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M&Aのネットマッチング、こんな買い手は成約しにくい

2020年09月29日

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ネットマッチングは現代のM&Aシーンでは欠かせないサービスになってきており、市場も急成長していますが、なかなかインターネットで会社の売買というと馴染みのない方が大半かと思います。

 

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Alexas_FotosによるPixabayからの画像

また、買い手によってはネットマッチングで良い案件を見つけたとしてもなかなか成約まで進めなかったり、成約しても後になってトラブルに巻き込まれたりと、素人が独自の判断で進めてしまうと大変なことになります。

しかし、それだけでネットマッチングを遠ざけてしまうのはもったいないといわざるを得ません。「少しの工夫とノウハウを習得」するだけで、ネットマッチングは、非常に効率的で魅力的なサービスになるはずです。

 

M&Aのネットマッチングとは

 

ネットマッチングのメリットを改めてご紹介します。

 

・大企業から中小企業、零細事業者まで、幅広く活用できる

・多くの選択肢を持つことができる

・M&Aの完了期間を短縮できる(速い)

・M&Aコストを大幅に削減できる(安い)

 

買い手がこのようなメリットを享受するには、次の点を心得ておく必要があります。

 

1)過度な期待をしない

2)売り手に配慮する

3)交渉をリードする

4)売り手の従業員を気遣う

5)売り手の取引先を気遣う

 

いずれも重要な内容なので、ひとつずつ解説していきたいと思います。

 

過度な期待をする買い手は成約しづらい

買い手は当然、M&Aを行うことで事業が拡大し、売上が増え、利益が上がると考えているでしょう。しかし、期待が高すぎると交渉を進めるなかで「意外にメリットが小さい」と思えてきて、買収意欲が薄れてしまう買い手もいます。

「知らない相手」を探るネットマッチングでは特に、過度な期待は禁物です。

売りに出ている理由を冷静に分析しよう

「大儲け」している企業や事業が売りに出るはずがありません。買い手は、売りに出ている本当の理由を発見し、それでもシナジーを生み出せるかどうか検討しなければなりません。

根拠のない期待を持たず、シナジーを検討することでM&Aするメリットを冷静に考えましょう。

リスクを想定しておく

M&Aにはリスクが伴うことを覚悟しておく必要があります。M&Aには投資の一面があり、投資には必ずリスクとリターンが存在します。買い手がM&Aのリターンだけを期待すると、売り手との交渉でリスクの大きさに驚くことになるでしょう。

ネットマッチングで好条件の案件を見つけたら、「会社を買うリスク」についても考えてみる必要があります。事前にリスクを想定しておけば、交渉中にそのリスクが顕在化しても「想定の範囲内」であれば対処法を考えることができるからです。

 

売り手への配慮がない買い手は成約しづらい

“買い手は強者で売り手は弱者”という意識を買い手が持っているとしたら、M&Aの成約はしづらいでしょう。M&Aでは少なからず売り手を救済する要素がありますが、そもそも買い手も元売り手も立場に優劣など存在しません。

そのため買い手はネットマッチングの段階から平等、公平の意識を持って売り手に接することを忘れないようにしましょう。

売り手を待たせないで

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Jan VašekによるPixabayからの画像

買い手が「売り手は弱者」「売り手は下」という意識を持っていると、どうしても交渉を買い手のペースで進めようとしてしまいます。そうなると、売り手を待たせることが増えてきます。

売り手がすでに関係書類を準備しているのに、買い手がそこまで進んでいないと、売り手企業の経営者はやきもきしてしまいます。売り手の信頼を損ね破談になってしまう可能性が高まりますので、売り手の協力を得るためにも待たせないことが重要です。

買い手はむしろ、常に売り手の一歩先を行くようにしたいものです。

売り手と対等の立場に立つ

M&Aはシビアなビジネス行為であると同時に、人間味あふれる行為でもあります。売り手企業の経営者が創業者の場合、M&Aされることに忸怩たる想いがあるはずですし、売り手はM&Aによって自分の会社の価値が高まることを期待しています。

買い手は売り手の想いをリスペクトすることを忘れないようにしましょう。リスペクトとは、単なる気持ちの問題ではありません。言葉遣い、接し方、手続き方法など、すべての行動にリスペクトの気持ちを反映させてください。

「事業承継」のなかに含まれる「承る(うけたまわる)」という言葉は、謙譲語です。自分を低くして相手を高める気持ちを持って売り手に接しましょう。

まずは買い手が聞き役になる

買い手は聞き役に徹しましょう。買い手はつい、強い立場を背景にして、売り手に指示を出しがちですがそれは得策ではありません。売り手企業の経営者の気持ちを傷つけるだけでなく、売り手の情報を得にくくなり、それは純粋にビジネス上の損失になります。

売り手企業の経営者が本音を言いやすい関係を築き、リアルな情報を得るようにしてください。

調査不足にも注意する

買い手は売り手に「寄り添う」ことが求められますが、その目的は事前の企業調査をしっかりと漏れなく行うことにあります。売り手は「この買い手なら、うちの会社を任せられる」と安心できたとき、買い手の調査に積極的に協力してくれます。

M&Aでトラブルになりやすいのは、簿外債務が買い手の予想よりも大きかった場合です。買い手が簿外債務の全貌を把握することは容易ではありません。売り手の「正直な告白」こそ、簿外債務を事前把握する最良の方法です。

買い手はシビアなビジネスマインドを持ちながら売り手に「寄り添う」ことで、売り手から「正直な告白」を引き出すことができます。調査が深掘りされM&A後の戦略を描きやすくなるでしょう。

 

交渉をリードできない買い手は成約しづらい

買い手はM&Aの場面で交渉をリードする必要があります。あくまで「売り手を導く」ことであり、「専横」や「強引に引っ張る」ことではありません。

「リード」は「指示や強引さ」ではない

買い手が行う交渉のリードとは、売り手に酷な指示を出すことでも、強引に交渉を進めることでもありません。

 

日本の多くの経営者や労働者は自分の会社がM&Aされることに慣れていません。いまだに「M&Aは乗っ取り」と考えている人も少なくありません。売り手側にそのような意識があるところに、買い手が強引な指示をすれば、疑心暗鬼が募ります。その懐疑心はM&A後の経営の支障になるでしょう。

買い手がすべき交渉のリードとは、売り手にメリットを明示して安心感を与えることです。買い手は売り手に常に選択肢を与えられるとよいでしょう。選択肢を与えられれば、売り手は自身で決定することができます。

M&Aでは、売り手は厳しい選択を迫られます。しかし自ら決定して選択すれば、M&Aを前向きにとらえることができるからです。

M&Aの知識を身につけよう

交渉をリードするには買い手側自身に、M&Aの実務知識が求められます。買い手企業側に求められる知識とは次のとおりです。

 

・会社法をはじめとする関連法規の知識

・契約関連の知識

・「企業の価格」や「事業の価格」の知識

・経理と財務の知識

・債務の知識

・企業統治や会社管理の知識

・株式譲渡や株式交換、経営権などのテクニック的な知識

契約書は、作成も提出も速やかに

買い手は契約書の作成も提出も先手を心がけたいものです。契約の段取りをスピーディーに進めることで、買い手の積極姿勢を売り手に伝えることができます。

売りやすくしてあげる

買い手が交渉をリードすることで、売り手企業の経営者は自社や自社事業を売りやすくなります。

自社や自社事業を売却する経営者には「自分の力が至らなかった」という気持ちがつきまといます。しかし、売り手企業の経営者のそのような後ろ向きの気持ちは、売り手企業の従業員の士気に影響しM&Aにとってマイナスです。

そこで買い手が、売り手企業の経営者を鼓舞してあげるのです。交渉をリードしてあげることが、何よりの励ましになるでしょう。

 

売り手の従業員への気遣いも忘れずに

M&Aが公になると、売り手企業の従業員は衝撃を受け、なかには動揺して退職してしまうケースもあります。そういった場面では、次のオーナーとなる買い手が売り手企業の従業員を気遣い、会社のビジョンを明確に示すことで安心してもらえます。

働きやすさ、経営の見通し、創業オーナーへの配慮を示してあげること

売り手企業の従業員の反発や動揺は、買い手の誠意次第で上手く意識転換してもらうこともできます。

買い手は、従業員が抱いていた会社への忠誠心を新しい会社(買い手企業)への愛着に変えてもらうため、早い段階で次の3点を明確にしてあげることをお勧めします。

 

・働きやすさ

・M&A後の経営の見通し

・売り手企業の創業の精神への尊重

 

売り手企業に労働組合があれば、買い手企業の経営者が売り手企業に出向いて労組と「対話」することもお勧めします。労組がない場合は買い手が売り手の従業員から直接要望を聞き取ることも有効です。

こうした対話のなかで上記3点をしっかり伝えれば、売り手の従業員のなかに安心感が醸成されるでしょう。

M&A後に売り手企業の働き方や労働条件をガラリと変えなければならないこともあります。しかし、買い手が売り手企業の従業員に変化を求めるのは、安心感を与えたあとに実行していくべきです。信頼できる新経営者に変化を求められるのと、信用できるかどうかわからない新経営者に変化を求められるのでは、従業員の受け止め方はまったく違ってきます。

従業員の受け止め方の違いは、M&A後の働きの違いにつながります。

 

売り手の取引先への気遣いも忘れずに

買い手は売り手の取引先への気遣いも大切です。売り手企業が取引先企業と「チェンジ・オブ・コントロール条項」(以下、COC条項)を結んでいるかどうかを必ず確認してください。

COC条項が結ばれている場合、売り手企業のオーナーが変わることを取引先企業に承諾してもらえなければM&A後に取引が中断してしまい、M&Aのメリットも失われてしまいます。

COC条項とは、買い手がすべきこととは

COC条項は企業間で取引をするときの契約書に盛り込む項目で、自社の経営権が移譲されるときに相手企業の承諾を必要とする内容です。

COC条項に違反すると、つまり、取引先企業の承諾なしにM&Aが完了してしまうと、その取引先企業は取引を中断することができてしまいます。買い手が売り手の取引先企業に魅力を感じていたら、必ず事前に取引先企業にM&Aの承諾を得ておきましょう。

売り手は取引先のことも心配している

企業は取引先企業によって支えられています。買い手企業が「買うもの」には、売り手企業や売り手企業の事業だけでなく、売り手企業の取引も含まれるからです。

買い手は売り手の取引先企業に「M&Aされるなら取引を停止する」と決断されないようにしなければなりません。

売り手は自社がM&Aされることで、取引先との契約内容が変わることを心配しています。買い手がM&A後も、その取引先と良好な関係を築きたいのであれば、契約内容が変わらないことを取引先に伝えましょう。

また、買い手が売り手の取引先企業をよく思っていない場合でも、激変は回避したほうが無難です。取引先を変えなければならないときでも、時間を置いたり、少しずつ取引量を減らしたりといったソフトランディングを目指します。

売り手と一緒に取引先にあいさつに行く

買い手が売り手の取引先のパフォーマンスに満足している場合、買い手企業の経営者と売り手企業の経営者が一緒に、取引先にあいさつに行ってもよいでしょう。

取引先も、本音では取引相手(売り手企業)がM&Aされれば経営が強化されて安心できると考えているかもしれません。買い手企業の経営者の口から「M&A後も取引条件は変わらない」と聞くことができれば、取引先はさらに安心できます。

逆に、取引先に厳しい要求をしなければならないときも、買い手企業の経営者が取引先と早めに会うことで誠意をみせることができます。ネガティブな交渉をするとき、誠意が「緩衝材」になることがあります。

 

まとめ~ネットだからこそ人間味に重点を置く

ネットマッチングでは情報の集めやすさ、簡便さ、スピード感といったメリットを得ることができますが、それでも「人間味あふれる」行為であることに変わりはありません。ネット通販の感覚で会社や事業を買おうとすると失敗する確率が格段に高まります。会社は「人・モノ・カネ」で構成されています。ネットを活用してM&Aを行う際もそうした意識を念頭に置いて売り手との交渉を行いましょう。

 

 

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