そもそも事業承継とは何なのでしょうか?
事業承継とは、会社の所有権、経営権、資産、負債、ノウハウ、経営理念など、事業に関わるものすべてを後継者に引き継ぐことです。
事業承継には、
・親族内承継
・従業員承継(社内承継)
・第三者承継(M&A)
の、3種類があります。事業承継を実行する際は、承継される会社の状況や環境に応じて、3つの選択肢から検討を行い、後継者に会社や事業を託します。
ではどうやって、この3つを使い分ければいいのでしょうか?
今回は、事業承継の3つの種類について具体的に解説して行きます。
※特に、3つ目の第三者承継はM&Aを検討されている方には、是非、知っておいて頂きたい承継方法となるので、必ずご覧ください。
【監修者プロフィール】
スモールM&Aアドバイザー/ M&A支援機関登録専門家
伊藤 圭一(いとう けいいち)
「小規模企業と個人事業の事業承継を助けたい!」そんな想いから、2019年7月に小規模事業専門のM&Aアドバイザー「スモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所」を設立。
「合同会社アジュール総合研究所」の紹介ページ
【必見!】巻末にスモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所 代表 伊藤よりM&A実務に即したワンポイントアドバイスや注意点も掲載しています!是非、最後までご刮目下さい!
事業承継の3つの種類
それでは、事業承継の3つの種類について、解説して行きましょう。
親族内承継
親族内承継とは、現経営者の「子や親族」に会社を承継することです。まさに親族の誰かに承継するという意味ですね。
親族内承継のメリットは、
・世間的にみても、心情的に受け入れられやすい
・事業承継について、長期間の準備期間を確保しやすい
・相続等による財産・株式の後継者移転が可能といった背景から所有と経営の一体的な承継が期待できる
などが挙げられます。
親族内への承継は最も自然な承継方法と言えますが、現経営者の子が遠隔地に勤務しており、地元に戻り経営者となる意思がない、現経営者が子に経営の負担を負わせたくないなどの理由により、親族内での承継が近年減少傾向となっています。
その結果、親族内に会社を承継する適任者が不在となり、現経営者の引退に伴い会社を清算してしまうケースさえ多く出てきています。これがゆえに、日本経済を下支えしている全国の中小企業が減少する事となり、深刻な社会問題となっています。
従業員承継(社内承継)
従業員承継(社内承継)とは、「親族以外」の従業員に会社を承継することです。
従業員承継(社内承継)のメリットは、
・現経営者が、経営者としての資質のある人材を見極めて承継することができる
・長期間働いてきて会社について熟知した従業員であれば経営方針等の一貫性を期待できる
などが挙げられます。従業員承継(社内承継)は、親族内承継の次に検討される承継方法です。
「親族がだめなら従業員に白羽の矢が当たる」というのはごく自然な流れであるため、周囲からの理解を得やすい傾向にあります。
しかし、これにも親族内承継同様、問題点が存在します。社内に経営者としての資質の有る人間が存在しない、現経営者が指名した従業員が承継を受け入れないなどの理由で、後継者難となるケースも多いのです。
特に、小規模企業ともなればワンマン経営の会社である事が一般的で、現経営者の代わりとなる人材を社内に確保しておく事は少なく、現経営者の引退と同時に会社を清算してしまうケースが殆どとなります。
親族内承継の問題点同様、これに伴う中小企業の減少は日本経済に大きなダメージを与えることとなります。
第三者承継つまりM&A(Mergers and Acquisitions-合併と買収)
第三者承継とは、「社外の第三者(企業や創業希望者等)」へ株式譲渡や事業譲渡により会社を承継することです。
つまりこの承継方法が、「M&A(Mergers and Acquisitions-合併と買収)」のことです。
第三者承継のメリットは、
・親族や社内に適任者がいない場合でも広く候補者を求めることが可能
・現経営者は会社売却の利益を得ることができる
などが挙げられます。
前述した、親族内承継と従業員承継(社内承継)の問題点を解消し、日本全国の中小企業の事業継続性を保持できるという観点から、近年、M&Aでの事業承継が活発に行われてきています。
特に、小規模企業や個人事業の小規模M&A(スモールM&AまたはマイクロM&A)においても、近年、多くのM&AマッチングサイトやスモールM&Aアドバイザーが現れたことで注目されてきています。
第三者承継(M&A)は、親族内承継・従業員承継の問題点を払拭できる方法として、日本経済の屋台骨を支える中小企業を存続させる最も有効な手段と言えるのです。
政府としても中小企業の事業承継を後押し
政府は、中小企業の後継者不足による事業継続不安を解消するため、事業承継を後押ししています。
中小企業庁のホームページには、事業承継に関する特設ページがあります。
特に、事業承継の支援施策のページには、事業承継を後押しする支援策が掲載されており、事業承継に関わる補助金についても案内されていますので、是非、ご覧ください。
【中小企業庁ホームページ】
事業承継の支援施策のページ:https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/business_succession_support_measures.html
まとめ
以上、「そもそも事業承継・M&Aとは何?事業承継の3つの種類」を、解説しました。
事業承継には、
①親族内承継
②従業員承継
③第三者承継(M&A)
の、3つの種類があり、更に中小企業庁でも事業承継を後押ししている事がご理解いただけましたら幸いです。
そして現在、後継者不足でお悩みの経営者の方がご覧いただいているのなら、スモールM&Aアドバイザーよりお伝えしたいことがございます。
それは、「事業承継を諦めないで頂きたい。」
その一言に尽きます。
「うちはどうせ売却出来ないから自分の引退と一緒に会社をたたもう。」
特に小規模で経営されている経営者様に、そう言うお考えの方が多くいらっしゃいますが、会社を清算してしまうと、ご家族、従業員、お取引先など、事業に関係されている方は、いったいどうなってしまうのでしょうか?
そして何より、今まで苦労して経営してきた大切な会社です。
大切に育ててきた会社を、清算ではなく、思いを大切に受け継いでくれる方へ会社を承継する事が経営者としての最後の役目なのではないでしょうか?
そしてそれが、最高の花道なのではないでしょうか?
事業承継を諦めないでください。
スモールM&Aアドバイザー 合同会社アジュール総合研究所からのワンポイントアドバイス!
みなさんこんにちは!
この記事を監修させて頂きました、スモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所の代表の伊藤と申します。
ここからは、スモールM&A専門家である、わたくし伊藤が、M&A実務に即した、成約に大きく前進するためのアドバイスと注意点などを、なるべくわかりやすく(そして、くだけた感じで?)スモールM&Aの現場の経験をもとに解説していますので、是非、ご刮目下さい!
はいっ!
「そもそも事業承継・M&Aとは何?事業承継の3つの種類」について解説してきたわけですが、いかがでしたでしょうか?
タイトルをご覧いて、正確に事業承継の3つの種類をシレっと言えた方はどのくらいいましたかね?
ちゃんと理解されていない方の方が多かったのではないでしょうか?
近年、中小企業のM&Aが活発に行われるようになったと言っても、まだまだ世間的には浸透していないので、事業承継に対する正しい知識をお持ちの経営者は少ないと思うんですね。
それもそのはず。
事業承継やM&Aと聞くと、何やら難しいものと感じるようで、それは大企業だけがする事で、ウチの会社とは全く無縁のものであると考えている経営者が殆どだからです。
いささか興味を持った方でも、ネットや本を開いてみては、難しい用語ばかり…
すぐにブラウザーやページを閉じてしまったご経験はありませんか?
やっぱり難しいですよね。M&Awww…。
人間、中身がよくわからないものには手を出したがらないもので、事業承継・M&Aというワードに、ますます拒絶反応を起こしてします。
そう言った事もあり、私自身は、お客様から事業承継のご相談を受けた際、まずは事業承継・M&Aについての基礎知識をご説明することから始めているわけでして。
なぜならば、お客様にも基礎的な知識を認識してもらわないと、足並みをそろえて一緒にM&Aプロセス(M&Aの手順)を踏めないからなんですね。
私一人がずんずん前に進んでしまっても、お客様が付いてこれない限り、正常な思考で最終的な自己判断ができず、結局M&Aは失敗してしまいます。
M&Aアドバイザーは、事業承継においての計画(戦略)策定や、難解な手続きの処理、アドバイス、条件交渉など、様々重要な役割を果たしますが、売るか止めるか(売り手側だけの話になってますが…)の判断は、ご自分で下さなければならないわけなんですね。
そのためにも、ある程度の知識は持っておいていただきたいんです。
そういう意味でも、今回の記事の内容というのは、事業承継・M&Aについての基本中の基本であり、ムチャクチャ重要なお題だったわけですよ。
是非、今回の内容はおさえて頂きたいところですね。
と、前置きが長くなってしまいましたが、今回もワンポイントアドバイスを、お話ししましょう!
第三者承継(M&A)におけるワンポイントアドバイス!
今回は、売り手側、買い手側に分けて第三者承継(M&A)におけるワンポイントアドバイスをご紹介します!
【売り手必見!】第三者承継(M&A)をスムーズに行うためには!?
売り手側が、第三者承継(M&A)をスムーズに進めたいのであれば、まずは売却するための準備が必要です。
なぜならば、M&Aアドバイザーに依頼するにせよ、M&Aマッチングサイトを活用し、独自で売却するにせよ、まずは会社や事業を売り物にしなければならないからなんですね。
準備する事としては、
・事業承継・M&Aに必要な資料を準備しておく。
・自社の財務内容を把握しておく。
・自社におけるビジネスモデルの再確認、業務などの棚卸しをしておく。
・自社のビジネス上の強み・弱みを把握してく。
・自社の経営上の問題点、売却する事によるリスクを把握しておく
・株主の賛同を得ておく
などが、挙げられます。
M&Aマッチングサイトで買い手を募集する際は、これらの情報を元にしたノンネームシート(実名を伏せた案件の簡易概要書の事)を、サイトに掲載申請し、買い手候補を募るわけなんですね。
しかし、上記で挙げたものの準備がおろそかになると自社の内容が何も伝わらないものとなり、買い手から大幅な値下げ交渉をされる可能性も出てくるのです。
これ結構重要なはなしで、値下げして売却できるならまだしも、買い手がつかない恐れさえ出てきてしまうんですね。
これを未然に防ぐために、まずは準備すべきものをそろえ、自社を「商品化」しなければならないわけです。
準備すべき資料やノンネームシートの作成方法については、M&Aアドバイザーに相談しながら進めて行く事を推奨します。
(というか、ノンネームシートはM&Aのプロである、M&Aアドバイザーに書いてもらいましょう!)
【買い手必見!】第三者承継(M&A)をスムーズに行うためには!?
買い手側が第三者承継(M&A)をスムーズに進めたいのであれば、まずはM&A計画の戦略策定が必要です。
特に、スモールM&A上、よくあるケースですが、「ノリと勢いで買収する」買い手も沢山いらっしゃるんですね。
買収理由は「利益がでているから」「希望買収業種(または地域)だから」などというもので、シナジー効果や買収後の運営方法などを全く考えていないケースですね。
(まあ、それでもいいんですけどね…)
これはスモールM&A特有の論点なんですが、買収金額がそこまで高額とならないため、M&A計画の戦略策定を疎かにしてしまうわけなんですよね。
買い手側にとってのM&A戦略は、M&Aを成約するまでではなく、買収後、事業を成功させ、その後も事業を拡大させる事を念頭に設計しなければいけないわけですよ。
そのためには、シナジー効果やPMI(ポスト・マージャー・インテグレイション※これについては、またまた奥が深いので、詳細はいつか別の記事でお話しますね)を意識したM&A戦略の策定は必須となるわけです。
戦略策定の検討項目としては、
・買収目的の明確化(事業規模拡大、新規参入、はたまた独立など)
・期待するシナジー効果(水平型、垂直型など)
・買収予算(資金調達も含む)
・買収地域(地域集中、エリア拡大、ドミナントなど)
・買収時期(いつまでに)
・買収検討先が決まっているのであれば、買収動機や買収後の将来像の考察
・M&A担当者(社長自身、経営企画部など)
・グループ企業であれば、どの子会社の下に付けるか?
・M&Aアドバイザーを付けるか否か?
などが、挙げられますが、「5W1H」を意識してもらえれば、分かりやすいですかね?
最低でもこれがしっかりしてないと、売り手との交渉の時に、
「この人は、なんでウチを買収したいんだろう?売却して大丈夫かな?」
思われてしまうので、交渉を打ち切られてしまうんですね。
まあ、逆の立場で考えてもらえれば、いままで育ててきた大切な会社を、何の計画も持たない人には売却したくないですよね。
ここら辺は、M&Aのお作法的というか、最低限のビジネスマナーというか…
かの有名な、吉田松陰先生も言ってますよね。
ノリと勢い任せのM&A成約は厳禁ですよ!
今回記事の「まとめ」の「マトメ」
以上、「そもそも事業承継・M&Aとは何?事業承継の3つの種類」をご紹介しました。
今回の記事は、事業承継・M&Aについてのかなり基礎的なお話をしましたが、このサイトが、M&Aマッチングサイトであるバトンズさん(成約実績No.1のM&A・事業承継支援サービスの!)という事もあり、第三者承継である、M&A(Mergers and Acquisitions-合併と買収)についてが、最も印象に残ったのではないでしょうかね?
ワンポイントアドバイスについても、売り手側、買い手側の基本的な部分をお話ししてみました。
記事のお題自体が、基礎的なお話だったので、ワンポイントアドバイスも心得的な内容となりましたが、M&Aはまだまだ奥が深いですよ!
別の機会に、もっと深堀したM&A実務におけるネタをご紹介しますので、これからもご覧いただけますと幸いです。
最後に、みなさまのM&Aが、安全にご成約されることを心よりお祈り申し上げます。
それではまた次の記事でお会いしましょう!
こんなお悩みありませんか?
つなぐマッチングプラットフォームです。
累計5,000件以上の売買を成立させています。
またM&Aを進めるためのノウハウ共有や
マッチングのための様々なサポートを
行わせていただいておりますので、
まずはお気軽にご相談ください。
編集部ピックアップ
- M&Aとは?流れや注意点、スキームなどを専門家がわかりやすく解説
- 事業譲渡とは?メリット・手続き・税金などについて専門家が解説
- 中小M&Aガイドラインとは? 概要や目的を詳しく解説
- 企業買収とは?M&Aとの違いは何?メリットや手続きの流れをわかりやすく解説
- 会社売却とは?M&Aのポイントや成功事例、IPOとの違いも解説
- 【完全攻略】事業承継とは?
- スモールM&AとマイクロM&Aとは?両者の違いとメリット・デメリットを解説
- 合併とは?会社合併の種類やメリットデメリット・手続きの流れ・必要書類を解説
- 後継者のいない会社を買うことで得られる多くの利点とは?
- カフェって実際のところ儲かるの?カフェ経営の魅力と開業方法
その他のオススメ記事
-
2024年12月11日
人の命を守るバックミラーの製造。父から受け継いだ誇りある仕事を、熱意ある会社へ事業承継
大阪府を拠点にアルミミラーを中心とした製造・加工業を営む「株式会社尾崎鏡工業所」は、2024年9月、愛知県でガラス製品の製造加工等を手掛ける「...
-
2024年09月17日
トラック・運送業のM&A動向 | メリットや事例について解説【2024年版】
運送業界は、 M&Aの需要が高まっている業界のひとつです。その背景には、後継者不足や2024年問題などさまざまな理由があり、事業規模の大小問...
-
2024年09月05日
未来への想いを共有できる会社とM&Aで手を組みたい。バディネットは、すべてのモノが繋がる社会を支えるインフラパートナーへ
2012年に電気・電気通信工事業界で通信建設TECH企業として創業したバディネット。2024年現在、5社の買収に成功して業容を拡大させています。今回は...