【買収防衛策】敵対的買収から会社を守る19種類の策を徹底解説
2022年03月21日
2022年03月21日
会社は株主のモノ。これは、資本主義の根幹となるルールといっても過言ではありません。
そして株式は金銭によって取り引きが行われ、株式を売却すると資金調達をすることが可能です。創業者や経営者が株式を手放したり発行したりすることは経営手法の1つであり、珍しいことではありません。
そのため、会社が、創業者や経営者、従業員、少数株主の誰も望んでいないタイミングで、株式の大半を所有した者の手に渡ることがあります。これを敵対的買収といいます。
この記事では、敵対的買収から会社を守る19の買収防衛策を紹介します。
19の買収防衛策を紹介する前に、買収防衛策の概要を解説します。
経済産業省と法務省は、買収と買収防衛策を次のように定義しています。
この定義は専門用語が多いので、平易な言葉で解説します。
買収とは、「多くの株式を取得すること」です。多くの株式を持っているほど、会社への影響力が強くなります。
例えば、株式を50%以上持っている場合、株主総会の普通決議を単独で可決することができ、役員の選任や解任を実行できます。さらに66.7%超(2/3超)保有している場合、特別決議も単独で可決することが事業譲渡や合弁も可能となります。
買収防衛策は、資金調達を目的にしない新株の発行などがあります。新株を、敵対的買収に反対する人や企業(会社を守ってくれる人や企業)に持ってもらえば、その人や企業の影響力が強まります。相対的に、敵対的買収をしかける者からの会社への影響が低下します。
「敵対的買収」や「買収防衛策」と聞くと、買収する側が悪者で会社を守る経営陣が正義の味方のように感じるかもしれませんが、必ずしもそうとはいえません。
なぜなら、買収しようとしている者がその会社の価値を高める策を持っているかもしれないからです。買収しようとしている者に経営を任せたほうが、利益をあげて、労働者の給与を増やすかもしれません。また、経営陣が保身のために会社を守ろうとしているかもしれません。
したがって、買収防衛策には、功罪の両方があると認識しておいたほうがよいでしょう。
そのため企業が買収防衛策を発動するときは、株主総会で決議することが必要となる場合もあります。
株主総会で買収防衛策が支持されることにより、会社のオーナー(株主)も経営の執行者(経営陣)も納得したことになり、買収防衛策の正当性はより高まります。
ただ、緊急時の場合は取締役会の決議だけで買収防衛策を講じることもあります。その場合、あとから不当な買収防衛策であるとわかったら、裁判所に買収防衛策の差し止めを求めることができます。
買収防衛策は19種類あり、これは大きく次の4つのグループに分けることができます。
1つずつみていきましょう。
買収防衛策には、敵対的買収が行われる可能性が生まれる前に、自社で予防的に行えるものが10種類もあります。
ポイズンピルは、敵対的買収者が株式の保有比率を増やしたら、あらかじめ定めておいた条項によって新株や新株予約権を発行する仕組みです。その条項のことを毒薬条項といい、名称の由来になっています。
新株が発行されると敵対的買収者の株式保有率が下がり、買収を阻止できます。
ゴールデンパラシュートは、自社の役員の退職金を高く設定する方法です。
敵対的買収者は自分の意のままに会社を運営したいと考えるので、大抵は、現役員を追い出したいと考えます。ところがゴールデンパラシュートが設定された企業を買収すると、現役員を追い出すために多額の退職金を支払わなければならず、買収コストが膨らみます。これにより敵対的買収者の買収意欲が削がれます。
従業員の退職金を高く設定することを、ティンパラシュートといいます。狙いはゴールデンパラシュートと同じです。
マネジメント・バイアウトは、経営陣が自社の株式を買い取って非上場化する方法です。非上場にすれば、敵対的買収者が密かにその企業の株式を買い進めることができません。
プットオプションとは、一定の事由が生じたときに株式の買い取りを請求できる権利で、株主などに付与します。これにより、敵対的買収が起きそうになったら、既存の株主がさらに多くの株式を保有することになるので、防衛できます。
チェンジ・オブ・コントロールは、経営陣が変わったときに、取引先との取引条件の変更が発動される条項のことです。例えば重要な取引先と、「株主が50%を超えて変動したときは、取引の契約を解除できる」と定めておけば、敵対的買収が行われたら自動的に重要取引先との契約が解除されてしまい、事業が滞ってしまいます。
これも敵対的買収者の買収意欲を削ぎます。
黄金株とは、会社の買収などの議案を拒否できる権利を持つ株式です。
創業者が黄金株を持っていれば、その他の普通株式を敵対的買収者が買い占めても、買収を阻止できます。
絶対的多数条項とは、株主総会の議決要件を厳しくすることで、例えば、役員を解任しにくくします。
普通は「株主総会で過半数の賛成が得られれば役員を解任できる」といったように定めておきますが、これを「90%の賛成が得られなければ役員を解任できない」という内容にすれば、敵対的買収者は90%超の株式を購入しないと現役員を解任することができません。
そうなると買収コストが膨れ上がるので、やはり買収意欲が低下します。
全部取得条項付株式とは、会社が株主総会の特別決議を得て株式を買い上げる仕組みです。会社が多くの自社株式を保有することになるので、買収から守ることができます。普通株式を全部取得条項付株式に変更する手続きが必要となります。
事前警告型防衛策とは、会社が事前に「敵対的買収が仕掛けられたら、当社はこのような対抗措置(買収防衛策)を講じる」と公表する方法です。
こうすることで、敵対的買収者に、適切な手続きを踏ませることができます。
敵対的買収を仕掛けられても、自社でできることは3つあります。
ジューイッシュ・デンティストは、経営陣などが自社のネガティブな情報をマスコミにリークして企業価値を下げ、敵対的買収者の買収意欲を低下させる手法です。
ただこの方法を使うと、買収を回避したとしても、そのネガティブイメージを自ら払拭しなければなりません。
焦土作戦は、敵対的買収者が求めていると思われる事業や資産などを売却してしまう方法です。これにより企業の価値や魅力が下がるので、買収意欲が低下します。しかしこれを実行すると「本当に」企業価値が低下してしまいます。
資産ロックアップは、買収後はしばらく資産を売却できない、というルールをつくることです。敵対的買収者が、買収後にその資産の売却することを目論んでいる場合効果的です。
買収を仕掛けられても自社で対抗する力がなければ、第三者に頼ることができます。
ホワイトナイトは、自社と友好関係にある会社に株式を買ってもらう手法です。株式を買ってもらう友好企業自体のこともホワイトナイトと呼びます。
敵対的買収は株式の買い取り合戦でもあるので、ホワイトナイトに資金力があれば、敵対的買収者は買い負けてしまい買収は失敗します。
第三者割当増資は、新株を友好企業や取引先企業に引き受けてもらう手法です。新株発行によって既存の株主の影響力が弱まるので、敵対的買収者の影響力の弱まり、さらに新株を取得した友好企業などの影響力が強まるので会社を守ってもらえます。
第三者との株式交換は、友好企業と株式交換することで自社株を持ってもらう手法です。持ってもらう株式数が増えて、友好企業によって買収されてしまうと、その友好企業はホワイトナイトと呼ばれます。
その他の防衛策を紹介します。
パックマン・ディフェンスは、敵対的買収を仕掛けられたとき、逆に敵対的買収者に買収を仕掛ける手法です。
ただ多額の資金を必要とするため、どの企業でも使える防衛策ではありません。
スタッガードボードは、一部の役員の改選時期をずらして、1回の改選ですべての役員を変更できなくする手法です。
こうしておけば、買収されても、その直後の役員改選時に既存の役員を何人か残すことができます。敵対的買収者は大抵、現経営陣をすべて退任させたがるのでその対抗策になりえます。
労働組合には買収を阻止する力があります。労働組合が「うちの会社が買収されたら、即時ストライキを打つ」と表明すれば、敵対的買収者は相当困るはずです。なぜなら、企業を手に入れても労働者が働いてくれないからです。
ただし、労働組合に力がないと、買収を阻止する力も小さくなって効果が出ません。例えば、労働組合員が数人しかいなかったら、敵対的買収者は労働組合を無視して買収を進めるでしょう。そして買収が成功したら、敵対的買収者は労働組合員に報復するかもしれません。
買収防衛策が機能して、敵対的買収を阻止できた事例を2つ紹介します。
2005年に起きたこの案件は、関係者に逮捕者が出たため「事件」と名づけられています。
IT企業のライブドアが、フジテレビへの影響力を強める目的で、ニッポン放送の株を大量に購入しました。
テレビ局のフジテレビとラジオ局のニッポン放送に関して、経営規模を比べるとフジテレビが優位でした。しかし、ニッポン放送が親会社のような立場にありました。そこでライブドアは、「自分たちがニッポン放送のオーナーになれば、フジテレビを傘下に収められる」と考えました。フジテレビのような社会的な影響力が強いテレビ局を傘下に収めれば、ライブドアはさらに強いIT企業になることができるからです。
ライブドアは一時、ニッポン放送株を35%獲得して筆頭株主になりましたが、フジテレビはこれに対抗し、ニッポン放送株を買い増しました。
ニッポン放送はフジテレビに、新株予約権を発行すると発表しました。
これは前述した予防策「ポイズンピル」に似ていますが、実際には異なります。ライブドアは、この新株予約権の発行は違法であるとして、裁判所に、差し止めの仮処分を求める申し立てを行い、それが認められました。
ライブドアの勝利かと思われましたが、この段階でライブドアの資金が不足し始めます。
その結果、ライブドアとフジテレビは和解し、ライブドアが持つニッポン放送株をフジテレビが実質的に高値で買うことが決まりました。
ライブドアはフジテレビへの影響力を持つという目的は達成できませんでしたが、大きな利益を得ることができました。
参照元:https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/07-J-27.pdf
ブルドックソースは2007年、筆頭株主だったアメリカの投資会社の日本法人、スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(以下、スティール・パートナーズ)に敵対的買収を仕掛けられましたが、ポイズンピルによってこれを排除することに成功しました。
ブルドックソースは、スティール・パートナーズから株式公開買付け(TOB)を実施すると通告されましたが、スティール・パートナーズの経営方針は、既存のその他の株主の利益を毀損するとしてTOBに反対を表明しました。これで敵対的買収案件になりました。
ブルドックソースはあらかじめ、敵対的買収者が株式の保有比率を増やすことにより、新株予約権を発行するルールを定めていたのでそれを発動しました。スティール・パートナーズはこれに対し、裁判所に、ブルドックソースの新株予約権発行の差し止めの仮処分を申し立てましたが、裁判所はこれを却下しました。
これでブルドックソースは新株予約権を発行し、会社を守ることができました。
参照元:http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2007/2007sum02.pdf
過度に買収防衛策を講じると、経営者や創業者が保身に走っているのではないかと疑われ、投資家たちから魅力が低い投資先とみなされてしまいます。実際、買収防衛策を廃止する企業もあります。企業業績がよければ余裕資金が生まれて自社株買いを実施できるので、買収防衛策は必要なくなります。そういった意味では、健全かつ適切な経営こそ、最大の買収防衛策といえます。
しかし敵対的買収は「まさかあの会社が」と思えるようなところから仕掛けられることがあります。そのため、事前に自社でできる買収防衛策は、必要最小限にとどめることを意識し、準備を行いましょう。
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