▼後継ぎを探すにしても、廃業するにしても、M&Aにしても、いずれにしても事業の価値を見極めることは大変重要です。今、事業価値がいくらなのか分からなければ、実行しようとしていることが得なのかどうかも分からないからです。しかし、事業には強みもあれば弱みもあります。加えて事業とは、多様な価値の源泉が組み合わされてその真価を構成しているという側面もあります。事業の価値を見極めるためには会社を評価する視点を持つことが必要です。そこで今回は、会社を評価するための主な分析ツールを紹介します。
自社を評価したことがない方は一度は検討してみてください。
SWOT分析
事業の価値がどこから生じているのかを分析するためには企業の外部環境と内部環境とを把握することが必要です。このような企業環境の分析に役立つツールにSWOT分析があります。
SWOT分析とは、企業にとっての、①強み(Strengths)、②弱み(Weaknesses)、③機会(Opportunities)、④脅威(Threats)の4つの視点から、その企業の環境を把握するものです。
このうち③機会(Opportunities)と、④脅威(Threats)は外部環境に該当します。経済全体あるいはターゲットとなる市場における外部環境に関連付けて、自社の①強み(Strengths)や②弱み(Weaknesses)といった内部環境を把握できるという利点があります。
3C分析
3C分析は、①顧客(Customer)、②競合(Competitor)、③自社(Company)の3つの視点で分析を行うためのフレームワークです。事業戦略策定の際などによく利用されます。
SWOT分析のように企業環境に関連づけるとすれば、①顧客(Customer)と②競合(Competitor)が外部環境に該当し、③自社(Company)が内部環境に該当するということも可能です。そのため、SWOT分析と同様、マーケットにおける自社の相対的な強みを把握できるという特徴があります。
ファイブフォース分析
外部環境をもう少し丁寧に分析したいときにはファイブフォース分析が役立ちます。
ファイブフォース分析は、①新規参入の脅威、②代替品の脅威、③買い手の交渉力、④売り手の交渉力、⑤既存企業間の敵対的関係、の5つの視点から競争環境を分析するためのフレームワークです。ファイブフォース分析では、それぞれのファクターが大きいほど競争環境が熾烈であると考えます。
たとえばビジネス上において、行政による許認可が必要な事業や、また特許の存在が重要となるような分野では「新規参入の脅威」は低いといえるでしょう。言い換えれば、競争環境は緩慢であるということです。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、事業活動をプロセスに分解し、どの工程で価値が生み出されているかを分析するものです。
製造業として大まかな例を挙げると、①購買、②製造、③出荷、④販売となる。バリューチェーンを分解することにより、どこで差別化や低コスト化が行われていて、それが付加価値につながっているかを明確にすることができます。たとえば、出荷における物流費が大幅に削減されていて、製品価格の低下が実現できている場合、出荷物流プロセスが顧客に対して付加価値を提供していることになります。
VRIO分析
企業の競争優位性を掘り下げて評価する際にはVRIO分析が役立ちます。
VRIO分析は、①価値(Value)、②希少性(Rareness)、③模倣可能性(Imitability)、④組織(Organization)の観点から、企業の持つ経営資源を分析する方法です。上述のバリューチェーンにおける各プロセスで生み出される価値をVRIO分析で評価するといった方法もあります。たとえば、大学と共同で高度な開発を行える研究チームを構築している場合には、③模倣可能性(Imitability)や、④組織(Organization)の面で付加価値が高いといえるでしょう。
どの事業を存続させるかの指針としても役立つ
以上のような分析ツール以外にもさまざまな指標やツールは存在します。ただし、分析ツールを扱うにも注意点があります。なんとなくアルファベットの略語に沿って事業を説明するだけでは自己満足の分析に終わるおそれがあるのです。
M&Aや事業承継では、顧客や従業員にとって付加価値を生み出している事業を存続させていくという目的意識を常に持たねばなりません。会社オーナーの創業者利益を確保するという視点は確かに重要です。ですが同時に、事業を存続することで地域社会や我が国全体の経済成長にとっても好影響を与えるという視点でも、事業の取捨選択を行いたいものです。
こんなお悩みありませんか?
つなぐマッチングプラットフォームです。
累計5,000件以上の売買を成立させています。
またM&Aを進めるためのノウハウ共有や
マッチングのための様々なサポートを
行わせていただいておりますので、
まずはお気軽にご相談ください。
編集部ピックアップ
- M&Aとは?流れや注意点、スキームなどを専門家がわかりやすく解説
- 事業譲渡とは?メリット・手続き・税金などについて専門家が解説
- 中小M&Aガイドラインとは? 概要や目的を詳しく解説
- 企業買収とは?M&Aとの違いは何?メリットや手続きの流れをわかりやすく解説
- 会社売却とは?M&Aのポイントや成功事例、IPOとの違いも解説
- 【完全攻略】事業承継とは?
- スモールM&AとマイクロM&Aとは?両者の違いとメリット・デメリットを解説
- 合併とは?会社合併の種類やメリットデメリット・手続きの流れ・必要書類を解説
- 後継者のいない会社を買うことで得られる多くの利点とは?
- カフェって実際のところ儲かるの?カフェ経営の魅力と開業方法
その他のオススメ記事
-
2024年12月11日
人の命を守るバックミラーの製造。父から受け継いだ誇りある仕事を、熱意ある会社へ事業承継
大阪府を拠点にアルミミラーを中心とした製造・加工業を営む「株式会社尾崎鏡工業所」は、2024年9月、愛知県でガラス製品の製造加工等を手掛ける「...
-
2024年09月17日
トラック・運送業のM&A動向 | メリットや事例について解説【2024年版】
運送業界は、 M&Aの需要が高まっている業界のひとつです。その背景には、後継者不足や2024年問題などさまざまな理由があり、事業規模の大小問...
-
2024年09月05日
未来への想いを共有できる会社とM&Aで手を組みたい。バディネットは、すべてのモノが繋がる社会を支えるインフラパートナーへ
2012年に電気・電気通信工事業界で通信建設TECH企業として創業したバディネット。2024年現在、5社の買収に成功して業容を拡大させています。今回は...