▼取引先の会社がどの程度の規模なのか資本金で判断することがあります。もちろん、資本金は自由に設定できるため、あくまで目安にしかなりません。それでも、自社の資本金はある程度従事した額にしておきたいと考える経営者も少なくないでしょう。
現金がなくても資本金を充実させられる「現物出資」という方法があります。この現物出資とはどのようなもので、どのような手続きで実施できるのでしょうか。また、注意すべき点は何なのでしょうか。今回は現物出資について紹介します。
会社を対外的に良く見せることは、実は後継ぎを探したりあらゆる面でプラスの効果があります。
資本金を増やしたいとき
現在、会社設立の際、資本金は1円からでも問題ありません。旧商法の時代には、株式会社の最低資本金額は1,000万円とされていましたから、現代は気軽に会社を設立できるようになったといえます。それでも、資本金の多寡は今でも信用に関わることが多いです。対外的な面を考慮して、資本金の額をある程度にしておきたい場合や、または許認可の関係で一定金額以上の資本金が必要となる場合もあるでしょう。
「現物出資」はお金、つまり現金や預金を持っていなくても、資本金を充実させる方法です。現物出資は、言葉のとおり、現金ではなくモノを出資して資本を充実させます。たとえば、資本金が300万円の会社に700万円相当の不動産を現物出資して資本金を1,000万円とすることも可能です。
現物出資のネックは
出資財産の評価では、700万円相当の不動産を現物出資するケースを例に手続を確認してみましょう。基本的な流れは、現物出資に関する株主総会を開催し、法務局で増資にかかる登記申請を行うというシンプルなものです。
ただし、現物出資は現金などによる出資と異なり、対象となる資産の評価額の根拠とするため一定の証明が必要になる点が少し厄介です。原則としては、裁判所が選任した検査役による調査が必要となります。しかし、所定の要件を満たす場合にはこれが省略できます。
検査役の調査を省略できる場合
たとえば、現物出資の対象となる財産が500万円以下である場合や、市場価格のある有価証券である場合には検査役の調査がいりません。また、それらに該当しない場合でも、財産の価額につき弁護士や公認会計士の証明がある場合には検査役の調査を省略することができます。対象が不動産の場合には、これに加えて不動産鑑定士による鑑定評価も必要となります。それでも、裁判所選任の検査役の調査を受ける場合と比べると、時間もコストもはるかに抑えられます。
つまり、上述の700万円相当の不動産のケースでは、弁護士や公認会計士の証明に加えて、不動産鑑定士の鑑定評価を入手すれば、登記申請の準備は整うという訳です。2018年11月時点では、鑑定評価を15万円から行ってくれる企業もあるなど、このハードルは以前よりも下がりつつあります。
会社の立て直しに有効なことも
現物出資は経営不振の会社を救済するために活用されることもあります。たとえば、経済ニュースなどでDES(デット・エクイティ・スワップ)という言葉を聞いたことはないでしょうか。これは「債務の資本化」あるいは「債務の株式化」と呼ばれる手法です。
A銀行が融資を行っているB社が経営破たんの危機に陥ったとします。B社が小さな会社であれば、担保を回収して、それで終わりかもしれません。しかし、どうしてもB社を救済しなければならない事情がある場合には、A銀行がB社に対して有している債権をB社に現物出資することによりDESを行うことがあります。B社から見ると、DESは借入金が消えて資本金が増えるため、財務をきれいに見せるためには有効な手法です。
こうしたDESも現物出資の一種です。ただし、当然上記の場合A銀行が出資者、つまり株主になるため、金融機関の出資規制の関係上、議決権のない種類株式の発行など工夫が必要になります。一方、社長の会社に対する貸付金に対しDESを行う場合は、社長の出資金が増えるだけになります。現物出資は、活用の仕方によって、資本金を自由に変動させられる便利なツールであるといえます。
現物出資には注意点も
ただし、現物出資には注意点もあります。現物出資を行った側には譲渡による損益が発生し、個人であれば所得税など、法人であれば法人税などが課される可能性があります。また、窮境に陥った会社がDESを受け入れた場合にも、税務署からは「借金を帳消しにしてもらった」と認定されて、債務消滅益に課税されることがあり得ます。
これらのリスクにも十分注意をした上で現物出資を有効活用しましょう。
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