の自走できる事業を伸ばしていきたいと語る日下部様。飲食の事業を軌道にのせることはもちろん、人材育成にも力をいれています。
「近いエリアでM&A展開を検討している理由は、人材の共有化ができるからです。今回引き継いだのは飲食店ですが、一定的な人材育成ができれば、横展開できるんじゃないかと思っています。そのまま残っていただいたスタッフさんには、私が今まで経験してきた事業運営のノウハウを教えています。」
引き継いだスタッフは20代が中心で、最年長が29歳。M&Aで他業種展開をすることで、いろいろなことにチャレンジしたい若手が活躍できる環境を作りたいと日下部様は話します。
「若いときって、いろんなことにチャレンジしてみたいじゃないですか。昔みたいにひとつの会社でずっと働くというよりも、転職を繰り返してスキルアップしていく人の方が多い。だからこそ、横に広く事業を展開させて、社内で環境を変えられるようにすれば、スタッフも長く勤めてくれるだろうし、楽んで仕事ができると思いまして。その仕組みづくりを、M&Aを通じて目指しています。」
飽きないために大事なことは、絶えず変化を重ねていくこと
最後に、これからM&Aで事業展開をしていきたいと意気込む方にメッセージをいただきました。
「事業継承を考える上で、やりたいことや利益よりも先に、そもそも自分が仮にその事業の一員になったときに、その環境に合わせられるかを考えた方がいいかもしれません。
飲食業であれば、お店の厨房で皿洗いができるか、から考える必要があると思います。それから、「好き」という気持ちだけでは多分続かないです。「好き」は「嫌い」にもなってしまうので。それよりも、「飽きない」ことが続けていく上で大事かなと思うんです。」
「飽きない」ために大事なことは、新しいことにチャレンジをし続けることだという日下部様。今回の事業を引き継いだ後、売り上げデータの管理をオンラインでできるようにしたり、出勤管理をタイムカードからスマホで打刻できるようにするなど、お店をより良くするための改善を続けています。
「本当に細かいことでも、事業を変化させ続ける。『売り上げを1億円にする!』という現場が見えづらい目標を伝えるよりも、『不要な経費を15万円削減できました』という目に見える変化を重ねていく方が現場は楽しいと思います。
もちろん、そうして出た利益は従業員に還元しているので、改善することで結果が出るとみんなも喜んでくれます。変化を実感として捉えることができることは、飽きないポイントの一つかなと思ってます。」
小さな改善の繰り返しと幅広い事業展開で、働きがいのある会社作りを目指す日下部様。次なるM&Aの検討先はどんな事業なのか、今後の発展に期待が膨らみます。
日下部様とConecTAr合同会社の今後のますますのご発展を、バトンズ一同心より応援しております!
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