神奈川県藤沢市に拠点を置く「株式会社ベビーユニバース」という会社は、ベクターグラフィックスの技術に強みを持つソフトウェア会社。今から5年前の2016年に特許を取得し、その後2年かけて「BUCAS」いう名のクラウド・サーバーを開発された、今後の成長が大きく期待される優良企業です。
本企業で代表取締役社長と務める五十嵐隆典様は、元ファッション・デザイナーという異例の経歴の持ち主。そんな五十嵐様が、ソフトウェア業界という異業種で起業された経緯から、この度のM&Aに至った背景まで詳しくお話を伺いました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社ベビーユニバース |
業種 | IT事業 |
拠点 | 神奈川県 |
譲渡理由 | 選択と集中 |
譲受企業 | |
---|---|
区分 | 法人 |
業種 | 小売業 |
拠点 | 茨城県 |
譲受理由 | 技術力・開発ノウハウの強化 |
30年前に遂げた、ファッション・デザイナーからソフトウェア業界への華麗なる転身
1992年に設立された株式会社ベビーユニバースは、ベクターグラフィックス(※1)技術に特化したソフトウェア開発会社。ベクターグラフィックスの領域において強みを持つ同社は、CADの製図やIllustratorに代表される、拡大しても画像が粗くならないベクターグラフィックスの自動化に成功した稀有な企業だといえます。
もともとファッションデザイナーとして某有名デザイナーの下で修行し、その後は大手アパレルメーカーでご活躍されていた五十嵐様は、自分と同じクリエイターと呼ばれる人たちの作業を少しでも簡略化することで、彼らが自身のクリエイティブ能力を存分に発揮できる環境を作りたいと考えるようになったのだそうです。
そこで、仕事を通じて知り合った優秀なプログラマーと組んで、アパレルの製造に必要なパターンを自動的に作成するプログラムの開発に成功したことから、一念発起して独立・起業されたのが今から30年ほど前のこと。ひとつのパターンを起こせば、サイズ変更や多少のデザイン変更を自動生成してくれる画期的なソフトウェアは、順調にロイヤルクライアントを増やしていったことから、この技術を以って周辺領域へと事業を展開していくことに大きな可能性を感じられたのだとも。
こうして五十嵐様は、DTPとも総称される書籍や新聞、チラシやパンフレットなどといった印刷物の制作領域へと事業のドメインを拡大されていきました。
※1):画像や文字を表示する際、線や面などの図形要素に関するパラメーターで表現する方式のこと。
逆に色のついたドット(点)の集まりで表現する方式をラスターグラフィックスと呼ぶ。
特許を取得したBUCASというクラウド・サーバーと、その事業拡大シナリオとは
印刷データを自動生成できるソフトウェアを搭載したクラウド・サーバーを開発して特許を取得した五十嵐様は、そのサーバーを「BUCAS」と名付けて事業戦略の要とし、中長期の事業成長シナリオを描いていきました。
そこには、BUCASに紐づく革新的なサービスを量産しながら、現在は4台しかないBUCASを将来的に100〜200台に増やし、それらがフル稼働されている世界という、世の中の便利なサービスのインフラとしてBUCASが存在しているような未来図が描かれているのだとか。
そして、そんな多彩なサービスのひとつとして開発されたのが、今回の譲渡対象となった「のしクラウド」でした。このアプリケーションは、その名の通りパソコン上で「のし(熨斗)」を作成し、その場でプレビューが確認できるだけでなく、全く同じ印刷が仕上がるというサービス。
そんな画期的なサービスを譲渡するに至った背景には、ベビーユニバースにとってのビジネス展開の主軸が「画期的なシステムを世の中に生み出すこと」であり、多くのユーザーに届けるというマーケティングの分野ではノウハウ不足であると感じたからだそう。五十嵐様の構想する「BUCASの回転数を上げる」というビジネススキームを実現するためには、1→10のマーケティング戦略を別の企業に任せるという選択がベストでした。
そのため今回のM&Aは、譲渡対象を「のしクラウドアプリ」のシステム一式のみとし、それと連携するBUCASは自社保有のまま。譲渡先とは事業提携を結び、Win-Winの関係を築きながら成長を企図するというものでした。
ネットを介したM&A!気付いたのは、人間臭いアナログなやり取りの大切さ
柔軟な発想で事業戦略を描く五十嵐様が最終的に選ばれたお相手は、茨城県鹿嶋市で創業以来、ギフト販売一筋で営業しているS社。問い合わせがあった後、すぐに会いにきてくださり、熱心にトップ面談に応じてくださったことから「この方であれば、この事業を大きく伸ばしてくれるだろう」という期待が持てたのだとか。
そう語る五十嵐様に、一連のM&Aを終えてみた感想をお伺いすると「実際にやってみる前は、ドライでロジカルなイメージがありました。一定の理論に基づいて契約書を作成し、合意が取れれば契約締結となり、譲渡金が振り込まれて終了するというふうに、半ば機械的に決まっていくものだと思っていたんです。
ですが、いざやってみると、そこにはそれぞれの会社の想いがあって、こうしたい、ああしたいというベタベタの交渉が発生するんですよね。考えてみたら当たり前ですし、そういったアナログなやり取りが嫌だったわけではないのですが、当初の想像と違ったのは事実でした。
特に、バトンズはネットを介したM&Aのマッチングサイトという認識もあったので、相手の顔を見ることなく進むのかな、とも思っていたのですが、全然そんなことなくて。振り返ってみると、そういったアナログで人間臭いやりとりが重要だったりしましたし、会ってお話をすることで分かり合えることも沢山あったので、これからM&Aを考えている方々には、是非、アナログな対話を大切にすることをオススメしたいです」とのこと。
今後は、今回譲渡した「のしクラウド」のように、生活に役立つアプリケーションを一緒になって世の中に広めてくれるパートナーを更に増やしながら、BUCASを基盤として様々なグラフィック自動化の領域で役に立ちたい、と楽しそうに語る五十嵐様は、ロジカルさとクリエイティビティを併せ持つ、ハイブリッドな経営者でいらっしゃいました。
五十嵐様と株式会社ベビーユニバースの今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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