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ベンチャー企業の将来的な選択肢、バイアウト。売却価格の決め方と高く売るコツ

2022年01月25日

ベンチャー企業の経営者は、組織の将来的なビジョン・経営戦略の策定や事業継承について模索するときに「IPO」や「バイアウト」を検討しているでしょう。

現在は、会社を創業してから数年でIPOやバイアウトといったEXITのフェーズに辿り着くベンチャー企業も数多く存在し、ベンチャー経営者にとっては身近なワードになりつつあります。

しかし、一概にIPOやバイアウトが身近になってきたといっても、なぜIPOやバイアウトが行われるのか、その背景やメリット・デメリットまで認識している人は少ないのではないでしょうか。

今回は、ベンチャー企業の経営戦略として重要な選択肢の一つである「バイアウト」について、売却価格の決め方や高く売却するコツに至るまで幅広く解説していきます。

 

ベンチャーの「出口戦略」

ベンチャー企業を経営していく上で、出口戦略の一環として「IPO」や「バイアウト」といった選択肢が検討されます。

IPOとバイアウトはそれぞれ内容や方向性、得られる金額等も異なりますので、概要を把握したうえで、将来的な判断材料にしましょう。

 

IPO (新規上場株式/新規公開株)

IPOとは「Initial Public Offering」の略で、新規株式公開、新規上場株式を指します。

新たに上場する企業は、株式を発行することで株式市場から資金調達する「公募増資」や、株主に保有されていた株式を市場に放出する「売り出し」を行うことができます。

会社を上場させるメリットとしては、先述したように資金調達が多様化することに加え、知名度が高まることや、会社の財務状況や業績・将来性に社会的信用が生まれることがあります。

IPOするにあたって、上場を予定する企業は形式要件を満たすため、社内管理体制の整備、内部監査制度の確立などが必要となってきます。それにより組織内の改善プロセスを経て、経営体制の健全化を図ることができます。

 

バイアウト (企業売却)

この場合のバイアウトとは、対象企業の株式を売ることで経営権を与え、売却することを指します。通常、株式の過半数以上を売収することで経営権を譲渡するのが一般的です。日本ではベンチャー企業の創業者や経営者が事業を売却する「セルアウト(Sell Out)」のことを、バイアウトと同義語として使う場合もありますので注意が必要です。

バイアウトはベンチャー企業や経営者のEXIT(イグジット)の一つとして注目を浴びており、近年ではIPOよりEXITの主流として増加傾向にあります。

とはいえ、バイアウトと一括りに言っても、誰が株式を買収するのかによってバイアウトの手法は異なります。バイアウトにどのような手法があるのか、以下にまとめました

 

・マネジメント・バイアウト(MBO)

マネジメント・バイアウトとは、オーナー(経営者)や創業者、経営陣、従業員を含む後継者が、既存株主から株式を買い取り、経営権を持つ手法です。株式を買い取るために金融機関や投資ファンドから資金調達をして、自社の事業部門や企業ごと買収することで独立した経営を目指します。主に上場廃止の際に用いられ、中長期的な成長戦略を描きやすくなるメリットがあります。

 

・エンプロイー・バイアウト(EBO)

エンプロイー・バイアウトとは、従業員が会社や事業部門の株式を買収・取得することで、経営権を得る方法を指しています。経営者が従業員に対して事業承継する場合や、中小企業などで後継者がいない場合に利用されるケースが多く見られます。

従業員の資金だけでは株式の取得資金を用意できないことが課題として挙げられ、マネジメント・バイアウト同様、投資ファンドや金融機関などが出資に加わるケースもあります。過去の事例では村上ファンドやライブドアなどが該当します。

 

・レバレッジド・バイアウト(LBO)

レバレッジド・バイアウトとは、譲り受ける企業が譲渡対象となる企業の資産や将来期待されるキャッシュフローを担保として、金融機関から資金調達して買収を行う手法を指します。

バイアウトの中では唯一、自社の資産ではなく買収先の資産価値や想定されるキャッシュフロー増加を担保として資金調達を行うため、自己資金(資産)が少なくても多くの資金を調達することができるので、資金調達に課題を抱える企業でも大型のバイアウトやM&Aを成立させることができます。

 

IPOよりもバイアウトが増えている

近年ベンチャー企業はIPOよりもバイアウトを選択するケースが増えています。なぜバイアウトという選択肢が急増しているのか以下に理由を列挙しました。

 IPOの難易度が年々高くなっている

IPOはベンチャー企業の知名度や売上を、もう一段階上のフェーズに引き上げるためには有効的な手段と言えますが、同時に年々IPOにおける難易度も高まりをみせています。

IPOを実現するまでには、企業の継続性および収益性を図るための純資産額や利益額、企業の健全性やコーポレートガバナンスおよび内部管理体制の有効性、企業内容等の開示の適正性など、形式要件だけでなく審査基準をクリアする必要性があります。

この他にも経営戦略や株式公開後のビジョンの策定、資金調達金の使用用途など、決めるべきことはたくさんあります。

年々IPOの際の審査基準は厳格化しつつありますので、それより比較的簡単に行うことのできるバイアウト件数が増えているのです。

また従来とは異なり、IPOを行うメリットが低下したことも一つの要因になります。

これまでIPOを検討する企業の多くは、製造業を主力とする企業であったため、設備投資や販売促進に充てる資金の調達方法の一つとして考えられていました。

しかし近年、産業構造の転換によりIPOを検討する企業の多くが情報・通信業やサービス業などのIT企業にシフトしています。また産業構造だけでなく企業のプロモーションや資金調達方法なども多様化したため、IPOによるメリットが低下したと言えます。

 

VC・CVCの組成が増加し、IPOよりもバイアウト件数のほうが急増

国内外問わずVC(ベンチャーキャピタル)・CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の組成が増加している背景も、バイアウト件数が増えている要因の一つになります。

さらに独立系や政府系、金融機関などのVCだけでなく、「アクセラレーター」や「インキュベーター」など多くの実績を持つファンド等も設立されています。

VCの業務は、バイアウト投資やプライベートエクイティ投資だけでなく、分離独立する事業部門の買収や事業承継、上場企業の非上場化を対象とするマネジメント・バイアウトになります。

VC事業が活況を呈していることや、比較的市場が緩やかに拡大していることもあり、一社あたりの資金調達額も増加傾向にあるため、IPOを行う魅力が減り、その分バイアウトへとシフトチェンジする流れになっています。

 

将来の経営戦略やビジョンが描けない

会社経営とは、手元にある経営資源(リソース)を有効活用して、新たな利益を生み出すことが求められます。経済動向が目紛しい近年、経営する上で重要となる「ヒト・モノ・カネ」と言われる経営資源(リソース)が整わないことが、バイアウトが増要因の一つとされています。えている

具体的には、会社を運営していく上で「優秀な人材」「需要に応えるだけの生産設備」「潤沢な運営資金」など、有形・無形資産問わず資源を最適に配分できなければ利益を得ることはできませんし、各組織に応じて経営資源の「選択と集中」をしなければ企業の利益低下や衰退は間逃れません。

 

売却資金で次のベンチャー企業を育てる

近年のベンチャー企業の経営者の意識として、一度の成功だけでなく、連続して何度も新しい会社(事業)を立ち上げる「シリアルアントレプレナー(連続起業家)」という選択肢がロールモデルとなっており、経営者のバイアウトが増えている一つの要因になっています。

IPOという選択肢を使い、新たなフェーズに向けて準備をすることも一つの手段ですが、バイアウトして得た資金をもとに、「エンジェル投資家(創業間もないベンチャー企業に対して、資金を供給する個人を指す)」や、シリアルアントレプレナーとして活動すること自体、最近では珍しいキャリアではないようです。

シード期のベンチャー企業は革新的なアイデアや技術があっても、先述したようにヒト・モノ・カネが圧倒的に不足しているため、多様な人材の流入や資金調達が急務となります。バイアウトしたベンチャー企業の経営者はそうした実情を理解しているため、エンジェル投資家として、有望なベンチャー企業に介入することや、VCから資金投資をされるフェーズまで引き上げることを目的として、一部循環的なシステム構築の一翼を担っているのです。

 

バイアウトのメリット・デメリット

ここで、バイアウトを行うメリット・デメリットを明確にしておきます。

メリット

  • 大手企業の傘下で企業活動を継続できるため、IPOよりも持続的な成長を実現しやすい

ベンチャー企業は創業から間もないため、事業がマネタイズ出来ていなかったり、慢性的に社内資源と言われるリソース(ヒト・モノ・カネ)が不足しています。これらの課題を解消してくれる手段としてバイアウトが存在するのです。

大手企業からバイアウトを持ちかけられれば、経営権が他社へ移行することなく、スムーズに事業を継続させることが可能になり、大手企業のリソースを活用できるので、成長スピードを速めることができます。

 

  • 魅力的なVCやCVCの組成が増えている

魅力的なVCやCVCが市場に多く組成されている点も、メリットの一つでしょう。

一概にバイアウトといっても、親会社の経営方針の転換により資産のリストラクチャリングの促進、事業ポートフォリオの選択と集中などを行う「子会社・事業部門売却」、法的整理に伴いメインバンク等が債権放棄することによる「事業再生」、創業家や経営者が一線を退く判断による保有株式の売却が起因となる「事業継承」など、バイアウトの案件は多岐にわたります。

これまでベンチャー企業が経営の改善やさらなる成長を求めた場合、金融機関からの資金調達による立て直しやIPO、大手企業からのM&Aが一般的とされてきました。

しかし、昨今の経営環境は顧客のニーズが多様化・複雑化しており、大企業も自前主義体制を貫くのは困難になっています。

その局面を打開するために、過去にM&A等の予算として充てられてきた資金をCVCの組成に利用したり、独立した組織でPE(プライベートエクイティ)投資を行いリターンを確保したりする動きが顕在化しています。

ベンチャー企業側も会社のフェーズやタイミングによって、多種多様で魅力的なVCやCVCから支援を受ける機会が増えているのです。

 

デメリット

  • 企業価値の低下からバイアウトするメリットが希薄化する恐れがある

バイアウトする際は、自社の技術や資産を高く評価してくれる企業に適切なアプローチをすることで、財務諸表以上の評価額が算出させるケースも見受けられます。

しかし、バイアウトするタイミングによっては、資産価値が低く見積もられたり、将来的なキャッシュフローが見込めない収益構造、あるいは事業自体の将来性が不透明などを理由に、本来有する企業価値より大幅に安く見積もられる恐れがあるため、バイアウトするまでにこれらの条件をクリアしておく必要性があります。

 

  • バイアウト後のシナジーが生まれない

それぞれ別の企業文化を持った企業が一つになるため、企業文化の醸成には時間を要します。また実務上でも、社内システムの統合や変更に際し、各部門の担当者単位でも混乱が起きるケースもあります。

また経営環境が変化したことによる人材の流出、労働(雇用)条件の変更、取引先の反発、契約の打ち切りなど、予期せぬケースから相乗効果を発揮するまでに相応のリスクがあることはデメリットに挙げられます。

 

売却価格の決め方

バイアウトを視野に入れる上で把握しておきたいのが企業を売却する際の売却価格の決め方になります。

あまりにも自社の売却価格を過大評価してしまうと、会社の売買やM&Aが成立しなくなってしまうので注意が必要です。適切な相場価格を算出するためには、下記の算出方法を参考にしてください。

 

DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法

DCF法とは、買収後に予想されるキャッシュフローを加味して、その数値を現在の価値に割り引いて価格を決める方法です。DCF法によって、将来生み出させるフリーキャッシュフローを、リスクなどを差し引いた割引率によって算出できるため、この方法によって評価する「割引現在価値」が大きいほど、将来的に会社が獲得するキャッシュが多くなると判断できます。

類似会社比準法

類似会社比準法とは、対象となる会社と同一の業界に着目して相場価格を決定する方法です。特に評価対象となる企業が非上場会社の場合、市場価値が存在しないため、類似した企業の株価をベースに、評価対象企業の企業価値を算出する方法になります。

この算出方法では、バイアウトの対象となる企業価値が低くても、その業界自体の成長率や評価自体が高い場合には、相場価格も高くなる傾向にあります。

 

修正純資産法

修正純資産法とは、M&Aなど企業買収を行う時に、使用頻度の高い算出方法です。

特に中小企業の企業価値の相場を算出する際に使用されます。

修正純資産法の場合、評価対象企業の財務諸表に計上されている資産・負債を参考に、その企業の負債金額との差額で、企業価値を導き出す計算方法です。

帳簿価額と時価が大幅に乖離しているケースは、簿価をそのまま利用できないため時価へ修正する場合もあります。

 

高く売却するコツ

最後に解説するのが、企業の売却金額を高くするコツです。

売却前の企業価値の高め方

  • 価格算出方法について理解しておく

バイアウトを成功に導くためには、M&Aによる株式の買い取り価格の算出方法について理解しておく必要があります。先述の通り売却価格の決め方には、「DCF法」、「類似会社比準法」、「修正純資産法」があります。

自社に不利益がないように、バイアウトの検討を始めた段階で、専門のM&A企業やアドバイザーを交えて、妥当な金額の算出などを行うようにしましょう。

 

  • デューデリジェンスの徹底分析

デューデリジェンスとは、投資を行うにあたって、投資対象となる企業や投資先の価値を把握する際に用いる調査を指し、M&Aを行う際には、企業価値を最大化し売却価格を高める一つの方法になります。

財務諸表の見直しやビジネスモデルの分析をはじめ、中期経営計画の策定、課題のリストアップに至るまで、幅広い調査項目において自社(セルサイド)で洗い出し分析しておくことで、買収側のボトルネックになりそうな要因を取り除くことにつながり、企業価値の最大化および売却金額の上昇につなげることができます。

 

高く売れるタイミングで売却

ベンチャー企業の創業者は、バイアウトやM&Aを行う際に高く売れるタイミングで売却することが非常に重要になります。

自社が優位な時に交渉を進めることは当然ですが、高く売るためには以下の条件を目安としましょう。

  • 外部環境が良いタイミングで交渉する
  • 自社の不安材料が顕在化してからではなく、成長過程にあるタイミングで交渉を始める
  • 事業内容の成長曲線を見極めて交渉する
  • 信頼のおける買収企業と出会った時に交渉する

 

高く評価してくれるタイミングの見極めが重要

今回はベンチャー企業のバイアウトについて、バイアウトが増えている背景やメリット・デメリット、売却価格の決め方や高く売るコツについて解説してきました。

近年ベンチャー市場が盛り上がりを見せ注目されていますが、将来的にどのような選択肢が潮流となるのか気になるところです。

バイアウトだけでなくIPOも含め、どのようにEXITすべきなのか、バイアウトを行うにしても経営する上での最適解はどこなのか、しっかりと見極めた上で選択するようにしましょう。

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