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負債比率とは?計算方法や財務状況の適正水準を解説

2021年11月12日

経営者にとって自社の財務状況を把握することは、その後の事業戦略を考えるうえで必要不可欠です。またM&Aを考える場合、買収候補先の経済状況・財務状況は、取り引きを進めるのかの判断や買取価格の決定時において大きな判断材料になります。

負債比率は、M&Aにおける重要な指標の1つです。負債比率は他人資本と自己資本との割合を示すものとなり、企業の安定性を示します。

本記事では、自己資本と他人資本の違いを踏まえ、負債比率や有利子負債比率の概要、計算方法、具体的な目安、業界やフェーズにおいての目安、負債比率などの改善方法について解説します。

 

 

 

負債比率とは?

はじめに、負債比率の基本的な内容について解説していきます。

 

負債比率の定義

負債比率とは、経営状況を示すインデックスであり、会社の自己資本に対して他人資本である負債(借金・買掛など)がどの程度あるかを表す数字です。 負債比率は、別名ギアリング比率、DEレシオ、レバレッジ比率などとも呼ばれることがあります。負債比率は、企業の財務諸表である貸借対照表において、貸方側の資本に含まれる指標です。

負債とは、買掛金、金融機関など第三者から借入れたお金、社債、未払金など、会社が他人に対して返済義務を負っているお金のことをいいます。さらに細かく分類すると、固定負債と流動負債に分けることができます。固定負債とは、負債の返済期日が1年以降先に到来する負債です。一方、流動負債とは負債の返済期日が1年以内に到来する、流動性のある負債のことをいいます。

また、自己資本とは株主から株式の引き受けによって払い込まれた出資金など、会社が返済義務を負わない資本のことをいいます。これらは財務諸表において、資本金、資本剰余金、利益剰余金などとして表されます。自己資本は会社の資産として返済しなくてよいお金になります。

 

負債比率は自己資本への負債の割合を示す数字であり、会社が負債に対して持つ返済能力がわかります。負債比率の割合が低いということは、裏を返すと会社は負債を返済する支払い能力や経済力があるということを意味しています。中長期的にみて、財政が安定しているということができます。ただし負債比率が極端に低い場合は、レバレッジとして機能していないという可能性もあるため、適正な水準であることが望ましいといえます。

 

 

有利子負債比率の算出も重要

企業の安定性を判断するためには、負債比率に加え有利子負債比率という数字を見ることも重要です。

有利子負債とは、上述した負債の中でも特に借入金や発行済の社債、コマーシャル・ペーパー(無担保の約束手形)など、会社が元本に加えて相手方への金利(利息)を支払う義務を負っている負債を指します。有利子負債比率は、これらが自己資本に対してどの程度あるかを示す数値となります。

負債比率と有利子負債比率の数字が異なる理由としては、支払手形・買掛金・未払金など利息が発生しない負債が負債比率の計算には含まれるのに対し、有利子負債比率の計算には含まれないためです。元本に加え利息の支払いが必要になるということは、有利子負債比率が高いほど会社にとってはより多くの金銭が流出してしまうことに起因します。

一方、有利子負債があるということは一概に悪いことばかりではありません。有利子負債があることイコールある程度その会社の収益性に対して、世間的な信用があるともいうことができるからです。有利子負債比率からは様々な情報が読み取れます。そのため、企業分析にあたり有利子負債比率がどれくらいかを把握しておくことは重要です。

 

 

 

負債比率・有利子負債比率の計算方法、実際の計算例

それでは、負債比率・有利子負債比率は、どのように計算すればよいでしょうか。計算方法について、実際の計算例を具体例として検証しつつ、解説します。

 

負債比率の計算について

負債比率を求めるためには、以下の算式で計算します。

負債比率(%) = 負債 ÷ 自己資本 × 100

 

実際の計算事例をみてみましょう。

例えば、ある会社Aの負債額が10億円、自己資本が20億円だったとしましょう。その場合の負債比率を計算しますと、負債比率(パーセント)10億円÷20億×100=50パーセントとなります。

 

有利子負債比率 の計算について

それでは、次に有利不負債比率についての計算方法を考えてみましょう。

計算方法

有利子負債比率については、以下の計算式により算出できます。

有利子負債比率(%)=有利子負債÷自己資本×100

 

有利子負債比率を計算する上での注意点

有利子負債比率を計算する際に注意点があります。負債の中で返済する義務のない負債があれば、それは除いて計算するべきという点です。特に中小企業などでは、経営者と株主が同じであったり、株主間の人的関係が密接であったりすることが多い傾向にあります。そのため返済期限を確定していない場合や、事実上債権放棄している役員やその親族からの借入金などの負債が多く存在します。こうした返済義務のない負債は、計算から除いたうえで有利子負債比率を計算するとより正確な数値が算出されます。

 

実際の計算事例

それでは、実際の有利子負債比率の計算事例をみてみましょう。

例えば、ある会社Aの有利子負債額が10億円、自己資本が40億円だったとします。その場合の有利子負債比率を計算すると、10億円÷40億円×100=25パーセントになります。

一方、ある会社Bの有利子負債額が50億円、自己資本が200億円だったとすると、50億÷200億×100%=25%となります。会社Bのほうが会社Aよりも有利子負債額は大きいですが、自己資本の額の差から、会社Aと会社Bの有利子負債比率には違いがないことになります。このように有利子負債比率は、有利子負債の金額の多寡のみではなく、自己資本とのバランスで決まります。

 

 

負債比率の適正水準や業界別平均

負債比率や有利子負債比率の概念がわかったところで、どの程度の数字であれば適正な水準といえるのでしょうか。また、その会社が属する業界ごとの平均はあるのでしょうか。

 

負債比率の 適正水準や目安

負債比率の適正水準や、数字が示す経営状態の目安について解説します。

なお、あくまで目安ですので、実際の企業の状態や業界によって判断は異なることに注意しましょう。

・負債比率が100%以下

負債比率が100%を切っているということは、自己資本が他人資本より多いということです。そのため、自己資金をもってすべての負債を返済することが理屈上可能となります。そのため、返済余力としては問題ないレベルといえ、その会社の負債比率は優良な水準といえるでしょう。

・負債比率が101〜300%

100%を超過しても300%以下に収まっている場合、比較的安定した数字と考えられています。他人資本が自己資本より3倍以下の程度では多いですが、着実な返済計画をたてて返済していくことができるでしょう。

・負債比率が301〜600%

300%を超えると、やや負債比率が高いと評価できます。慢性的に300%を越えてしまう場合は、経営上の課題が隠れていることも考えられるため注意が必要です。

・負債比率が601〜900%以上

600%を超えると、一般的には債務超過状態だと考えられています。期日までに返済が滞ることもあり得るため、改善が求められます。

それでは上記を踏まえ、有利子負債比率の適正な水準はどの程度なのでしょうか。有利子であるぶん負債比率の適正水準よりは低くなります。一般的な中小企業については、有利子負債比率100%以下がひとつの目安です。

有利子負債比率がそれを超えていると、自己資本で有利子負債の返済が現状できないということになります。利息の付き方によっては返済能力を超えてしまうので、経営状態や金融機関の判断によっては、それ以上の追加融資が受けられない可能性もあります。

 

注意点

注意しておきたい点として、適正な負債比率は業界やフェーズ(成長段階にあるか成熟段階にあるか)によって適水準が異なるということです。

初期設備投資が多く必要な業界は、成長フェーズに借入がふくらみ負債比率は高くなる傾向があります。例えば、自動車、医薬品、通信事業、インフラは、工場の建設や機器購入などの設備投資やR&Dなどに資金が必要なため、通常は借入が多く、有利子負債が多くなります。また、会社が起業して間もない場合や事業を急速に拡大しているような場合は、軌道にのって自己資本が充実するまで第三者から積極的に借り入れ、運営することが必要です。このようなフェーズにある会社は、一時的に負債比率が高いからといって一概に財務状況が不安定というわけではありません。

こうした業界やフェーズごとの個別事情も踏まえ、複合的な観点で評価していきましょう。

 

負債比率の業界別平均

負債比率の水準は業界によって異なるということをご説明しました。具体的には以下、参考情報として、中小企業庁が発表している中小企業実態基本調査というサーベイでは、負債比率・有負債比率の業種別平均値を調査・公開しています。以下の表は、2019年決算実績値に基づく調査を2021年に公表したものです 。

この表をみると、例えば、施設などを建設維持しなければならず設備投資が多く必要な宿泊業・飲食サービス業の負債比率は、設備投資がそれほど必要ない学術研究専門技術サービス業の負債比率の16倍以上となっています。

負債比率 有利子負債比率
建設業 140.25% 66.94%
製造業 113.41% 65.52%
情報通信業 75.87% 27.84%
運輸業・郵便業 185.11% 120.93%
卸売業 154.06% 74.45%
小売業 205.29% 134.18%
不動産業・物品賃貸業 178.76% 123.86%
学術研究専門技術サービス業 30.76% 16.43%
宿泊業・飲食サービス業 508.44% 418.21%
生活関連サービス業・娯楽業 160.16% 80.76%
サービス業(他に分類されないもの) 114.23% 70.58%

 

 

 

 

負債比率の改善方法をご紹介

例えば、銀行から融資を受けやすくするためなど、会社の第三者からの評価をあげるためにも、自社の負債比率を改善したいと考えられる経営者の方もおられるでしょう。負債比率の改善方法を以下ご紹介します。

 

自己資本(資本金・剰余金)を増やす

1つ目の方法としては、自己資金をふやすことによって相対的に負債比率を下げる方法があります。同じ額の借り入れがあったとしても、自己資本が増えることにより、負債比率が改善されます。自己資本を増やすためには、新株発行などにより増資を行い、株主から資金を集めるという方法があります。しかし、増資は、そもそも買い手がつくかどうかという問題や、新しい株主に議決権が発生するため検討が必要です。別の方法として、収益性を高める企業努力によって利益を増やすことで利益剰余金を内部留保していくという方法もあります。

 

資本化を進め、負債を減らす

2つ目の方法としては、負債を減らすということがあります。自己資本を維持し、負債を削減することによって負債比率が改善します。無駄な経費の使用を引き締めるなど会社の運転資金を圧縮し、不良資産を売却する等、負債を減らす方法です。

 

 

まとめ

企業の財務状況を判断する際に、重要な指標である負債比率・有利子負債比率について解説しました。負債比率は自己資本に対する他人資本の割合、有利子負債比率は自己資本に対する返済義務のある他人資本の割合を示す比率です。

負債比率は一般的には300%を超えない水準が望ましいといえます。しかしながら、企業が属する業界やその成長フェーズにより異なるので、他の指標等も意識しながら総合的に評価をすることが大切です。負債比率を改善させるためには、増資や内部留保を増やし自己資本をあげるか、負債を圧縮するかという方法が考えられます。

この記事を参考に、自社の負債比率を計算し、今後の会社経営にお役立てください。

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