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ベンチャーキャピタルの仕組みって?役割や正しい活用方法を解説

2022年06月15日

起業家が新規事業の立ち上げやベンチャー企業の成長加速のために資金提供を受けることは簡単なことではありませんが、それを可能にする仕組みの1つがベンチャーキャピタルです。

「有望な事業計画はあるが資金がない。それでもどうにかして人々の役に立つ事業を軌道に乗せて社会の発展に貢献したい」と望む起業家は、その具体的な構想を示すことで、ベンチャーキャピタル(投資会社)から構想実現に必要な資金提供や経営支援を受けることが可能です。

審査基準は決して低くはありませんが、事業計画一つで資金調達が実現できる点は起業家にとって非常に魅力的な選択肢ではないでしょうか。

かつてはGoogle、Amazon、Facebook、Appleなどの世界トップ企業もベンチャーキャピタルの力を借りて創成期に事業を大きく成長させました。その成功の裏側には、設立後間もなく経営が不安定な時期を支えるベンチャーキャピタルの仕組みが欠かせなかったのです。

本記事ではベンチャーキャピタルとはどのような仕組みか?という点について、その目的・役割、歴史、銀行との違いなど、様々な角度から解説していきます。後半はベンチャーキャピタルなどから出資を受ける方法について記載していますので、資金調達を検討中であれば参考にしてみてください。

 

 

 

ベンチャーキャピタルとは

ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業に事業資金(キャピタル)を提供する投資会社のことです。複数の投資家から資金を募りハイリスク・ハイリターンなベンチャー企業を対象として資金提供(出資)を行いますので、短期間での成長や上場を目指すベンチャー企業にとっては必要不可欠な存在です。加えて経営参画等の形でベンチャー企業の事業運営をサポートするケースもあります。

はじめにベンチャーキャピタルの目的・役割、そしてベンチャーキャピタルからの資金調達のメリット・デメリットについて確認していきましょう。

 

ベンチャーキャピタルの目的・役割

ベンチャーキャピタルの目的は、資金提供や経営支援を通して出資先ベンチャー企業の企業価値を高めてから保有株式を売却して利益を得ることです。

ベンチャーキャピタルは投資家から資金を預かりベンチャー企業への出資という形で運用していますので、一定期間内(通常5年~15年以内)に保有株式の売却により資金回収と分配を行います。

最終的に株式を手放すことが目的ですので、高値がつきやすい株式公開(上場)を目標にして急ピッチで出資先企業の事業拡大を目指します。もし上場して株式売却に至った場合、当該企業の将来性に応じて投資額の数倍から時には数百倍もの利益を得ることができます。

 

ベンチャーキャピタルと銀行の違い

ベンチャー企業の資金調達の選択肢としてはベンチャーキャピタル以外に銀行などもありますが、その枠組みと返済方法は全く異なります。ここで、銀行から「借りる」ケースとベンチャーキャピタルから「出資」を受けるケースの違いについて詳しくみていきましょう。

 

銀行からは「借りる」

ベンチャー企業が銀行から資金を調達する場合は、資金を「借りる」ことになります。借金はあらかじめ約束した条件(スケジュール・金利)に基づいて元本と利子を定期的に返済しなければならないため、資金繰りには注意が必要です。

銀行側の立場としては必ず回収しなければならない資金ですので、貸し出しを行う際は万が一に備えてベンチャー企業に担保の差し入れを求められる場合もあります。また、創業直後や業績が不安定なベンチャー企業では信用力に欠けるため、審査を通過できずに借りられないというケースも少なくありません。

 

ベンチャーキャピタルからは「出資」してもらう

ベンチャーキャピタルから資金を調達する場合は、一定数の株式と引き換えに資金を「出資」してもらいます。株式の対価としての資金ですので返済義務はありませんが、その代わりに出資比率に応じてベンチャーキャピタルが会社の株主となります。ベンチャーキャピタルが「出資」を行う目的は、資金提供や経営支援を通して出資先の企業価値を高めてから保有株式を売却して利益を得ることですので、それまでは重要な経営パートナーとして緊密な関係が結ばれることになります。

 

 

 

増資により資金調達を行う3つの方法

ここでは増資による資金調達方法についてご紹介します。

株式会社が実行可能な新株発行による増資を行う場合公募増資、株主割当増資、第三者割当増資の3つの方法があります。いずれも借入とは異なり、調達資金の返済義務がないことがベンチャー企業側のメリットです。その代わりに株式を取得した出資者に対しては、出資割合に応じた配当金を受け取る権利や、株主総会での重要な意思決定の投票権を行使する権利が与えられます。

 

公募増資

新しく発行する株式を不特定多数の一般投資家に購入してもらう方法です。

一般的に上場企業の増資方法として利用され、未上場企業が実施することは稀です。上場企業は金融商品取引法をはじめとする各種法令に基づき詳細な企業情報が公開されているため、一般投資家も購入を検討することができますが、未上場企業に関する情報は公開されていないため検討の余地がありません。

 

株主割当増資

新しく発行する株式を既存株主に購入してもらう方法です。

既存株主は出資比率に応じた新株を取得することができますが、有償であるため取得義務はありません。増資後の株主構成に大きな変化がないのが特徴ですので、経営者にとって現行の株主構成が望ましい場合に推奨される増資方法です。

 

第三者割当増資

新しく発行する株式を特定の第三者に購入してもらう方法です。

割当先は、取引先の銀行・企業をはじめ、これから関係を築くベンチャーキャピタルまで幅広いです。主に未上場企業の増資方法として利用されています。不当に安い価格で新株を発行してしまうと既存株主との間に不公平が生じてしまうので、価格設定に注意しなければなりません。通常、ベンチャー企業がベンチャーキャピタルから新しく出資を受ける場合は、第三者割当増資が用いられます。

 

ベンチャーキャピタルからの支援を受けるメリット・デメリット

資金提供(出資)を受けるベンチャー企業にとってのメリット・デメリットは次の通りです。

メリット

返済義務のない資金

ベンチャーキャピタルから出資を受けて調達した資金は、一定数の株式と引き換えに会社に支払われますので返済の義務はありません。「効果的に活用して企業価値を高めることで出資者に還元してください」という意味合いの資金です。借金とは異なり返済義務がない点は、資金繰りが厳しい創成期のベンチャー企業にとっては大きなメリットです。

経営支援

ベンチャーキャピタルは一般的に、出資先の成長を補助するために経営支援の役割も担います。多数のベンチャー企業を成長に導いてきた経営の専門家ですので、そのサポートを効果的に活用することで会社の欠点を補うことができます。支援内容の具体例は以下の通りです。

- 経営層や専門人材の派遣/紹介

- 顧客、仕入先、業務提携先、投資家 等の紹介

- 豊富な経験に基づく経営指南、組織改革、社員教育 等

 

デメリット

経営自由度の低下

出資を受け入れるとベンチャーキャピタルが出資比率に応じた会社の株主になりますので、重要な経営判断について起業家が単独で意思決定を行うことができなくなります。

基本的には両者ともに事業拡大、または上場という方向性は一致するはずですが、その具体策については意見の相違が生じるかもしれません。結果として起業家の意見が通らないことや、意思決定が遅れることが生じるかもしれません。

経営情報の報告にかかる労力

株主であるベンチャーキャピタルに対して会社の業績や財務状態、将来計画 等の経営情報を定期的に報告する必要があります。ベンチャーキャピタル自身も出資に応じてくれた投資家に対する事業状況の説明責任を負っていますので、ベンチャーキャピタルへの報告には相応の内容が求められます。

 

 

 

ベンチャーキャピタルの仕組みはシリコンバレーで確立?

史上初のベンチャーキャピタル出現は1946年に米国東海岸のボストンで設立された「American Research & Development社」だと言われていますが、その後 1960年代以降の西海岸シリコンバレーの半導体/エレクトロニクス産業の発展を影で支えたベンチャーキャピタルの仕組みは広く普及していきました。

当時、米国政府がベンチャー企業へのリスク資金供給システムを構築していなかったこと、またテクノロジー産業の起業が少ないことを懸念し、法整備や政府系ベンチャーキャピタル(Small Business Investment Company)設立を通してベンチャー投資を推進していたことも追い風となりました。

ベンチャーキャピタルによる新規事業のマネジメント手法は時代と共に発展を重ね、最近では、“リーンスタートアップ”というシリコンバレー発の新しい概念も生まれています。FacebookやInstagram、YouTubeなどの戦略が、このリーンスタートアップと類似点が多く注目を浴びています。

 

シリコンバレーとベンチャーキャピタルの発展

同地のスタンフォード大学は”立身と実学”の教育理念を掲げ、起業や産学連携を推進しました。1950年代にはスタンフォード工業団地(Stanford Industrial Park)を建設。GE、Eastman Kodak、HP等の優良企業を誘致し、大学教育と併せてシリコンバレーの礎を支える重要な人材供給源を確立しました。それからほどなくシリコンバレーで半導体の技術革新が生まれNational SemiconductorやIntelをはじめとするエレクトロニクス企業を輩出したのを皮切りに、その後もGoogle, Apple, Yahoo等 多数の革新的IT企業がこの地から誕生しました。

その裏側で資金供給を通して幾多の企業の発展を支えたのがベンチャーキャピタルです。世界最大級のベンチャーキャピタルであるKleiner Perkins Caufield & Byers(KPCB)やSequoia Capitalが1972年に創設され、これまでにGoogle, Amazon, Facebook, Apple, Yahoo, Twitter, Instagram等の有名企業に初期投資してきました。支援を受けた企業の躍進と共にベンチャーキャピタルの数や規模も拡大し、現在シリコンバレーには米国のベンチャーキャピタルの3~4割が集積しています。

 

シリコンバレー発のリーンスタートアップとは

リーンスタートアップとは、シリコンバレー発の革新的な新規事業開発のマネジメント手法です。

リーン(lean:無駄がない)とスタートアップ(startup:起業)を組み合わせた造語で、「無駄を排除した起業」という意味合いとなります。2008年にシリコンバレーの起業家、エリック・リース氏によって提唱された比較的新しい考え方です。

要約すると、最小限の機能を備えた製品/サービスを早期に市場に投入し、短期間で“構築 → 計測 → 学習”の工程を繰り返しながら製品/サービスを継続的に磨き上げるという手法です。事業環境変化への素早い対応が求められる現代に適しているため注目を集めています。

具体的には、まず新事業のアイディアを思いついたら事業開発にかかる時間・コストを抑え必要最小限の機能だけを備えた製品/サービスを早期に市場に投入(構築)します。

次に、市場の反応/フィードバックをデータ収集し(計測)、その結果に応じて修正・改善を行います(学習)。
この工程を短期間で何度も繰り返しながら市場ニーズを探り当てていきます。

市場ニーズが多様化している現代において失敗と改善の積み重ねが成功への鍵と認識し、そのサイクルを短期間に何度も回すことで効率的に市場に受け入れられる製品・サービスの開発を目指すという、新たなアプローチがリーンスタートアップです。

 

 

 

【まとめ】ベンチャーキャピタルを正しく活用するために

ベンチャーキャピタルを正しく活用するためにはその理解が欠かせません。

この記事ではベンチャーキャピタルの基本的な仕組みについて解説しました。もしもあなたが画期的な事業計画を考案しているのなら、ベンチャーキャピタルから資金提供と経営支援を受けることによってその成功率や推進力が飛躍的に高まるかもしれません。メリットだけでなく経営の自由度が制限されてしまうといったデメリットも包含していますので状況に応じた対応が必要ですが、資金調達に際しての一助となれば幸いです。

 

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