平成という新しい時代が幕を開けて間もない頃、量販店を主要顧客とした販促デザイン会社が愛知県で小さな産声を上げました。それから約30年。幾多もの荒波を乗り越え、激動の平成を生き抜いてきたその会社は、令和に入って創業者の英断により「M&A」というひとつの節目を迎えることになりました。多くの葛藤の末、最終的にこの路を選んだのは株式会社ハイセンス(仮称)の創業者であり代表取締役であられる徳留様(仮称)。そんな徳留様に、この度の「M&A」という大きな決断にあたって抱かれた様々な想いを伺ってまいりました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 匿名 |
業種 | 広告関連業 |
拠点 | 愛知県 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
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社名 | 匿名 |
業種 | 広告代理店 |
拠点 | 愛知県 |
譲受理由 | 取引先拡大 |
勤続18年の後に果たした独立起業、創ったのは量販店向けの販促デザイン会社
今から約30年前。本来であれば、売り場をはじめとして複数の部署を経験するのが一般的である大手量販店に勤めていながら、「売り場に出るなら、会社を辞める」と公言するほど、入社時に配属された販促部の仕事に没頭し、結果として一度も異動しなかったという徳留様。活気づく日本経済とともに、流通業界も右肩上がりに成長しており、日本各地で量販店の出店ラッシュが続いている中、徳留様は18年間勤め上げた大手量販店から独立されました。
そんな徳留様が、独立起業にあたり事業として選んだのは、もちろん販促事業。これまで培ってきたノウハウを存分に活かして、株式会社ハイセンスを設立されました。当時の日本経済の追い風に乗って新規出店の広告を数多く手掛け、順調に業績を伸ばしていたかのように見えたハイセンスでしたが、独立からわずか3年後にバブルが弾け、状況は一転。そこから5年ほどは、本当に苦労されたそうですが、それでも多くの業務を内製化することで窮地を切り抜け、事業存続を実現させてからは、再び大口の受注を獲得しはじめて業績は安定していったそうです。
「設立当初は、広告代理店の下請けをしていました。そこから商店街の販促物を作ったり、大手量販店の仕事を受けたりしていました。ところが、何年かして自分の古巣が声をかけてくれて。初めは少し気が引けたのですが、彼らのことはよく知っているので物事がスムーズに進められることも多く、やり始めてみたらお互いにメリットを感じられたんです。そこからは、量販店から直接仕事を受けるようになっていきました」とのこと。
「量販店のチラシなどは、短期でコンスタントに発注が来るので、経営的に楽でした。単価は低いかもしれませんが、その分回転が良いのでキャッシュフローは安定するし、デザイナーにも確実に仕事を振れるので、人員計画も立てやすかったです」とも。
こうして、大手量販店と二人三脚で事業を成長させてきた徳留様は、従業員の数も増やしながら、自分の会社を創るという夢を叶えたのでした。
齢70を超えて下した大きな決断、譲れなかった条件は「従業員の雇用を守ること」
そんな徳留様が70歳を迎える頃、さまざまな環境の変化が起こります。他の業界と同様、流通業界にも企業統合による業界再編が巻き起こり、主要取引先となっていた大手量販店が続々と経営の座組みを変え、日本経済の先行きが見えない中で広告宣伝・販売促進費といったコストに対する目がシビアになり、これまでのような受注を得ることが非常に難しくなっていったのだそうです。
そして、そこに畳み掛けるようにやってきたコロナ禍は、毎年の仕事初めに行うスピーチで「今年はやるけど、来年はわからんよ」と、事業継続の悩みを冗談まじりに従業員様にも話していた徳留様の背中を押すのに十分たるものでした。
実は、徳留様は当初「M&A」ではなく「廃業」を考えていたのだそうです。しかしながら、実際に会社を解散・精算するとなると金銭的かつ精神的な負荷が多大にかかることや、何よりも解散後の従業員たちの行く末を考えると、なかなか踏み切ることができなかったとのこと。そんな悩みを銀行で吐露したところ「M&A」という選択肢を提案され、そこではじめて、徳留様のM&Aがスタートしたのです。
「廃業に比べると、M&Aの方が総合的に考えてハードルが低いと思えたんです。だから、譲渡に際しての提示金額も譲歩できる部分が多かったですし、むしろお金は二の次だと思っていました。一番譲れなかったのは、従業員の雇用をきちんと守ることでした」とおっしゃる徳留様は、従業員の方々との微笑ましいエピソードを沢山おもちなことから、彼らとの心的距離が近いことが分かり、「譲れない条件は、従業員を守ることだ」という言葉の説得力を感じました。
常に客観的に、時には強引に、第三者として間に立つアドバイザーだからできること
徳留様にとって、今回のM&Aはもちろん初めてのご経験。そんな徳留様に寄り添いながら一緒に案件を進められたのは、株式会社ナゴヤM&A・エフピーセンターの富永様でした。
「経験が豊富な富永さんは、いつもポイントを絞ってアドバイスをくれたので本当に助かりました。また、買い手の方の感情も理解しつつ、こちら側の優先順位を汲んでくれ、常に第三者として客観的に“おとしどころ“を見極めてくれたので有り難かったです。これは、当事者同士では難しかったと思います。そうかと思うと、時には強引に私の想いを通してくれて。一生懸命にやっていただいて、とても感謝しています」と徳留様から絶大な信頼を得られている富永様。そんな富永様に、今回のM&Aに対する感想をお伺いすると「今回のおふたりは、この事業を今後も継続していくために何が最良の方法なのかを一緒に考えようというスタンスで常に会話をされていたので、交渉は非常にスムーズでした。M&Aをする際には、拗れてしまうケースもあるのですが、ここまで安定しているのは珍しいです。きっと、私が入らなくても契約は成立していたと思います」と笑っておられました。
最後に、徳留様に今後の展望をお伺いすると「まずは、従業員のみんなが新会社の中で機能できるように、会長という立場で1年かけてサポートしたいと思っています。私自身は、オーナーではなくなって自らの決裁できることは減りましたが、今までと流れは一緒ですし、実務の部分は引き続きやってほしいと言われています」とのこと。1年後はどうするのか、続いてお伺いすると「この会社に居てください、と言ってもらえる限りは、ここで頑張るんだろうなと思います。3年くらいはやるかも。仕事がね、好きなんです。もう来るな、と言われるまでは、ここで頑張ろうと思います」とも。
新卒から18年、起業後も30年、ずっと関わり続けた販促という領域に心から没頭し「この仕事が好きだ」と笑う徳留様は、従業員の方々を思いやり、そして愛される素晴らしい経営者でいらっしゃいました。
徳留様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
この案件を担当した株式会社ナゴヤM&A・エフピーセンターの紹介ページ
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2023年05月15日
放送事業を展開する企業。映像制作会社を引き継ぎ、思い描く事業戦略とは?
関東・関西の2箇所に事業所を構え、放送事業を中心に事業を展開する株式会社アトス・インターナショナル。そこで取締役を務めるS氏は、これまでも...