IT企業の経営者たちによる事業譲渡は、スモールM&Aと呼ばれるカテゴリーにおいて比較的多い案件といえますが、そんな中でも若くして倒産寸前まで経験し、そこからドラマチックな再出発を遂げた株式会社リフカムの事業譲渡は、確固たる目的を掲げて遂行された実に堅実なものでした。本日は、そこで代表を務める清水巧様に、創業からこれまでの軌跡をお伺いしてまいりました。
譲渡企業 | |
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社名 | 株式会社リフカム |
業種 | IT事業 |
拠点 | 東京都 |
譲渡理由 | 選択と集中 |
譲受企業 | |
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社名 | 株式会社セントラルメディエンス |
業種 | 産業保健事業、メディカルサポート事業など |
拠点 | 神奈川県 |
譲受理由 | 新規事業への参入 |
一度は倒産しかけるも、再びビジネスの芽を見つけて急成長
新卒時は、某有名DXサービス企業に就職したものの、入社1年後には新規ビジネスを構想して早々に独立起業を果たしたという清水様が、創業時に描いていたビジネスキームはスタートアップ企業の採用サポートを提供価値としたものだったそうです。
大学時代は駅伝部に所属してトレーニングに没頭するも、3年生の時にケガをして継続が難しくなったことから、一転して学業に専念。経営学部の授業で著名な投資家によるセミナーを受講した際「世の中の99%の企業が既にあるものを提供して収益を得ており、本当に新しいものを生み出しているのは僅か1%である」という話に感銘を受け、当時、Facebookが急成長を遂げていたということもあって、自分もいつか世の中に未だ存在しないものを創り出したいと思っていたのだとか。
そんな意欲に満ちた清水様が新しく立ち上げた事業は顧客ニーズもあり好評だったものの、なかなか収支が折り合わずに程なく倒産寸前にまで陥ってしまい、東京のオフィスを引き払ってご実家に帰ることを余儀なくされたそうです。
そして、故郷である石川県金沢市に居を構えながらキャッシュを生み出すために始めたのは、既存顧客であるスタートアップ企業に向けたオフライン採用セミナーの開催でした。そして、そのセミナーで現在の主力事業となっているビジネスの芽を見出すのです。
「私が主催した採用セミナーには、後に有名企業へと成長する某フリマアプリ企業も参画されていました。そして、彼らのブースで人事部以外の従業員たちも全員セミナーに参加し、一丸となって優秀な人材を口説いている様子を目の当たりにして、スタートアップの時には社員全員でリクルーティングをするのに、企業が成長するに従って、それが人事部だけの仕事になっていくのは何故なんだろう。どれだけ事業が大きくなっても、リファラル採用は重要かつ有効な人材獲得手段なのではないかという気づきを得たんです」と語る清水様は、現在の主力事業であるリファラル採用のアプリケーション開発に踏み込み、企業を大きく成長させたのでした。
そのプロセスにおいて、周辺領域にもビジネスを拡大していく中で生まれたのが、今回の事業譲渡対象となった業務用コミュニケーションアプリ事業で、そのメイン機能は多くのアルバイトを雇用する企業において、アルバイトと店長、店長と本部とのコミュニケーションをひとつのアプリで完結することで、業務効率化や情報漏洩防止を目指すものであり、その開発には多額の資金を投じられたそうです。
スタートアップ企業だからこそ選択と集中は最重要、そうして決断した事業譲渡
一度は拡大路線へと舵を切り、リソースもコストもかけて開発したアプリを何故、このタイミングで譲渡することに決めたのか、清水様にお伺いすると「私たちのようなスタートアップ企業は、事業拡大によるリソースの分散が与える影響力が、大手企業に比べると大きいんです。例えば、従業員規模が20名の場合、2つの事業を回していくとなれば、10名ずつに分かれることになります。そうなると、ひとつの事業を推進していくスピードは大きく低下することになり、スタートアップ企業の強みが失われてしまいます」とのこと。
「一方で、このアプリ事業には大きな可能性も感じており、世の中に存在し続けてほしいと思ったので、クローズするのではなく他の企業に譲渡することで未来を託そうと考えました。また、多額の資金を投入していたので、売却益を得ることで既存事業への投資に充てたいという想いもありました」とも。
こうして、事業譲渡先の探索を本格的に始めた清水様は、副業として会社を経営している従業員の方からバトンズの存在をお聞きになったそうで、「売り先を探すことにあまり時間をかけられないと思っていたので、とりあえず、という感じでバトンズに登録してみました。アドバイザーは立てませんでしたが、担当の方が事業譲渡の考え方をアウトプットして下さったり、オンライン会議を設けてフォローして下さったりしたので、初めてでも問題なく進めることができました」とのこと。
こうして、最終的には「株式会社セントラルメディエンス」の代表である中川隆太郎様を、本事業の継承先として選択されるのです。
大切なのはゴール設定!なぜ売却するのか、譲れない条件は何なのかを明確に
そんな清水様は、短期間で譲渡先を決めて主力事業に集中することを目指していたとのことで、登録されてから僅か3ヶ月というスピード成約を果たします。
決して低くはない譲渡金額を考えると、非常に短い検討期間だという印象を受ける今回のM&A。そのポイントについて、清水様にお伺いすると「大切にしたのは、ゴール設定をきちんと行うということでした。私の場合、この事業譲渡の目的は明確で、主力事業に集中して収益の最大化を目指すことと、そのための追加予算確保を売却益によって得ることでした。それをできるだけ短期間で実現したいと思っていて、ただシンプルに、そのゴールに向かってやり続けたら、良いマッチング先が見つかったという感じです。
一方で、私は運が良かったとも思っています。私が、このアプリ事業を作った時に描いたプロダクトのビジョンと重なる部分を多く持つ買い手候補の方が現れたので。この方であれば、私たちの手を離れた後も、世の中に対して価値のあるものに磨いていって下さるだろうと思えたんです」とのこと。
「今後は、主力事業に全リソースを注ぎ、“採用を仲間集めに”という私たちのビジョンを実現すべく邁進していきたいと思います。目指すは、私たちの事業を通じて1万人のリファラル採用を生み出すこと。これが叶えば、リファラル採用というものが日本において常識となっている状態だと定義しています」と語る清水様は、一度は挫折を経験されながらも見事に再生を果たした自信と落ち着きをお持ちの魅力的な事業家でいらっしゃいました。
清水様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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