昭和7年創業、今年で90周年を迎えられた名古屋市にある老舗の文房具専門店「株式会社あかえんぴつ」。今回お話をお伺いさせていただいたのは、地元に愛され続ける文房具専門店の4代目として、事業承継に成功された片桐 由美子様です。
歴史ある事業を継続されてこられた片桐様が、今回M&Aを実施するに至った背景は何だったのか。交渉を進める中でのお話を含め、詳しくお伺いしてまいりました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社あかえんぴつ |
業種 | 小売業(文房具店) |
拠点 | 愛知県 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
区分 | 法人 |
業種 | 製造・販売業(陶磁器製品)など |
拠点 | 岐阜県 |
譲受理由 | 既存商品・サービスの強化 |
地元で愛されている文房具専門店。大学卒業後すぐ4代目として就任
あかえんぴつは、愛知県名古屋市にある老舗の文房具専門店。大学や小中学校、多数の塾が点在している文教地区にお店を構えています。勉強に必要な文具はもちろんのこと、社会人用の事務用品やオーダーメイドの印鑑、雑貨用品なども取り揃えており、老若男女問わず幅広い層から支持されるお店でした。
そんな店舗を運営するあかえんぴつは、2022年現在で創業90周年。4代目社長として就任された片桐様は、大学卒業後すぐに先代のお父様から会社を引き継がれたため、30年以上に渡り事業を継続されていることになります。
元々は、卸売業と小売業という二つの事業を営んでおりました。片桐様のお父様がご病気で亡くなられたことで急に引継ぐことになり、加えて周囲のアドバイスから2つの事業を運営していく難しさを感じた片桐様は、社長に就任した数年後に卸売業のみを事業譲渡する決断をされました。
その当時、20代でM&Aをご経験される方は珍しい中で、さらに引き継いだばかりの会社経営をこなしながら進められた片桐様。ご自身で本を買って勉強をされたり、親戚の会計士に力を借りたりしながら、なんとか初めての事業譲渡を終えられたのでした。
「面談に失敗しても大丈夫ですから」売り手サポーターの一言に、堂々と継承先を選べた
親族内に後継者がいなかったことから、「判断力や体力面など、身体がしっかりとしているうちに承継先を決めたかった」と話す片桐様。愛知県事業承継・引き継ぎ支援センターで後継者不在の現状をお伝えしたところから、トントン拍子で話が進んでいったそうです。
引き継ぎ支援センター経由でバトンズの紹介を受けた片桐様は、バトンズの担当者である二木がサポーターに入る形で後継者探しをスタート。引継先の希望条件として、「ご夫婦で仲良くやっていっていただける方であればお店が回ると思うので、そういった方にお譲りしたい」とお伝えしたそうです。
一方で、事業に対する想いやお店の現状を確認した二木からは「異業種の会社や、法人として事業を拡大をしたいという方も含めて、幅広く探してみてください。長年築き上げてきたあかえんぴつ様を成長させてくれそうな方と、是非進めてみてください。」というアドバイスを受けたのだそう。片桐様が想像していなかった引継先の選び方を提案されて大変驚かれたとともに、本当にそんな買い手希望者が現れるのかとこの時点では半信半疑でした。
しかし片桐様の懸念に反して、掲載後すぐに多数の買い手希望者から交渉依頼が届きました。
承継先を検討するにあたり、対面や電話にて候補者の方々とお話をされた片桐様。当初は緊張もされていたそうなのですが、二木からの「片桐さん、現在で17者の方から問い合わせがあるので、安心して面談してください。失敗しても大丈夫ですから。」という一言で気持ちが楽になったといいます。
当時の心境について、片桐様は「先がないと思うと焦ってしまいますが、まだたくさんあるからと言ってくれまして。後があると思えば自信を持って話すことができました。」と笑いながらお話ししてくださいました。
若くして会社を引き継ぎ、苦労もありながら38年もの間、社長を続けてこられた片桐様。事業についてお相手の方と気負いせずに話せたことは、今回のご成約をスムーズに進める要因となったのかもしれませんね。
次は新店舗の責任者⁉︎やり手社長様と歩み続ける「株式会社あかえんぴつ」
最終的に選ばれた引継先は、食器や陶器を扱うメーカーの買い手様。異業種ではありますが、学校給食用の食器を取り扱うなど、基盤がしっかりとしている会社であったため、安心して引き継ぎを決められたと片桐様は話します。
「相手の社長様とは、相性が良いといいますか。お互い気兼ねなく話ができたので、非常にやりやすかったです。」
条件交渉の際、社員を今までと変わらない待遇で迎え入れてほしいということを先方にお伝えしたところ、今まで以上の好待遇で迎え入れる決断をしてくださったそうで、そのことには片桐様も非常に満足されているご様子でした。
また、成約直後には交流の機会も含めて、先方の店舗へ手伝いに行く機会があったそうで「社員のみんなも興味津々でしたし、新しいことに触れて良い刺激になったんじゃないでしょうか。」と、引き継ぎ後のご状況について楽しそうにお話しくださいました。
現在は、あかえんぴつの新たな店舗責任者を募集をしており、後継者が育つまでは、私が潤滑油にならなければいけないと意気込む片桐様。先日、今後の流れを買い手の社長とミーティングをした際には「店長候補が決まったら、1年くらいかけて業務を覚えてもらって。来年からは悠々自適しますね。」と伝えると、社長から「新しい店舗へ出店する話が持ち上がってるから、片桐さんに立ち上げを任せたい。そちらもよろしく!」という返答が。
その時の驚きについて語りながら「お役に立てることなら何でもします。」と笑って話す片桐様の声には、新しいことへチャレンジする期待感も混ざっているように感じました。
承継後の引継ぎについては、社長様や取引先のメーカー様にご挨拶に行かれた片桐様。驚きの声をいただいたという一方で、温かい言葉もたくさんいただいたそうです。
「とてもいい選択をしましたね、と色んな方にお声をかけていただきました。『同じ文具店を営む小売業として、同業がなくなるのは辛い』という声もありましたし、『高齢者の多い文具業界で、こういった形で事業を残せていけるなら、後継ぎがいない人に教えてあげたい』とも言っていただきました。私自身、まだまだ紙と鉛筆は必要な時代だと思っているので、いい形で残っていく老舗が増えたらいいなと思います。」
無事に事業承継に成功され、今後も新たな形であかえんぴつに携わっていく片桐様。M&Aで思い入れのある店舗も存続し、ご自身の新しいキャリアの選択肢も手に入れられた、業界では大変先進的な事例ですね。
片桐様と株式会社あかえんぴつの今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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