資金調達
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2021/04/16

日本政府は、無形資産を事業の価値として評価し、融資の担保にできる新制度を検討しています

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日本政府は、無形資産を事業の価値として評価し、融資の担保にできる新制度を検討しています
※このコラムはこちらからもお読みいただけます。 https://aivas.jp/20201029_2443.html 日本政府は、2020年より、不動産担保や経営者の個人保証に偏重した日本の融資慣行を見直す議論を始めています(2020/10/13付日本経済新聞、2020/10/29付読売新聞)。 現行の民法では、銀行が企業に融資する際の担保は、土地、工場、ビル、設備、機械といった有形資産に限られるため、無形資産や事業を担保として利用するケースは普及しているとは言えません。そこで、政府は、企業の技術、特許やブランド(商標権)などの無形資産を含めた事業全体の価値を担保にして、中小企業やスタートアップでも融資を受けやすくすべく検討を始めました。具体的には、金融庁が2020年11月に民法の担保制度に関する研究会を立ち上げ、法務省とも協議を始めています。法改正を視野に今年(2021年)中に法制審議会での議論に入り、2023年に改正案を国会に提出することを目論んでいるようです。 今回の政府の取り組みは、昨年来の新型コロナウイルスの感染拡大の影響で資金繰りが悪化した中小企業やスタートアップの支援が目的であると報道されていますが、実は今から遡ること数十年前、バブル崩壊後の1990 年代半ばから2000年代初頭にかけての時期にも、資金繰りの悪化した中小企業にとって知的財産権担保融資が資金調達の重要な手段になるのではと注目を集めたことがあります。しかし、知財担保の扱い難さもあってか、知的財産権担保融資の実績はほとんど増えず定着には至りませんでした。 その後、2015年ごろから、金融庁の平成27年度金融行政方針の発表もあって、知財を含めた事業性評価に基づく融資が注目を集め、知財価値評価が再び話題になってきました。 今回の新政策が、政府のコロナ対策の一時的なアイデアに終わって数十年前と同じ轍を踏むようなことなく、無形資産担保融資の将来的な実績を積み上げられるようにすることが大事ですね。企業の無形資産を評価する新たな仕組みの下では、事業が将来にわたって稼ぎ出す力を金融機関自身が評価することになり、お金を貸す銀行等の目利き力の育成も大きな課題になると言われています。 この分野では、日本(政府)は中国や韓国に大きく遅れを取っていますが、コロナの災いを福に転じて中小企業やスタートアップが元気になることが期待されます。 弊所では、知財の視点での事業性評価の実績を重ねて、このような新しい需要に応えるべく日々精進しております。
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