公開日 | 2024/03/25 |
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記載者 | 株式会社ステラコンサルテ... |
資金調達
個人M&Aを後押しする資金調達方法
バトンズ認定アドバイザー
認定バトンズDD調査人
会社名の”ステラ”はイタリア語で星を意味しています。空に輝く星のようにそれぞれの企業が輝く支援、すなわちそれぞれの企業に適したご支援をさせていただきます。
専門分野
M&Aアドバイザー(全般相談)
企業/事業評価
企業/事業概要書作成
契約書草案作成
事業再生
サーチ(譲渡案件発掘)
デューデリジェンス
資金調達
PMI
経営支援
人材支援
金融・行政対応
IT支援
その他中小企業支援
対応可能エリア
関東地方全般
1.「スモールM&A」の普及と「個人M&A」の増加
中小企業が第三者承継の方法として活用するM&Aや、小規模なスタートアップの創業株主(経営者)がEXIT手段のために実施するM&Aなどを総称して「スモールM&A」ということが多いようですが、明確な定義があるわけではありません。
一方で、M&Aプラットフォームの普及によって「スモールM&A」が増加するなか、個人が買い手として、事業承継ニーズのある中小企業の事業譲渡を受けたり、創業間もないスタートアップを買収したりするなど、M&Aに参画する機会が拡大し、いわゆる「個人M&A」のすそ野は広がりつつあります。
しかし、個人がM&Aを行う際にネックになるのは資金調達です。一定以上の規模になると自己資金で買収コストを賄うのは困難であり、また、自己資金のみで買収するとなればM&Aの対象先は限定されてしまいます。
今般は、個人がM&Aをする際になぜ資金調達が必要なのか、また、どの様な資金調達方法があるのかについて、新たな動きを探ってみたいと思います。
2.M&Aに必要な資金調達
M&Aで必要になる買収資金にはどのようなものがあるでしょうか。主なものは、株式譲受資金(事業譲受資金)などの直接的な買収代金、M&A仲介者への手数料、買収調査(デュー・デリジェンス)の費用、譲渡に伴う各種税金などがあげられます。
これらの資金はM&A実施時にほぼ同時期に支払うことが必要となるため、数百万円から数千万円の買収金額であったとしても、個人が自己資金で賄うのは負担が大きいでしょう。
さらに、買収した企業の在庫や売掛金見合いの運転資金、買収先の店内内装のリニューアルやサーバーの増設などの設備投資資金など、買収以降に発生する出費も想定する必要があります。
M&Aプラットフォームの譲渡価額に記載されている金額だけなら自己資金のみで対応できたとしても、M&A時のトータルの買収資金、買収後の運転資金や設備資金などの事業運営資金など、実は想定以上に所要資金が必要になることが多いのです。
こうしたケースに対応するため、通常は、間接金融といって融資などの金融機関借入を活用する方法や、直接金融といって投資家などからの出資を活用する方法などが採用されています。
3.個人型のスモールM&Aで活用したい公庫融資
間接金融の代表的なケースは金融機関からの借入金です。個人が大手金融機関から資金調達するのはハードルが高いことが少なくありません。日本政策金融公庫(以下、「日本公庫」という)の融資を活用することがお薦めです。
具体的には、日本公庫(国民生活事業)の「事業承継・集約・活性化支援資金」(※)により、事業承継に必要な運転資金・設備資金について長期間、有利な利率での借入申込をすることが可能です。
主な融資の条件は次の通りです。
【対象者】事業承継を受ける経営者や事業の承継・集約を契機に、経営多角化・事業転換などにより新規事業に取組む方など
【融資限度額】7,200万円(うち運転資金4,800万円)
【返済期間】設備資金:20年以内、(うち据置期間2年以内)、運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内)
【利率】基準利率(2.15~3.15%)。条件により特別利率の優遇あり。
日本公庫(国民生活事業)のHPによると、M&Aを行う場合は、株式・事業譲渡の対価の支払いだけでなく、M&Aによって受け継いだ事業の円滑なスタートやM&Aを契機とした新たな挑戦などでの資金需要に対応した融資が行われています。ちなみに2019年度の事業承継・集約・活性化支援資金(第三者承継に係る融資)707件のうち個人企業向け融資件数は全体の53%を占めています。
※公庫融資の活用については拙著「スモールM&Aに必要な資金調達とは~賢い融資制度の活用法」(https://batonz.jp/adviser/articles/2459)をご参照ください。
4.個人型の大型M&A~国内でもサーチファンド活用が選択肢に
個人が投資家から出資を受けるのは、金融機関から借入をする以上に難易度が高いと思われます。しかし、2022年8月、新たな動きがありました。公的機関である中小企業基盤整備機構(以下、中小機構という)が、国内のサーチファンドに出資を決めたことです。
サーチファンドとは、米国で1980年代に生まれた仕組みです。起業家(サーチャー)が買収候補の企業を探索し、投資家がファンドを通じて買収資金を提供する仕組みです。通常は、ファンド自身が買収先を探索するのですが、サーチファンドは、起業家自身が買収先を探索し、ファンドの資金を活用して企業を買収し経営者として事業を行う点に特徴があります。
企業経営を目指す意欲のある経営者候補「サーチャー」と、事業承継に課題を抱え、適切な承継先を探す中小企業を繋ぐビジネスモデルといえ、新たな事業承継の手段の一つとして注目されています。そうした背景から、経産省は取り組みを推進する方針です。
具体的には、サーチファンドの活用推進策として、中小機構が出資するファンドが運用で得た組合財産について、中小機構より民間出資者に優先分配する仕組みを創設予定です。これにより、民間投資家の資金をサーチファンドに呼び込むことが期待されます。
サーチファンドの規模にもよりますが、1社あたりの投資額は数千万円から数億円が想定され、M&Aにより起業を目指す個人=経営者(サーチャー)に対する資金調達の選択肢は拡充されつつあるといえます。
5.まとめ
M&Aにおいて資金調達の成否は、買収の実行はもとより買収後の運転資金や設備資金の確保による事業運営にも影響をおよぼす重要な要素です。
融資にせよファンドの活用にせよ、M&Aの仲介とは異なった専門的知見が必要になります。事業承継・新規事業参画など、本来の目的を円滑に進められるよう、資金調達分野に通じた専門家の活用も必要に応じて検討するとよいでしょう。
アナタの財務部長合同会社 代表社員 伊藤一彦(中小企業診断士)
http://stella-consulting.jp/archives/559