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2024/02/26

「文書『情報』管理」による自社の磨き上げ

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改正電子帳簿保存法対応に見る文書管理
 改正電子帳簿保存法(以下、「電帳法」)対応の宥恕期間が終了し、2024年1月よりいよいよ対応適用となりました。皆様の会社・事務所ではもう対応済みでしょうか。電子で受け取った帳票書類は電子での保管が義務付けとなる一方で、紙で受け取った帳票書類はスキャンをして電子データでの保管ができるよう対応が緩和となります。電帳法の対応方法に関しては、新たなシステムの導入や、既存システムと訂正削除などの必要な運用規定の策定を作成するなど、様々な対応を行われたと思います。また、その対応には、実質的な支出費用が掛かったり、対応による業務の負担が増えているなど耳にします。これらの業務対応を費用対効果の面だけで考えるか、自社のDX化を実現し自社の磨き上げにまで目を向けるのか、文書管理の視点で少し考えてみたいと思います。
電帳法対応とDX
 そもそも、電帳法への対応を法令面だけで考えるのか、この法対応を機にDX化(大義での業務改革や狭義での業務改善・効率化含め)まで視野に入れるのかによって、その過程と結果が大きく変わってきます。私は現在、電帳法対応システムの提案にも携わっていますが、法対応だけで考えている場合は、電帳法対応業務のやらされ感などから文書管理としては上手く浸透しないケースが多いと感じています。電帳法対応に取り組むことで単なる法対応の面だけでなく対象の帳票や文書の整理により業務の棚卸を行い、文書管理を実施することで自社業務のDX化にもつながります。 
目に見えない「探す時間」のコスト
 業務の棚卸による文書管理の効果はなかなか目に見えない効果ですので、疑問に思う方もいるかもしれません。そんな疑問の解消に少しご参考となるお話が「探す時間」のお話です。 一般的に「探す時間」は以下の通りに掛かると言われています。(いずれも一人当たり) ① 『書類』を「探す時間」 20分/日(≒年間約77時間)(コクヨ調べ※1) ② 『物』を「探す時間」 150時間/年(PRESIDENT Online※2) ③ 『情報』を「探す時間」 労働時間の約3割(≒144分/日 年間552時間)(JIIMA「文書情報マネジメント概論」※3) 年間の労働日数を230日で考えますと、年間での総時間は、それぞれ①約77時間、②150時間、③552時間となります。従業員の人数や時給で換算すると、どれだけの時間とコストが掛かっているでしょうか。「文書管理」の取り組みにより、この「探す時間」の削減をご提案します。この取り組みは業務時間を削減し業務の効率化を進めると共に、コスト削減も実現し労働生産性も向上させることによりDX化の推進に貢献します。
「文書『情報』管理」による自社の磨き上げ
 「文書管理」や「紙文書の電子化(ペーパーレス化)」という話は以前からよく耳にします。しかし、「『文書管理』?どうもうまくいかないよね」「とりあえず紙をスキャンしておけばいいよね」「あの書類どこにあったっけ?電子化しても探せない」などの話もお聞きします。なかなかうまくいかないようです。  私は、「文書管理」における「探す時間」を短縮しDX化を実現する秘訣は、「文書『情報』管理」と考えます。先述の「『文書管理』?どうもうまくいかないよね」、「とりあえず紙をスキャンしておけばいいよね」というご経験に対して、それぞれの文書のインデックスへ属性などの『情報』(キーワードなど)付与をお勧めします。情報の付与にはひと手間が掛かり、二重入力業務となる場合がありますが、初期段階でのひと手間は後々に大きな効果を生み出します。また、この二重入力業務を削減してくれるシステムも存在します(RPAやシステム連携などで二重入力業務を無くし入力の自動化など)。  この機会に、一度、自社の業務フローと書類・帳票の棚卸を実施して、文書への『情報』付与により効果的・効率的な「探す時間」のDX化を実現してみてはいかがでしょうか。これは、貴社業務の知的資産(取引先との関係性や従業員のスキル・ノウハウなど)の見える化にもなり、自社の企業価値の向上と共に、磨き上げにもなります。 <出典・参考文献> ※1 【書類整理】あなたのオフィス、書類山積みになっていませんか?①~書類整理の必要性 | コクヨ北海道販売株式会社 (kokuyo-hokkaido.co.jp) ※2 探し物で使う年間150時間は、どうしたら減らせるか 「整理・整頓」で仕事の効率アップ! | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) ※3 公益社団法人日本文書情報マネジメント協会 『文書情報マネジメント概論』P7「文書情報マネジメントの重要性」                問い合わせ先:中小PMI支援センター株式会社 コンサルタント              中小企業診断士/文書情報管理士 森 彦明 e-mail:info@pmis.jp
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