TOPM&A記事・コラム事業承継・M&Aトピックス選択と集中は今も有効?多角化経営との関係や国内事例もあわせて紹介

選択と集中は今も有効?多角化経営との関係や国内事例もあわせて紹介

2020.11.27

経営効率を高めるのには、選択と集中が役立つとよくいわれています。この選択と集中は、令和になっても経営戦略として有効なのでしょうか。

この記事では、選択と集中とはどのようなものかを解説した上で、国内での導入事例も紹介していきます。選択と集中を取るべきかを検討している経営者や管理職の方は、ぜひ参考にしてください。

選択と集中とは

そもそも、選択と集中とはどのような手法でしょうか。選択と集中について理解するためには、多角化経営についても把握しておく必要があります。

選択と集中とは①|多角化経営との関係性

多角化経営とは、本業以外の業界に経営資源を投入することで企業の成長を目指すものです。日本では、特に1980年代に多くの企業が多角化経営を進めようとしました。

しかし、1990年代後半に入ってバブルが崩壊したことから、多角化経営に限界が生じます。そこで、多くの日本企業が注目し始めた手法が選択と集中なのです。

選択と集中では、自社の様々な事業から競争力のある事業を選択し、経営資源を集中します。これまで行ってきた多角化経営では事業を拡大して人員を増加していたのに対して、選択と集中では事業も人員も削減していく点が特徴です。

選択と集中とは②|選択と集中は誰の言葉?

選択と集中の概念は、経営の神様とされるピーター・ドラッカー氏が生み出したといわれています。その後、アメリカに拠点をもつ世界的企業のゼネラルエレクトリック(GE)社でCEOを務めたジャック・ウェルチ氏の著書が、1990年代後半に日本でベストセラーになったことで選択と集中が浸透しました。

ウェルチ氏は、GE社のCEO時代に業界で1番か2番の事業だけに経営資源を集中することを発表し、その後同社の企業成長につなげた実績を持っています。

選択と集中とは③|選択と集中が有効である理由

多くの企業が選択と集中を取り入れたのは、この手法が経営手段として有効と考えられたからです。主に以下に挙げる3つの理由があります。

大幅なコスト削減

多角化経営の場合、まだ自社が高度な知識や技術を有していない事業があり、非効率な経営になっている可能性もあるのです。一方、自社が得意とする事業であれば高度な技術や知識を有しているため、効率的な経営ができるでしょう。

そこで、選択と集中という手段を採ることで自社の強みとする事業に特化し、無駄のない経営を行うことができます。それに伴って大幅なコスト削減も可能です。

コストリーダーシップ戦略を展開

企業の競争戦略の中には、コストリーダーシップという戦略があります。この戦略は、価格を安く設定して顧客を惹きつけることで、ライバル社より優位に立つことができる点が特徴です。

すでに述べたように、選択と集中では経営資源を集中させることでコスト削減を図ることができるため、削減分をコストに反映させるとコストリーダーシップ戦略を展開できます。

収益拡大につながる

事業分野を絞り込むことにより、質の高いマーケティング戦略が可能です。自社の主力事業で新商品開発や顧客満足度改善に注力することができるため、商品イメージアップにつながり、さらなる売上や収益の増加が期待できます。

選択と集中で失敗することもあるので注意

コスト削減や売上アップにつながる選択と集中ですが、必ずしもメリットばかりではありません。失敗につながるケースもあるため、以下の点に注意しておくことが必要です。

最近は誤訳や古いという意見も

近年になって、選択と集中がウェルチ氏本来の意図で日本に広まっていないのではないかという指摘が出ています。実際、ウェルチ氏はCEO時代にいくつもの事業買収や新規事業を手掛けており、多角化経営も行っていた点を見逃せません。

さらに、2008年のリーマンショックに伴う不況で、選択と集中で事業を特化していた多くの企業が低迷した点も指摘されます。つまり、選択と集中は現代の企業経営に馴染まず、時代遅れになっているのかもしれません。

選択と集中によるデメリット

選択と集中が上手くいかなくなってきているのには、いくつかのデメリットがあるからです。ここではふたつのデメリットを紹介します。

①大規模な人員整理を伴う

選択と集中を採る際、事業を削減することで余剰人員が発生します。そこでは、解雇や自主退職を促すことで人員の削減という手段も必要になるはずです。

止むを得ないこととはいっても、人員削減は企業に対する世間からのイメージを損ねますし、残る従業員のモチベーションも下がります。また、その後に景気や需要が戻り、商品やサービス量を増やす局面になった場合、急遽人員を確保することが難しくなるでしょう。

働き方が変わりつつあるといえども、いまだに日本では終身雇用制度が強く残ることから、選択と集中が日本には馴染まないともいえます。

②リスク分散ができなくなる

選択と集中を実施すると事業分野が特定されるため、その業種を取り巻く環境に企業そのものの運命が大きく左右されるでしょう。多角経営で進めたリスク分散効果が削がれてしまうことに注意が必要です。

選択と集中の国内事例

ここまで紹介したように、選択と集中にはデメリットがあります。実際、シャープは得意の液晶テレビに特化することで「世界の亀山(シャープの亀山工場)」とまでいわれるようにはなりましたが、韓国をはじめとするアジア企業の台頭で競争が激化し、赤字体質に陥りました。

では、選択と集中を成功させた企業はどのように進めたのでしょうか。ここでは、日立製作所とキャノンの事例を紹介します。

日立製作所

リーマンショックに端を発し、日立製作所の2009年3月期の決算は過去最大の損失を計上し、7,837億円の最終赤字に至りました。これを契機に、日立製作所では選択と集中に取り組み始めます。

選択と集中を進める中心的人物となったのは、2009年4月1日付で執行役会長兼執行役社長に就任した川村隆氏です。川村氏は「赤字は悪」と考え、不採算事業の縮小を進める一方、情報通信システム、電力システム、環境・産業・交通システム、社会・都市システムに特化した事業を推し進めます。

結果、2011年3月期決算で過去最高益を計上し、V字回復を果たしました。

キヤノン

国内企業の中で早い段階に選択と集中を取り入れて成功させたのがキヤノンです。バブル崩壊後の1995年に社長に就任した御手洗冨士夫氏は、赤字事業だったPC部門から撤退し、利益率の高いインクカートリッジに経営資源を集中しました。

キヤノンの選択と集中で特徴的なのが雇用方法です。すでに述べたように、選択と集中には人員整理を伴いますが、御手洗氏は「経営手法は世界共通だが、雇用はローカルに徹する」という哲学のもと、終身雇用を守りました。一方で、年功序列をよしとせず、実力主義を取り入れた点も特徴です。

選択と集中は今も経営の安定に有効

近年、選択と集中には日本で誤解されて広まったという指摘や古い手法という指摘があり、限界がみえています。2020年のコロナ渦も特定の事業に集中することの危険性が露呈したひとつの例です。

しかし、選択と集中はコスト削減や売上増加につながる手法であることに変わりはありません。今回紹介した2社のように、国内で選択と集中を取り入れたことで業績を向上させた事例も多いのです。選択と集中を成功させるには、まず自社の強みや成長性をしっかりと認識することが鍵となるでしょう。

 

事業承継・M&Aトピックス

その他のオススメ記事

300万円以下の売りの会社・事業情報一覧へ