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EBO(エンプロイーバイアウト)とは?意味や手順、事例を解説

2023年01月31日

後継者不足によって事業承継が大きな問題となっている昨今、エンプロイーバイアウト(EBO)という言葉を目にする機会が増えたのではないでしょうか。従業員に事業を買収させるというM&Aの手法で、特に中小企業の経営者にとっては自社の将来を考えるうえで選択肢に挙がることでしょう。

この記事ではエンプロイーバイアウト(EBO)について、概要からEBOを進める流れまで細かく解説します。EBOによる事業承継を検討している方は参考にしてみてください。

 

EBO(エンプロイーバイアウト)とは

従業員が自社の事業や株式を買い取って経営権を取得することエンプロイーバイアウト(EBO)と呼びます。従業員が会社の経営に対して投資をすることで、より積極的な経営を行うことができると考えられるため、ビジネスにおいて魅力的な選択肢の1つです。

エンプロイーバイアウトは、特に中小企業の事業継承において有効な手法です。中小企業は経営者の交代が困難なことが多いため、会社の継続性を確保するために従業員が経営に参画し、事業を継承することが望まれるケースがあります。

また、従業員が経営者になることで、従業員のモチベーション向上や離職率の低減が期待できます。会社の継続性を確保できる点でも優れているため、中小企業の事業承継を中心に用いられています。

しかし、資金調達や法的手続きが複雑なため、従業員がそれらを担当するのは困難です。そこで、第三者の金融機関や投資ファンドがサポートのために介入することがあります。必要な資金を提供し、法的手続きのサポートを行うことで買収を実現でき、買収後の経営においても資金調達や戦略の立て方などの支援を受けることができるでしょう。

エンプロイーバイアウトは経営者の交代が容易になり、会社の成長を促進できます。ただし、資金調達や法的手続きが複雑であるため、実施するには専門の知識やサポートが必要なことを理解しておきましょう。

 

EBOとMBOの違い

エンプロイーバイアウト(EBO)と対をなす、マネジメントバイアウト(MBO)というM&Aの手法があります。マネジメントバイアウト(MBO) は、会社の経営陣が自社の株式を買い取って経営権を取得することです。経営陣が自らの経営に対して投資をすることで、より積極的な経営を行うことができるでしょう。

2つの特徴を整理すると以下のようにまとめることができます。

【EBOの特徴】

・従業員が会社の経営に対して投資をすることで、従業員のモチベーションが向上し、離職率の低下が期待できる。

・従業員が経営者になることで、会社との契約関係が「雇用」から「投資」へと変化し、経営者と従業員のシンクロニシティ向上が期待できる。

・従業員が経営者になることで、会社の文化や価値観が保全され、会社の継続性を確保することが期待できる。

 

【MBOの特徴】

・経営陣が自らの経営に対して投資をすることで、経営陣のモチベーションが向上し、経営に対するコミットメントが高まる。

・経営陣が経営者になることで、経営戦略や方針の立て方において自由度が高まり、アグレッシブな経営が期待できる。

・経営陣が経営者になることで外部からの経営干渉が少なくなり、経営の自主性が高まる。

 

さらに2つを合わせたマネジメント・エンプロイー・バイアウト(MEBO)という手法もあります。マネジメント・エンプロイー・バイアウトでは、従業員と経営陣が共同で自社の株式を買い取って、経営権を取得します。

いずれも買収主体が全く異なるため、誰が買収するのかという点を必ず抑えておきましょう。

 

 

EBOによるメリット(事業継承と株式の非公開化)

EBOによる事業継承は、事業継承のための経営者の交代が容易になり、会社の継続性を確保することができます。そのほかにもビジネスにおいて効果的といわれる側面をいくつも持ち合わせているため、メリットを1つずつ整理して見ていきましょう。

 

スムーズな事業継承

EBOを用いて自社の従業員が経営権を取得することで、社風や経営方針を大きく変化させることなく事業継承ができます。 従業員は会社の文化や価値観を理解しているため、社風や経営方針を大きく変える必要がないためです。

第三者による買収の持つリスクを回避して、スムーズな事業承継が可能になります。

 

株式の非公開化

上場企業では、上場廃止を目的にEBOを行うことがあります。上場企業は株主に対して透明性を求められます。そのため、経営に対して挑戦的な投資をすることが困難な場合もあるでしょう。そこで、上場廃止を目的にEBOを行うことで経営の自主性を高めることができ、柔軟性を持った環境を整えることができます。

また、敵対的買収の回避にも有効です。EBOで経営者や従業員が経営権を取得することで、敵対的買収から会社を守ることができます。

 

EBOによるデメリット(資金調達と企業の成長)

EBOにはメリットだけでなく、いくつかのデメリットもあります。なかでも、資金調達企業の成長性についてのデメリットは、EBOを行う上で最も大きな障害となる可能性があるため必ず理解しておきましょう。

 

多額の資金調達が必要

EBOを通じて経営権を取得するためには、発行済みの株式数が多いほど多くの資金が必要となります。

一般の従業員が持っている資金だけで会社の株式を買い取ることは困難でしょう。そのため、金融機関からの融資や投資ファンドなどからの資金提供の検討が必要となります。

金融機関からの融資を受けるにも金利や返済条件については十分に調査し、適切な金融機関を選ぶことが必要です。

 

企業の成長が妨げられる恐れがある

EBOを実施した場合、企業の将来的な成長があまり見込めないというデメリットがあります。

従業員が後継者となることで、社風や社内環境を大きく変更することなく経営を続けることができるメリットがあると先述しました。しかし、言い換えると企業全体にプラスの変化をもたらすことは難しく、成長が妨げられることにつながるでしょう。

経営者を交代しただけで企業が成長するわけではないため、同時に業績を伸ばすための新たな施策を考える必要があります。

 

EBOを実施する流れ

ここからはEBOの流れについて5つのステップに分けて解説します。それぞれのステップの中では高度なテクニックや聞き馴染みのない言葉が出てくることもあるため、目的や手順を見過ごさず本質的な理解をするようにしましょう。

 

1.譲渡する従業員を選定する

まず初めに譲渡する従業員を選定します。選定の際に重要なのは次の4つです。

経営に対するコミットメント

EBOを実施するには、経営に対してコミットメントを示している従業員を選定することが必要不可欠です。ここで求められるコミットメントとは「決意を持って取り組む意向、またはそれを示す行動」です。

優秀で経営に対しても能力を発揮すると思われる従業員であっても、本人が経営にかかわりたいと思っていないなら、無理に任せることはできません。意欲的に経営に取り組んでもらうためにも、まずは本人の意思を確認してください。

 

経営経験

経営に対する知識経験が必要です。そのため、経営経験のある従業員を選定することが望ましいでしょう。ただし、経験がなくとも経営について学んでいる従業員がいる場合も候補になるでしょう。

MBAを取得している、あるいは社会人大学・大学院などで経営についての講座を長期間受講している従業員なども、候補として検討できます。

 

資金力

EBOとは、簡単にいえば従業員が会社を買い取ることです。会社の買収には大量の資金が必要です。資金調達を行うとはいえ、元から資金力がある従業員を選定することがスムーズなEBOにつながるでしょう。

ただし、資金力があっても経営に対する意思や経験がない場合には、事業承継後に会社の経営が傾く可能性があります。あくまでも、経営者としてふさわしいと思える人材であることが前提となります。

 

連結関係

連結関係とは、従業員同士が連結し、1つのチームとして働くことができるコミュニケーション能力です。多くの従業員と関わりあいながら進めるため、連結関係の良い従業員を選定することが必要です。

取引先との連結関係が良い従業員であれば、さらに良いといえます。どの会社も取引先とのかかわりのなかで経営が成立しています。スムーズな事業承継のためにも、取引先から信用を得られる人材を後継者に選びましょう。

 

2.株の比率を確認する

次に株の比率を確認します。EBOを成功させるためには、従業員が買収する株式の比率が十分に高いことが重要です。

株主が複数人で構成されている場合、各株主が持つ株式の比率が明確でないと、従業員が経営に対して権限を持てずEBOが成功する可能性が低くなります。そのため、持株の比率を明確にすることが重要であり、従業員が買収する株式の比率が十分に高い状態にすることがポイントです。

3分の2以上の株式を所有すれば会社の経営に関する重要な事柄を決定するため、EBOを行う際の理想的な比率といえるでしょう。

 

3.株価を算出する

株の比率を確認したら、次に株価を算出します。株価を正確に算定することで、従業員が買収する株式の価格を決定でき、企業の評価を正確に把握できます。また、必要になる資金を確定することもできます。

算定には、市場価値に基づく方法(比較企業メソッド、DCFメソッドなど)や収益に基づく方法(P/Eメソッドなど)があります。選択する算定方法は、企業の特性や市場環境によって異なるため、専門家に相談するのが望ましいでしょう。

 

4.譲渡を交渉する

次に譲渡の交渉を行います。どのような方法を選ぶかは、企業の特性や交渉の状況によって異なるため注意しましょう。ここでは主な4つの方法について紹介します。

 

直接交渉

従業員グループと株主が直接面談して交渉を行う方法です。

ただし、上場企業のように株主が多数存在する場合は、意見がまとまりにくく、交渉が決裂する可能性があります。株主がある程度限定されている、中小規模の会社に向いている方法です。

 

間接交渉

従業員グループと株主が交渉を行うために、第三者を介して交渉をする方法です。

M&Aの専門家であるM&A仲介会社に依頼することでも、交渉をまとめやすくなることがあります。従業員側・株主側のどちらにも与しない、中立的な立場の人物を選びましょう。

 

メディアション

交渉が頓挫した場合に、中立の第三者が仲介役を担う方法です。

交渉がうまくまとまりそうにないときは、最初から間接交渉を選ぶほうが二度手間を防げます。M&A仲介会社などの専門家に相談し、スムーズに交渉がまとまるようにしておきましょう。

 

アドバイザリサービス

交渉のサポートを行う専門のコンサルタントを活用する方法です。

売却価格はトラブルの原因になりやすいため、多少時間はかかりますが、株主一人ひとりと譲渡交渉を行っていくのがポイントです。

 

5.株式を譲渡する

譲渡価格が決定すれば、株式譲渡契約書を締結し、名義の書き換えを実施します。そのとき、譲渡制限が設定されていることに注意が必要です。

株式譲渡の手続きは、次の5つになります。

 

譲渡契約の書き込み

買収する従業員グループと株主の間で、株式の譲渡に関する契約を締結し、それを公認の弁護士によって書き込みます。

譲渡する株式数や、譲渡される後継者の氏名などに間違いがないか確認してください。ただし、株式のなかに譲渡制限付きのものがあるときは、譲渡契約を締結する前に譲渡承認の請求手続きが必要になります。

 

株主総会の承認

譲渡承認の請求手続きが必要なときは、定款で定められた譲渡承認機関で、譲渡承認の可否を決定します。譲渡承認機関が株主総会の場合には、株主総会を開催し、普通決議をとることが必要です。

なお、普通決議とは、発行済株式総数の過半数を保有する株主が出席した株主総会において、議決権の過半数の賛成によって決まる決議のことです。過半数の賛成を得られないときは、株式譲渡は実現しません。

 

株式譲渡の手形書作成

譲渡契約に基づき、株式を譲渡するための手形書を作成します。

手形書も、株式数や後継者の氏名などに間違いがないか確認必須です。不安なときは、M&A仲介会社や専門家などのサポートも得ましょう。

 

株式譲渡の手数料の支払い

株式譲渡に伴い、株式の価格に加え手数料を支払うこともあります。

たとえば証券会社をとおして取引するときは、売買手数料がかかることがあります。また、M&A仲介会社などのサポートを受けたときなども、手数料や専門家報酬が発生するため、あらかじめ準備しておきましょう。

 

株式譲渡の登記

株式譲渡により株主が変わっても、法務局に登記申請する必要はありません。また、株主の変更は定款変更の事由でもないため、定款変更登記も不要です。

ただし、株主の変更により役員が変わったことや、EBOにより新しい後継者が就任したことについては、登記事由(役員変更登記)にあたります。速やかに法務局で登記手続きをおこないましょう。

 

EBOを成功に導くポイント

ここからはEBOを成功に導くポイントについて解説します。企業価値評価と譲渡に応じる株価の検討が特に重要となるため、重点的に見ていきましょう。

 

企業価値を妥当に評価

株価が明確でない場合、株主は株価が適正かどうかを判断することができません。株価が適正かどうかを確認するために、独立の監査人やコンサルタントなどを活用し、株価を決定しましょう。

また、企業価値や株価を評価することで、従業員側も株価について公正かつ適正なものであることを確認することができます。
株価が明確でない場合でも、株主や従業員グループが協力し合って適正な株価を決定することで、株主の不安を解消するよう努めましょう。

 

既存株主が譲渡に応じる株価の検討

すべての株主から合意を得ることは難しいため、過半数以上の株主から合意を得ることを目指しましょう。株価が明確であることで、既存株主が譲渡に応じる意向を持つ可能性が高くなります。株主が出資した金額をもとに、買取金額を提示することも有効な方法です。

しかし、過半数であっても株主から合意を得ることが難しい場合も十分考えられるでしょう。合意を得ることが難しい場合は、次のような対応をとることが求められます。

 

株主の代表者と交渉

株主の代表者と交渉を行うことで、譲渡に同意する株主を増やすことが可能です。株主の代表者とは、株主のグループを代表してEBOに関する交渉を行う人物のことを言います。

ほかの株主から信頼を得ている代表者であれば、譲渡に同意する株主も増えやすくなると考えられます。丁寧に交渉し、お互いに納得できる株価を探っていきましょう。

 

譲渡条件を再検討

譲渡条件を再検討することで、株主にとって有利な条件を提供することができ、譲渡に同意する株主が増えることが期待できます。

株価を高めに設定すれば、譲渡に同意する株主を増やせるかもしれません。ただし、高く設定しすぎると後継者の負担を増やすことにもなるため、妥当な価格に少し上乗せした程度が望ましいといえます。

 

専門家に相談する

EBOは専門的な知識が必要なため、ハードルが高くなります。そのため専門家に相談することもポイントの1つです。以下では、主な相談先を挙げています。

それぞれ得意とする領域が異なるため、事前に状況を整理して相談をするようにしましょう。

⚫︎M&Aアドバイザー
企業の買収や売却に関する専門知識を持っています。EBOについての相談やアドバイスを受けられます。

⚫︎法律事務所
EBOに関する法律上の問題や、契約書の作成などについての相談を受けられます。

⚫︎会計士
EBOに関する財務や税務上の問題についての相談を受けられます。

⚫︎不動産コンサルタント
EBOに関する不動産や建物に関する問題についての相談を受けられます。

⚫︎コンサルタント
EBOに関する戦略や組織に関する問題についての相談を受けられます。

 

 

EBOの事例を紹介

ここで、EBOの成功事例として有名になったユニゾホールディングスとシックスアパートの事例について、ご紹介します。

 

ユニゾホールディングス

ユニゾホールディングスでは、米国の投資ファンドであるローンスターからの支援を受け、2020年4月にEBOを成立させました。同社の目的は、経営権の外部流出防止です。

ユニゾホールディングスはHISからTOBを仕掛けられた歴史を持ち、ホワイトナイトとしてフォートレス・インベストメント・グループが実施するTOBに賛同すると表明しました。

しかし、経営陣と意見が一致せず、EBOを実施することによって事態の脱却をはかり、見事成功させました。

参考 | 東京商工リサーチ

 

シックスアパート

次に紹介するのがシックスアパートです。経営・組織のスリム化や、海外展開を促進する目的でEBOを実施し、経営陣と従業員が新会社の「シックス・アパート・ホールディングス株式会社」とする形で成功させました。

このEBOは、親会社であるインフォコムの支援を受けて成立したと発表されています。米国市場への参入を確実にするために実施したEBOは、同社の再スタートの象徴となりました。

参考|Six Apart ニュース

まとめ

EBOは、従業員が自社の事業や株式を買い取って経営権を取得することで、中小企業の事業継承などを中心に活用されています。

EBOにはメリットもありますがデメリットもあり、資金調達や株主同意取得などが大きな課題です。それらの課題をクリアしてEBOに成功するためには、株価や譲渡条件の確認、株主との適切なコミュニケーションのほかにも専門家への相談が重要です。

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