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CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル) の成功事例について解説!

2022年08月08日

CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)をご存じでしょうか?

CVCは近年、大手企業にとっての新たな投資手法のひとつとして注目を集めています。ベンチャーやスタートアップの経営者にとっては、アーリー期から事業をドライブしていくための貴重なパートナーになります。

今回はCVCに関する基礎知識とVCとの違い、日本国内における事例について解説していきます。

 

 

CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)を解説!VCとの違いをわかりやすく説明!

まずはCVCの基礎知識について解説していきます。

 

CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)とは?

CVCとは、「Corporate Venture Capital(コーポレート・ベンチャーキャピタル)」の略語です。本来は投資を本業としない事業会社が、自己資金でファンドを組成し、自社事業とのシナジー効果を得られる可能性があるベンチャー企業に出資すること、もしくは出資する組織そのものを指します。

事業会社が自己資金だけで投資を行うため、事業会社が既存事業の拡大や新規事業に算入したいといった戦略目的を達成するために、より効果的な投資を行うことができる手法になります。

 

CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)とVC(ベンチャーキャピタル)の違いは?

CVCとVCの第一の違いは出資目的です。

VCは、機関投資家や個人投資家、事業会社が資金を出し合ってファンドを組成、キャピタルゲインを得ることを目的としてベンチャー企業に出資する一方で、CVCは自社事業とベンチャー企業の事業とのシナジー効果を目的とします。

さらに、CVCとVCでは関係者が異なります。

CVCは事業会社が自己資金でファンドを組成するため、他の投資家を気にする必要がなく、ベンチャー企業への発言力は大きくなります。対してVCは個人投資家、機関投資家、事業会社など複数の出資者がいて、出資額に応じてベンチャー企業に対する権限に差が生じます。

 

CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)のメリット・デメリット

CVCのメリット、デメリットについて解説します。

 

CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)のメリット

CVCのメリットには次の3つが挙げられます。

・新規事業立ち上げコストの低減
・参入リスクの低減
・オープンイノベーションによる革新的な商品・サービスの創出

 

新規事業立ち上げコストの低減

自社で新たに事業をはじめるには、初期費用と準備のための時間が必要です。また自社にその分野のノウハウが無ければ、採用も必要になります。こういった問題を解決するのがCVCのメリットの1つです。

CVCを組成し自社が必要とする事業の仕組みやノウハウを持つベンチャー企業に出資することで、事業立ち上げのコストを抑えることができます。

 

参入リスクの低減

自社のリソースやM&Aによって新規事業に参入した場合、失敗したときのリスクは資金のみならず、社員のモチベーションの低下や企業価値の低下など、想像以上に大きなものになります。

CVCであれば、仮に失敗したとしても失うものは資金のみです。複数のベンチャー企業に対して少額の出資を行うため、失敗時のリスクを抑えることができます。

 

オープンイノベーションによる革新的な商品・サービスの創出

オープンイノベーションとは、外部の新たな技術やアイデアを募集・集約し、革新的な商品、サービス、ビジネスモデルを開発することです。

CVCによる出資は、ある程度ベンチャー企業の創業者に事業の舵取りを任せることが多くなるため、ベンチャー企業の持つ新たな技術やアイデアとコラボレーションして、創業者のモチベーションを維持したまま、新たなイノベーションの創出に期待できます。

 

CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)のデメリット

CVCのデメリット、注意点には次の2つが挙げられます。

  • 投資に至るまでのコストがかかる
  • ベンチャー企業に投資することの不確実性

 

 

投資に至るまでのコストがかかる

CVCでは投資がうまくいくと、将来的に研究開発が成功したり事業シナジーが生まれた際に大きな利益を生み出す可能性があります。

しかし、投資に至るまでには、投資先ベンチャー起業の調査、出資ノウハウを持った人材の採用や外注費、投資意思決定までのプロセスにかかる人件費など、様々な面でコストがかかります。

 

ベンチャー企業に投資することの不確実性

CVCは1~2年で結果の出るものではありません。数年単位の長期スパンで考えると、経営基盤の弱いベンチャー企業が数年後にどうなっているかなど、CVCの検討段階で将来の見通しを立てることは容易ではありません。

また自社の企業文化と投資先企業の文化の違いなど、提携して初めて分かるギャップも多いです。

 

 

 

CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル) を成功させるためのポイント

CVCを成功に導くためのポイントをご紹介します。

 

目的が明確になっているか

CVCを成功させる第一のカギは目的を明確にすることです。「ベンチャー企業に出資すること」はあくまでも手段であって、その手段を使って達成したい目的を明確にして、出資したベンチャー企業とのかかわり方やEXIT(出口戦略)を固めていく必要があります。

 

投資する際の社内体制がきちんと構築されているか

過去の事例から見ても、CVCはベンチャー企業の創業者とのコミュニケーションよりも、社内調整にコストがかかるケースがほとんどです。投資先のベンチャー企業とのシナジー効果を最大限に活用するためには、社内体制をきちんと構築する必要があります。

 

投資先の経営者と信頼関係が構築できているか

CVCでシナジー効果を最大化するには、ベンチャー企業の創業者との信頼がカギを握ります。「出資以外は事業に関わらない」では両者の間に信頼関係は生まれません。CVCの担当者自身もベンチャーと同じ目線に立ち、信頼関係を築いていくことが重要です。

 

協業や実施時期などのタイミングを考慮しているか

企業は自社事業の開発をスタートさせようとしているタイミングでCVCを組成しても、ベンチャー企業との協業を円滑に進めていくことはできません。

たとえば、立ち上がったばかりのベンチャー企業は、アイデアはあっても社内リソースが不足している状況です。このときに急いで提携しても、まだ時期尚早でしょう。ベンチャー企業が次の段階に進んだタイミングで提携したほうが目標達成により近づく可能性があります。

より効率的かつ戦略的に協業するには、いつCVCを組成すれば良いのか、双方にとってのベストなタイミングを見極めることが重要です。

 

マーケットサイクルの動向をしっかりと見極めているか

マーケットサイクルとは、株式市場における一定の循環のことです。CVCの主目的はキャピタルゲインではなくシナジー効果にあるため、マーケットサイクルの動向はさほど重要視する必要はありません。

しかし、マーケットが過熱している状況ではベンチャー企業の株価も過熱気味になっているため、新規の投資は控えめにするべきで、逆に低迷している状況であればチャンスと捉えられます。

過度にマーケットサイクルの動向を気にする必要はありませんが、意思決定の一要素としてうまく活用するのが良いでしょう。

 

 

 

日本国内におけるCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)の動向

日本国内でのCVCファンドの設立状況を一部抜粋してご紹介します。

伊藤忠テクノロジーベンチャーズ

「日本NO.1VC」を掲げる伊藤忠テクノロジーベンチャーズは、日本国内のみならずアメリカや中国、イスラエルなど海外のIT事業に投資および伊藤忠グループのネットワークと経営ノウハウを活かした支援を行っています。

対象分野 IT事業およびITによる付加価値化が見込める新たな成長領域
投資サイズ(金額規模) シード~アーリー向け:1,000万円~1億円
ミッド~レーター向け:5,000万円~5億円
対象地域 日本、アメリカ(シリコンバレー)、イスラエル、中国、アジア地域

 

サイバーエージェントキャピタル

日本及びアジア地域のシード~アーリー期のベンチャー企業のインターネットビジネスに特化し、事業立ち上げ支援を行っているCVCです。国内ではクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」の立ち上げ期からの積極的な投資で知られています。

対象分野  日本を中心としたシード・アーリー期のITベンチャー企業 
投資サイズ(金額規模) 総額50億円
対象地域 日本、アジア地域

 

STRIVE

シード~アーリー期のベンチャー企業に対し、ビジネスの企画から立ち上げ、拡大までに必要な手厚いスタートアップ支援を強みとするCVCです。投資先の経営に深くかかわる「ハンズオン投資」を行います。

対象分野 主にIT事業
投資サイズ(金額規模) 総額150億円
対象地域 日本、東南アジア、インド

 

GMOベンチャーパートナーズ

主にIT系ベンチャーへの投資を行っているCVCです。主な投資先にメルカリ、ChatWork、ラクスルなどがあり、2015年4月にはChatWork株式会社に第三者割当増資で3億円の投資を行っています。

対象分野 IT事業
投資サイズ(金額規模) 170,000,000ドル
対象地域 アジア、アメリカ

 

NTTドコモ・ベンチャーズ

Fintech、IoT、ヘルスケアなど出資者であるドコモとシナジー効果が期待できる分野に投資を行っているCVCです。NTTグループとベンチャー、スタートアップの総合窓口としての役割を担っています。

対象分野 Fintech、IoT、メディカルヘルスケア、AI、教育
投資サイズ(金額規模) 100億円
対象地域 日本、アメリカ、ヨーロッパ、イスラエル、東南アジア

 

Salesforce Ventures

SaaSビジネスのリーダー的企業であるSalesforce.comが設立した、スタートアップ企業のアプリ開発を支援するCVCです。日本では会計ソフトのfreeeや、ハイクラス転職サイトBIZREACHへの出資で知られています。

対象分野  Fintech、IoT、メディカルヘルスケア、AI、教育 
投資サイズ(金額規模) 非公開
対象地域 日本、アジア、アメリカ

 

リクルートストラテジックパートナーズ

リクルートストラテジックパートナーズは、リクルートHDの100%投資子会社です。日本とアメリカを拠点にクラウドソーシング、Fintech、デジタルヘルスケア分野への投資を行っています。

対象分野  クラウドソーシング、Fintech、デジタルヘルスケア 
投資サイズ(金額規模) 非公開
対象地域 グローバル

 

31VENTURES

31VENTURESは三井不動産グループのCVCで、グループ企業とのシナジーに期待できるベンチャーに投資を行っています。対象分野は不動産テック、サイバーセキュリティー、シェアリングエコノミーなど、不動産とインターネット技術を組み合わせたサービス分野への投資が多いようです。

対象分野  不動産テック、IoT、サイバーセキュリティー、シェアリングエコノミー 
投資サイズ(金額規模) アーリー~ミドル:50億円
対象地域 日本を中心として、北米、欧州、イスラエル、アジア諸国

 

楽天ベンチャーズ

アーリー期からグロース期のITスタートアップへの投資を行っているCVCです。従来のベンチャーキャピタル業務に加え、楽天独自のグローバルネットワークへのアクセスも提供しながら、投資先企業の成長を支援しています。

対象分野 IT
投資サイズ(金額規模) 日本:100億円、グローバル:2億米ドル
対象地域 グローバル

 

株式会社コロプラネクスト

スマートフォンゲーム、位置ゲームで知られる株式会社コロプラのCVCです。日米韓のVR/AR技術、テクノロジー、U-30起業家を中心に全世界の未上場企業、上場企業に投資しています。

対象分野  VR/AR、テクノロジー 
投資サイズ(金額規模) 1億米ドル
対象地域 日本、韓国、アメリカ

 

日本国内におけるCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)の成功事例

日本国内のCVCの成功事例をいくつか紹介します。

 

グリーベンチャーズとRettyの事例

「Retty」は2010年にサービスを開始した実名制のソーシャルグルメサービスです。2012年10月にグリーベンチャーズ、NTTインベストメント・パートナーズなどから調達した1億円で優秀な人材を確保。同系グルメレビューサービスの「食べログ」との差別化に成功し、順調に登録店舗数、ユーザーを伸ばしています。

 

GMOベンチャーパートナーズとChatWorkの事例

GMOベンチャーパートナーズは2015年3月にビジネス用コミュニケーションツールの「ChatWork」に3億円の出資を実施、

2017年にはChatWorkとグループ会社のIDアクセス管理クラウドサービス「SKUID(スクイド)」と連携、シナジー効果を発揮しています。

 

 

NTTドコモ・ベンチャーズとGAテクノロジーズの事例

NTTドコモ・ベンチャーズは、2017年に中古不動産流通サービスのGAテクノロジーズに出資しています。将来的に予想される中古住宅の有効活用に向け、GAテクノロジーズの中古不動産流通サービスの業務効率化、生産性向上を図っています。

 

まとめ

 

CVCの基礎知識および日本国内におけるCVCの事例をご紹介しました。

日本国内ではCVCのノウハウ、成功事例はまだ少ないものの、経営戦略の手段として、組織拡大や新規参入のために活用が増えていくとされています。

少なくとも3年、10年以上におよぶ長期の事業戦略となるため、スタートの目標設定から担当部署が一丸となって取り組んでいく必要があります。

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