「事業譲渡が決まった時には、従業員にもお客さんにも、みんなに“本当によかったね!”と、とても喜んでもらえました。80歳を超えると、身体も勝手が利かなくなりますし、みんな、すごく心配してくれていたみたいで」と笑顔で語るのは、ときわコンピュータサービス株式会社 代表取締役の益子様。創業36年目を迎えた茨城のソフトウェア会社が、どんな夢を抱いて立ち上がり、どのような紆余曲折を得て後継者を見つけたのか。その全貌をお伺いしてまいりました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | ときわコンピュータサービス株式会社 |
業種 | IT |
拠点 | 茨城県 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社IC-NET |
業種 | IT |
拠点 | 東京都 |
譲受理由 | 事業拡大 |
大手電気メーカーから勤続25年で独立。立ち上げた「夢をかなえるための会社」
水戸にある有名な高等商業学校を卒業した後、大手電気メーカーにてコンピュータのシステム開発に携わること、実に25年。あまりに会社の規模が大き過ぎて、自分のやりたいことの一部しかできないというジレンマから逃れるために、一念発起して独立したのは、今から36年前のこと。
「とても大きな会社だったので、全体のことが見えなかったんですよ。すごく偉くなれば別なんでしょうけどね。部品の一部を作ることしかできなくて、人の役に立てている実感が持てなかったんです。もっと、システム全体を扱える仕事がしたい。困っている人を助けてあげられるようなシステムを、自分の手で作りたい。そう思っていたんです。
お金儲けのことは、考えていませんでした。コンピューターを使って、仕事を楽しみたい。工場全体を動かすような、大きな仕事がしたい。そんな、自分の夢をかなえるための会社を作りたい。そう考えて、思い切って会社を辞めて、独立したんです」と穏やかに微笑む益子様からは、これまで多くの逆境を乗り越えてきたことが伝わってくる、熟練経営者としてのオーラを感じました。
そんな益子様に、この事業を展開していく中で一番苦労したことは何だったのかをお伺いすると、「一番大変だったのは、お金の工面ですね。大きく儲ける必要はないんですけどね。でも、従業員に給与を支払わなければならないので。開発だけして喜んでいたのではダメですから、そのためのお金を工面するのは簡単ではなかったですね。
システムというのは、受注してから納品するまで、つまり開発が終わるまでに半年から1年はかかるんです。この間は、会社にお金は入ってきません。それでも、社員に給与を支払わなければいけません。それが、事業が軌道に乗って安定するまでは辛かったですね」とのこと。
一方で、技術開発の面では、どれだけ苦労しても、なかなか糸口が見つからなくても、大変だと思ったことは一度もないそうで「技術的な問題に向き合うためには、徹夜してもなんでも大丈夫でした。それが解決した時は飛び上がるほど嬉しいので。だから苦労はあっても、いつもポジティブな気持ちで乗り越えられました」とも。
後継者を探し始めて5年が経過、やっと見つけた「最高の相手」とは?
そんなエネルギッシュな益子様も、気がつけば80歳を迎えられ、身体にも無理が効かなくなってきたのを感じ始められたことから、今を遡ること5年前に後継者探しをスタートされました。当初は、国家施策のひとつである商工会議所主催の相談会に参加され、何件か紹介を受けたそうなのですが、なかなか良い相手に巡り会えなかったとのこと。
「これまで36年もの間、ときわコンピュータサービス株式会社を支えてくれた従業員やお世話になったお客様に、絶対に迷惑をかけたくありませんでした。だから、譲渡後も私と同じレベルで従業員の能力を最大限に活用して、同じ質のサービスをお客様に提供してもらえるだろうと確信できるような相手でなければ、この事業を譲ることはできないと考えていました。
私の会社は、企業の業務全体を統括管理するシステムを開発することが仕事です。ですから、人事管理システムのことだけ知っているとか、生産管理システムだけ、財務管理システムのことだけ知っている、という人ではダメなんです。コンピューダー・システム全体を構築できて、従業員の持っているスキルを上手に組み合わせながら、お客様の要望に応えられるようなシステムをデザインできる人か、もしくは、そういう人材が配下にいて、彼らをマネジメントできるような人でないと」とも。
そんな明確な選定基準をお持ちの益子様が、まさに5年の歳月を経て最終的に選ばれた継承者は、益子様ご自身が「最高の相手」と評する株式会社IC-NETの最上様。お人柄も良く、配下にも優秀なSEの方がおられ、この方であれば自分がいなくなった後でも事業を盛り上げてくれるだろうと確信されたのだそうです。
事業譲渡以外のことも…アドバイザーは何でもサポートしてくれた、頼れる存在
この道61年、システム開発に情熱を注ぎ続けた益子様にとって、事業譲渡というのは人生初めてのご経験で、当初はわからないことも多かったとのこと。結果的に5年もの歳月を後継者探しに費やすことになるのですが、その紆余曲折に終止符が打てたのは、株式会社事業承継通信社 代表取締役 柳様との出会いがきっかけでした。
「はじめは商工会議所の相談会に参加して、そこでの紹介を頼りにしていたものの、彼らは株式譲渡まで面倒をみるだけの知識を持っていないということもわかり、少し中途半端に感じたんです。
結局、そこは自分達でやらなきゃいけない、というのだけれども、個人で株式譲渡をやるなんて、とてもじゃないけど難しい。そこで、インターネットで「事業譲渡」と検索したら、いくつか企業名が出てきて。実は、柳さんのところは3つ目に電話したところなんです。初めの2つは、私の話が全然通じなくて、希望とは全く違うようなところを紹介されてしまって。全然、マッチングしなかったんです。これはダメだと思い、柳さんのところに電話して話してみたところ、彼は私のことをとてもよく理解してくれました。
中小企業だと労務管理や人材派遣の問題が多くあるのですが、私の希望を伝えると、ご自身でも細かく調べてくれて、買い手候補の方と私の間に立って解決してくれました。また、事業譲渡とは直接関係ないような私の相談事にも親身に対応してくれました。たとえば、家族労働者に対する税務法上の決まりなども調べてくれたり。いつでも丁寧に対応してくれたので、本当に助けられました」とのこと。
そんな益子様に、引退後の展望を最後にお伺いすると「まずは、具体的な引き継ぎを終わらせたいですね。先方のコンピューターシステム開発の担当役員の方と、運営方法について会話しなければならないので。その後のことは、正直まだ想像ができません。なんせ80歳まで現役で、ついこの間までソフトウェアの開発をしていたので。
身体のメンテナンスも必要だと思っていますので、しばらくはゆっくり休みたいですね。趣味はたくさんありますが、ひとつひとつ、ゆっくり楽しもうと思っています。ゴルフはいつもOB賞なので、もう少し練習して上手くなりたいかな」とのこと。
ご自身の夢を叶え、その夢の会社を心から納得のいく「最高の相手」に託すことができ、益子様は本当に嬉しそうでいらっしゃいました。
益子様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
この案件を担当した株式会社事業承継通信社の紹介ページ
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