オンライン学習塾・ネオチャレの母体が設立されたのは、今から約3年前の2018年。その後、当時は予想もしていなかった「コロナ禍」の到来を契機に、教室型からオンライン型へと見事なトランスフォーメーションを遂げたネオチャレは、なぜ事業譲渡されることになったのか。今回取材させていただいたのは、ネオチャレの事業責任者であり、学習塾専門のM&Aを手掛ける株式会社インフィニティライフの役員でもある高木様です。
数々のM&A案件を取り扱われてきた高木様が、ご自身のM&Aをどのように見つめ、どのように実行されたのか。豊富なご経験を通じた“高木様ならでは“の視点をインタビューさせていただきました。
譲渡事業 | |
---|---|
事業名 |
学習塾ネオチャレ |
事業内容 |
学習塾 |
拠点 |
東京都 |
譲渡理由 |
選択と集中 |
譲受企業 | |
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事業名 |
株式会社イーリズム |
事業内容 |
学習塾 |
拠点 |
東京都 |
譲受理由 |
エリア拡大 |
大学時代から教育業界に携わり、ご縁を紡いで果たした「自分の教室を持つ」という夢
大学生の頃から、某大手家庭教師派遣会社で営業のアルバイトをしていたという高木様は、大学卒業後もご縁に恵まれ、そのまま正社員として就職することになりました。そんな形で教育業界に携わる中、意を決して退職。私立中高一貫校の非常勤講師として働きながら、いつかは自分の教室を持ちたいと思っていたところに、現職である株式会社インフィニティライフの代表取締役である小嶋様と出逢われたそうです。
奇しくも、小嶋様の会社はのちに学習塾のM&Aを専門的に扱う仲介会社として、高木様のキャリアデザインに大きな影響を与えることになりました。
そして迎えた、2018年の秋。当時売りに出されていた学習塾を、株式会社インフィニティライフが買収するという形で「自分の教室を持つ」というご自身の夢を叶えた高木様。「ネオチャレ」と改めスタートした学習塾の経営はその後、新規開講、買収を経て5教室を展開するまでに至りました。それから3年後となる2021年、コロナ禍の影響を受けて既にオンライン教室へと大きな変貌を遂げていたネオチャレは、オンライン学習サイトを運営されている株式会社イーリズムの今津様へ、結果的に継承されることになりますが、その後も、業務委託として高木様は引き続き学習塾の運営に関わっていくことになります。
コロナ禍における完全オンライン化が与えた、良い影響と悪い影響
学習塾ネオチャレの運営をスタートしてから僅か1年後に訪れた「コロナ禍」は、誰も予想していなかった大きな変化を社会に与えました。複数人がひとつの場所に対面で集まることが敬遠される中、学習塾をはじめとした多くの学びの場が、オンライン化に踏み切りました。学習塾ネオチャレも例に漏れずオンラインを導入し、サービスの質が変わらないことが確認され、教室を構える必要がなくなったことで固定費削減が実現するなど、コストがプラスに働いた面もあったそうです。また、オンライン化によって、講師と生徒のマンツーマン授業が可能となり、学校によるカリキュラムの進み具合の差や、個人の理解度の差に合わせて教えることができるようになるなど、むしろサービスの質が改善した部分もありました。
しかしながら、オンライン化は良いことばかりをもたらした訳ではありませんでした。オンラインが進み、生徒の居住地に制限がなくなったことで、集客の難易度が返って上がってしまったそうです。「教室を持っていた頃は、教室に看板をつけたり、居住地や学区に絞ってチラシを打ったりするなど、効率的かつ効果的に集客施策を講じられていたんです。ですが、オンライン化によって、良くも悪くも全国の生徒が勧誘対象となり得てしまったことでターゲットを絞るのが難しくなり、集客効率が落ちてしまったんです」とのこと。
一方で、学習塾を専門としたM&A仲介事業が伸びており、クライアントでもある学習塾のビジネスモデル上、物理的な拘束時間が増加していくものの、それを仕組み化して解消することができかなかったのだとか。こうして、事業としてのコストパフォーマンスが急速に悪化する中、限られたマンパワーを合理的に配分するとなると、この学習塾事業を手放さざるを得ないという結論に至り、今回の事業譲渡に踏み切ったのだそうです。「もしも、私たちよりも集客にパワーとコストをかけられる会社があるのであれば、その方に運営していただいた方が、この事業にとってより良いことだと判断したのです」
問い合わせ数30件超え、それでも大切なのは“短期決戦”で臨むこと
前述の通り、高木様は学習塾専門のM&A仲介会社にご勤務で、既に何件も学習塾のM&Aに立ち合われている、ベテランのM&Aアドバイザー。そんな高木様が、ご自身の運営されている学習塾を売却するというのですから、どのような観点を大切にしながら案件を進められたのか、何か特別に気をつけたことはあるのかをお伺いすると「私たちの場合、最低限の人柄やコミュニケーション力を除けば、重視したのは“条件を満たしている人かどうか”でしかありませんでした。具体的な条件は、時期と金額です。できるだけ早いタイミングで、一番良い条件で引き渡せる相手かどうか。これだけを見ていました」とのこと。
「気をつけるべきは、ズルズルと長引かせないということでしょうか。固定費がほぼかからないオンライン塾なので、最小限のリスクで始められるということもあり、“これから塾を始めたい”と考えている多くの方々に興味を持っていただけました。実際、問い合わせ件数は30件にも上りました。ですが、私たちは1ヶ月で目処をつけたいと思っていたので、条件の中から半ば機械的に決めていきました。スピードが大切なのは、私たちが早く手離れしたいというのもありますが、買い手の熱が冷めないうちに交渉を進めるという意味合いもあります。初めは好条件を提示してくれていたのに、時間の経過とともに気が変わってしまったり、他に良い案件が現れて、そちらに決めてしまっていたりということもあります。だから時期を定めて、ある程度納得できる案件があれば決めてしまって、それを具体化していく方が結果的に良いことが多くなると考えています」とも。
そんな高木様に、最後に今後のご自身のご展望をお伺いしました。
「今回の譲渡対象となった学習塾は、立ち上げる際もM&Aを通じた買収から始めており、そして再びM&Aを通じた売却という形で直接的な運営から手を引くことになりました。つまり、これで買い手と売り手、双方の立場でM&Aというものを体験することができたわけです。このことは、私が現在従事している学習塾のM&A仲介という仕事に大いに活かせると考えています。なぜなら、仲介者という立場でありながらも、ひとりの経験者としてクライアントの気持ちに寄り添えると思うからです」と、笑顔でお話される高木様は、心から今のお仕事に情熱と誠意を持って向き合っていらっしゃる、素晴らしいM&Aアドバイザーでもいらっしゃいました。
株式会社インフィニティライフと高木様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
株式会社インフィニティライフの紹介ページ
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