▼消費税率引き上げに関する話題は尽きません。とくにコンビニで買った食品を持ち帰るのか、イートインコーナーで食べるのかによって適用される消費税率が変わる、軽減税率の導入は日夜メディアを騒がせています。
ところで、M&Aの手法も消費税の申告に大きな影響を与えるものなのはご存知ですか?手法の違いで消費税にどのような影響が出るのでしょうか。今回はM&Aと消費税の関係に迫ってみます。
M&Aは当然取引金額が大きいので、たかが消費税と侮ってはいけません
消費税は簡単な税金?
現行の消費税法では、消費税は8%の単一税率となっています。そのため、消費税とは、商品などの代金に8%を掛けるだけの簡単な税金というイメージが一般的でしょう。
ところが、実際に経理や税金の実務として消費税の処理をしてみると、これは、とても難しい税目であることが実感できます。たとえば、収入印紙一つを取ってみても、法務局などで購入した場合、消費税は非課税となる。だが、金券ショップなどでこれを購入すると課税扱いになるのです。
また、売上や経費などの取引を課税、非課税、免税、不課税(課税対象外)に分類するといった処理も必要となります。
消費税が「間接税」と呼ばれる理由
スーパーで買い物をするとき、お客さんは商品の代金と併せて消費税を支払います。つまり、消費税を負担しているのは間違いなく消費者です。しかし、消費者は税務署に対して消費税を納付している訳ではありません。いったい誰が消費税を納付しているのでしょう。
消費税は、実は商品を作っているメーカーや卸売業者、スーパーなどの小売業者が納付をしているのです。このように税金を負担する者と納税する者が異なる税金を「間接税」と呼びます。そのため、消費税は典型的な間接税といえます。
会社は「預かった消費税」から「預けた消費税」を差し引いて納税
それでは、各業者はどのように消費税を計算して納付しているのでしょう。
その答えは「差し引き計算」にあります。たとえば、スーパーはお客さんから預かった消費税を税務署に納付しなければなりませんが、その際に仕入や経費にかかった消費税を差し引けることになっています。
スーパーが卸売業者から商品を54円(本体50円+消費税4円)で仕入れて108円(本体100円+消費税8円)で販売した場合、お客さんから預かった消費税8円と、卸売業者に対して支払った消費税4円との差額4円を税務署に納付するイメージです。
消費税がM&Aに関係するわけ
消費税は売上だけでなく、一定の条件を満たす「資産の譲渡等」に課されます。
つまり、M&Aで現金や株式、事業用資産などの資産が移転した場合、それが課税対象となる「資産の譲渡等」に該当するのかどうかを見極めないといけないのです。
・株式譲渡、株式交換、株式移転
現金で対象会社の株式を購入する株式譲渡は典型的なM&Aの手法といえます。結論からいうと、こうした株式譲渡には消費税の負担は生じません。しかし、現金や株式はれっきとした資産です。そのため、本来であれば「資産の譲渡等」に該当してもおかしくありません。
では、これらが非課税となる理由は何でしょうか。それは、現金などの支払手段や株式などの有価証券は「消費」という概念に馴染まないため、非課税資産という扱いになっています。したがって、株式譲渡でのM&Aには消費税がかかりません。同様に、当事会社間で株式を受け渡しする株式交換や株式移転といった手法でも消費税の負担は生じません。
・合併、会社分割
それでは、合併や会社分割は消費税の対象となるのでしょうか。結論からいうと、これらも消費税の対象とはなりません。合併や会社分割は事業を包括的に承継する組織法上の行為です。つまり、「資産の譲渡等」の取引行為とは一線を画すという訳です。上記の株式譲渡などは「資産の譲渡等」には該当するものの、現金や株式という性質上、非課税資産という扱いでしたが、合併や会社分割はそもそも「資産の譲渡等」ではないということです。
・事業譲渡、現物出資
最後に、事業譲渡や現物出資を見てみましょう。これらの手法には消費税が課税されます。事業譲渡も現物出資も個々の資産が譲渡されたと考えられるからです。
これは、たとえば不動産については個々に所有権移転登記などが必要となることとも整合しています。そのため、事業譲渡や現物出資の対象となる資産のうち、土地など、その性質上非課税となる資産には消費税がかからないが、課税対象となる資産については消費税の負担が生じます。
以上のように、M&Aと消費税との間には密接な関係があります。M&Aを計画する際には、思わぬ課税が生じないように消費税のことも気にとめておきましょう。
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