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オーストラリアの大学生が興した留学支援事業、コロナ禍で苦渋の決断へ

2022年01月31日

「実は今、オーストラリアにいるんです」と、爽やかな太陽が差し込む一室で肩を並べて明るく語るのは、合同会社World RIZeの代表を務める清水様と、共同経営者の河西様。高校時代からの友人同士というお二人が、オーストラリア留学を通じて何を感じ、なぜ起業したのか。そして、コロナ禍を受けて「事業譲渡」という苦渋の決断を下した今、何を思うのか。構想から約4年間にわたる物語を、お伺いさせていただきました。


 

譲渡企業

社名

合同会社World RIZe

業種

ソフトウェア開発

拠点

神奈川県

譲渡理由

イグジット

 

 

譲受企業

社名

※匿名

業種

学習塾・教育サービスなど

拠点

東京都

譲受理由

サービスの強化

 


オーストラリアの大学在学中に起業!その動機となったのは、自分たちの原体験

高校生の時に知り合ったというお二人は、大学進学も共に海外志望で、渡航先が同じオーストラリアという仲の良さ。しかしながら、いざ留学を具体的に前に進めるにあたり、渡航前にどうやって英語力を高めておけばいいのか、渡航後にどうやって生活基盤を整えればいいのかなど、様々な場面において「もっと、こうだったらいいのに」ということが多々あったそうです。

そんな原体験から「自分たちと同じような思いをしている学生たちの力になりたい」と、オーストラリアを目指す日本人留学生を対象に、渡航前の準備段階から、現地での生活サポート、そして現地就職希望者向けのインターンシップ斡旋や日本国内での就職希望者向けに対する就職活動支援など、留学体験におけるサイクルを一貫してサポートする事業の立ち上げを構想されたのだとか。

実際にご自身が渡豪されたのは、2018年6月。そこから構想を練って事業を本格的にスタートしたのは2019年4月だったそうですが、本事業のカバー領域の広さを考えると、そのスピード感に驚かされます。しかも、ご自身が異国で新生活をスタートされた初年度に、現地の生活に適応しながら開業準備を並行して進められたわけですから、どれほど、お二人が課題感と情熱を持って本事業を立ち上げられたのかが窺えます。

「長期休暇になると、私がバスで12時間かけてシドニーにいる清水を訪ね、朝日が昇るまで仕事に没頭していました。学業と起業と、そしてジムで身体を動かすだけの毎日で大変でしたが、充実した毎日でした。」と笑うお二人が約4年かけて土台を整えた本事業は、翌年「コロナ禍」という思いもよらない形で苦境を迎えることになるのです。

 

順調に事業基盤を構築するも、コロナ禍の到来により継続が困難に 

そんなお二人が事業構築にあたってこだわったのは「学生だけでチームを組んでサービスを展開してくこと」だったそうで、「同じ学生同士の方が、本当の意味で事業に共感してもらえるし、いろいろと協力を仰げるだろうと思ったんです。そして、プロに外注するよりも低コストでできるとも思いました。

たとえば、英会話学習のアプリケーション開発にしても、私は会計学、河西は保険数理が専門で学んでいる分野なので、開発自体はエンジニアにお願いする必要があったのですが、プロのアプリケーションデザイナーに外注すると1000万プラスランニングコストという見積もりがあがってきました。

さすがにこれは、学生ベンチャーには敷居が高い、ということで、TwitterでDMを1,500通ほど撒いてチームを立ち上げることにしたんです。返信率は1%という厳しい状況でしたが、それでも共感してくれる仲間が見つかって、低いコストでアプリの立ち上げが叶いました」とのこと。

このように日本にいるメンバーと遠隔で物事を動かしていたことに加えて、現地オーストラリアの留学エージェントとコネクションを作ったり、インターンシップ先を開拓したりと、まさに世界を股にかけて精力的に事業を組み立てていた最中、コロナ禍が到来したのです。

「国境が封鎖される」「ロックダウンが1年近く続く」などということを、事前に想像できた人などいるでしょうか。これによってオーストラリアへの渡航者は途絶え、それは事業にとって大きな打撃となりました。まさに、これから事業を伸ばしていくというフェーズで訪れたパンデミックを前に、事業存続の見通しが立たなくなったことと、お二人が「就職」「帰国」という次のキャリアステップへ進むタイミングが重なったことで「事業譲渡」という苦渋の決断を下されたのだそうです。

「自分たちでなくてもいい」M&Aを終えた今、思うこと

「正直、ものすごくポジティブな気持ちで譲渡したのかといえば、そうではありません」と語る清水様に、そもそも、なぜM&Aという選択肢にたどり着いたのかをお伺いすると、「当初は、事業を継続するための投資家を探していました。でも、私が帰国後の就職活動をしている際に、M&Aセンターから届いた営業メールをきっかけにお話する機会をいただいて、そこでバトンズのことを知ったんです」とのこと。

「試しに登録してみたら、バトンズの担当者の方が私と出身地が近くて。いろいろアドバイスをいただきながら譲渡価格を設定したり、知人にも助けてもらいながら契約書を作成したり…結果として20件もの問い合わせがきて、提示価格よりも高い金額での譲渡も叶い、とんとん拍子に進めることができました」とも。

「ポジティブな気持ちで譲渡したわけではない」とおっしゃるお二人に、M&Aを終えた今、どんな心境にあるのかをお伺いすると「問い合わせが20件も来たり、提示したよりも高い金額で決まったりした状況を見ていると、やっぱり自分たちが目指した世界観や、作り上げたビジネスモデルは正しかったんだな、きっと大きくなっていたんだろうな、と思います。なので、譲渡したこと自体はやっぱり残念です。」とのこと。

私たちの最終的な目的は、自分たちみたいに苦労している留学生を助けることでした。このサービスが継続されて、最終的にその目的が達成されるのであれば、たとえ自分たちが直接関わることができなかったとしてもいいんじゃないかな、と今は思っています。そのきっかけが作れたこと自体とても嬉しいし、苦労した甲斐があったな、と思っています」とも。

今後は、日本に帰国されて日本企業に就職される清水様と、オーストラリアに残り、現地企業に就職される河西様。多くの時間を共有してきたお二人は、いよいよ本格的に別の道を進まれることになりますが、これからも互いを切磋琢磨し合える、素晴らしい関係が続いていくのでしょう。

清水様と河西様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!

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