▼ 個人型M&Aで成功する為に、絶対押さえておくべき鉄則とは?
最近話題の個人型M&Aについて触れた記事なのですが、やはりどんなものでも広く普及してくれば事故やトラブルが多くのなるのも世の常。特に、M&Aの世界は消費者契約法などの素人を守る法律の外にある、ある意味自己責任の世界ですから、個人であってもある程度の知識や相応の注意払うことが全ての前提になります。
専門家向けの記事ではないので、本当に必要最小限のことしか触れていないのですが、少しでも多くの人達に読んでいただくことで、個人型M&Aが成功する一助となれればとても嬉しいです。
▼ 個人事業主の生前贈与、許認可不要は事業承継の福音となるか?
さて、このように最近では本当に小規模事業や個人事業までM&Aの範囲が広がってきており、私のように長くM&Aの世界にいる人間にとってはまさに隔世の感がありますが、折しも先日の日経新聞で、政府が事業承継問題への対策の一つとして、法人ではなく、個人事業主の事業承継の手続きを大幅に簡素にすることで、行政手続きの煩雑さが事業承継を妨げるのを防ぐことを検討中との報道がありました。
具体的には生前贈与について、許認可を不要とする方向で検討しているといるそうです。
又別の報道では個人事業の事業承継に係る相続税・贈与税についても、法人の場合と同様に税務上の特例を設けることも検討されているとのことで、こちらもかなり実現の可能性が高そうです。
図らずも、ここにきて何故か一気にスポットライトが当たる形となった個人事業ですが、果たして政府のこうした政策は、事業承継問題の解決に一筋の光明となるのでしょうか?
▼ 企業の57.6%が実は個人事業 しかし10年先まで生き残れるのは僅か11.6%
その回答を考える前に、まず日本経済における個人事業の位置付けについて考えてみましょう。
中小企業庁のデータでは、実は日本の事業者の過半数以上にあたる56.7%が個人事業なのだそうです。一番多いのが飲食店で全体の20%、ついで小売業が18%、理美容業12%、医療福祉の9%と続きます。
つまり個人事業が無くなってしまえば、日本企業の半分以上が消滅する訳です。
それだけでなく、地方の診療所などが無くなってしまえば、地域の住民は医療さえ受けることができなくなります。
個人事業主は誰でも知っている大きな企業のように格好良くはなくても、地道に日本の縁の下を支えている存在だと言えるわけですね。ところが近年は高齢化が進んだこともあって急速に数が減少しており、小規模事業者と合わせると、この26年間でなんと143万者も減ったのだそうです。
又新しいビジネスはまず個人事業として始められることが多いということも見逃せません。
しかし実際の小規模事業者のうち、開業後僅か1年で37.7%が廃業し、3年で62.4%が廃業。
10年後まで残る個人事業は僅か11.6%しかないのだそうです。
日本経済を支える縁の下の力持ちであり、かつ新しいビジネスの担い手である個人事業を守っていくことは、実は意外と重要なことだということなのです。
▼ 事業承継時には42%の個人事業は許認可の取り直しとなる
しかし、それにも関わらず、個人事業の継承は法人にはない色々な制約が課せられています。
その一つが、個人事業主が死亡した場合、子供に相続する際には簡易な手続きで継承が可能にも関わらず、生前に事業承継する場合には「新規の許認可の取得が必要となる」という点です。
法人の場合は、こうした制限は全くありませんので、これでは個人事業の事業承継はするなと言っているのと同じではないか、というわけです。
たかが手続きではないか、という声もあるかもしれませんが、例えば私の実家の仕事であった建設業では、これくらいの違いがあります。
どうですか?
流石にこれくらい違うと、勘弁してくれ、という話にもなりますし、事業主が亡くなるまで事業承継が行えないとなれば、その間に事業自体が無くなってしまう可能性が高くなります。
現在個人事業主で一番多いのは70歳代だと言われ、事業承継期を目の前に迎えているわけですが、先ほど取り上げたように、そもそも10年後に残っている個人事業はたったの11.6%しかないわけですから、ともかく承継のスピードを速くするに越したことはないわけですね。
実際に事業承継に当たって許認可の取り直しとなる個人事業主は、全体の42%にも及ぶのだそうです。
だったら法人成りしたらいいのでは、という意見もあるかと思いますが、税制を始め小規模事業には個人事業の方が有利な点も多く、実際には法人成りを考えている個人事業者は1%程度しかいないというデータもあり現実的ではありません。
その意味で、政府が遅ればせながら個人事業の事業承継に目を向け始めたのはとても良いことだと個人的には思います。
又、一部では親族だけでなく、従業員や第三者に対しても同様の規制緩和が行われる可能性もあるのではと言われています。もし、本当に第三者まで事業承継の道が開かれれば、最近流行りの「個人型M&A」の有力な手段となるかもしれません。
何れにせよ、従来の中小企業のみならず、個人事業にまで事業承継のスポットライトがあたり始めたのは、それだけこの問題が深刻化し、早急に対策を取らなければならない段階にまで来ている証しでもあるのではないでしょうか。
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