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見当違いな言い値はM&A失敗の元!成約を左右するバリュエーションを正しく知ろう

2020年09月21日

M&Aにおいて、買い手企業が売り手企業の価値を評価することをバリュエーションといいます。バリュエーションはM&Aにおいて重要な手続きのひとつであり、正しく企業の価値を把握し適した金額を提示しなければM&Aが成立しにくくなるばかりか、場合によっては大きな損害を被ってしまいます。記事を参考に正しいバリュエーションの方法や計算モデルを理解しておきましょう。

 

M&Aにおけるバリュエーション(企業価値評価)とは?

M&Aによって売却を検討している場合、売り手側にとって最も重要なのは「自社がいくらで売れるのか」という点ですよね。多くの方は「株価が企業の価値」であると考えていらっしゃると思いますが、M&Aにおける会社の価値は株価のみによって定まるものではありません。適切な価格を導き出すための手法が確立され、今日ではバリュエーションと呼ばれています。

バリュエーションを行う際は、事業の規模や将来性、保有している有形・無形の資産など多角的な視野で企業の価値を見極めて算出しなければならないため、M&Aアドバイザーや中小企業診断士といった専門家に依頼するのが一般的です。

M&Aによって売却を行う際は、信頼できる専門家から算出してもらったバリュエーション(企業価値)をもとに交渉条件を詰めていきます。なぜなら、この段階でバリュエーションを行わず見当違いな金額を提示してしまうと、買い手候補者は嫌厭してしまい、交渉はおろかマッチングさえ出来なくなってしまうからです。実際に、そうしたケースは散見されおり、なかなかマッチング出来ない売り手様もいらっしゃいます。そのため、M&Aを行う上で適切な価格を把握することは、売り手にとって非常に重要なステップであることを認識しておきましょう

 

バリュエーションの手順や計算モデルとは

バリュエーションの手順は、大きく3つに分けられます。

 

1.企業価値の算出

2.バイヤーズバリューの算出

3.買収価格の決定

 

一見すると「企業価値」と「買収価格」は同じような意味として受け取られてしまいがちですが、企業価値で算出された価格のままM&Aが完了するケースは少なく、交渉やデューデリジェンスといったプロセスを通ることで買収価格は大きく変動していきます。

企業価値は、あくまで前提となる企業の価値に過ぎず、それをもとに価値を足したり引いたりするプロセスが存在する、というイメージを持つと分かりやすいでしょう。

それでは、バリュエーションから買収価格の決定までの流れを詳しく見ていきましょう。

企業価値の算出

企業の価値を算出するためには、大きく3つのアプローチ方法を用います。

 

・インカムアプローチ(DCF法、配当還元法)

・マーケットアプローチ

・コストアプローチ

 

なかでもインカムアプローチの「DCF法」を用いることが一般的であるため、ここではDCF法を用いて算出する際の手順について紹介します。

 

DCF法による企業価値の算出方法

インカムアプローチは文字通り、得られる利益をもとに企業価値に迫ろうとするアプローチ方法です。ざっくりとした考え方は、「将来得られるであろう利益」から「利益の実現のために孕んだリスク」を割り引いて「企業価値」が算出されると捉えます。

 

したがって、手順を大まかに分けると

 

1.将来得られるであろう利益の算出

2.利益の実現のために孕んだリスクを数値で算出

3.利益からリスクを割り引いて企業の価値を算出

 

といった3ステップになります。まずは1つめの利益の算出から紹介します。

 

将来得られるであろう利益の算出

「将来得られるであろう利益」を可視化するためには、フリーキャッシュフロー(FCF)を算出します。FCFは債権者や株主に分配できるキャッシュフローを指しており、以下の計算式で求められます。

 

フリーキャッシュフロー = EBIT ×(1-法人税率)+ 減価償却費 – 設備投資等 ± 運転資本等の増減

 

次に、FCFを土台として、事業の価値がどれくらい残存するかを算出します。例えば、FCFが良い数値だったとしても、数年後に事業の価値が低下してしまうとキャッシュフローは悪化してしまいますよね。つまり、事業が成長や鈍化することを見越して、事業価値の増減も含めて計算することが大切です。

 

残存価値(TV)= 継続可能FCF ×(1 + 永久成長率)÷(割引率 – 永久成長率)

 

ここで重要になるのは「割引率」をどのように設定するか、という観点です。加重平均資本コスト(WACC)という指標を導入して割引率を決定するケースも多くありますが、大体の目安として、TOPIXの平均指数では割引率を4〜7%に設定することが多いです。

上場企業であれば、割引率を6%程度に設定しておいて、考えられるリスクに応じて割引率を増減させていくのが良いでしょう。

また、現在の100円と3年後の100円では、同じ「100円」でも価値が異なることがままあります。こうした「通貨の価値の増減」についても含めて計算する必要があります。加えて、遊休資産に代表される「非事業用資産」や現預金、貸付金といった資産の価格も加味して、最終的な事業の価値を導き出します。

非常に難解な手続きが必要になるため、M&Aアドバイザーや中小企業診断士などの専門家と共に手続きを進めていくようにしましょう。

バイヤーズバリューの算出

バイヤーズバリューとは、買い手企業が譲渡される企業へ付ける価格を指します。競りの入札で「◯◯円」と値付けをするように、その買い手が妥当だと思う金額を提示するものです。

ここで重要になるのはデューデリジェンスという手続きです。デューデリジェンスは買い手企業が売り手企業に対して実施するもので、企業の財務状況やオペレーションなどを詳しく調べて、潜在的なリスクを洗い出す作業を指します。

M&Aの大まかな流れとしては、先述したバリュエーションによって売り手企業が自社の価値を算出した後に、買い手企業がデューデリジェンスを実施し、見出したリスクをもとに企業価値を差し引いて最終的なバイヤーズバリューを提示します。つまり、見方によっては「値下げの材料を見つける」とも考えられますが、デューデリジェンスは買い手企業がリスクヘッジするために必ず実施しなければならないプロセスですので、売り手側も協力を求められます。

買収価格の決定

買い手企業が提示したバイヤーズバリューに売り手企業が納得すれば、買収価格の決定に移ります。実際には最終決定までに細かな交渉が行われ、買収価格の落とし所を見つけ出します。

改めて、M&Aのバリュエーションから買収価格決定までの手順をおさらいしましょう。

まずは売り手企業が自社の価値をDCF法などを用いて算出します。次に、買い手企業がデューデリジェンスを行い、バイヤーズバリューを提示します。細かな交渉を重ねて、バイヤーズバリューに売り手企業が納得した段階で買収価格が決定し、M&A契約が締結されます。

このように、M&Aの買収価格を決定する上では売り手・買い手に関わらず専門知識が必要不可欠です。M&Aを検討している方はぜひM&A仲介会社へ相談してみることをおすすめします。

 

オンラインのM&Aで用いられるバリュエーションとは

実は、オンラインのM&Aにおいては、ここまで消化してきた手法を用いずにバリュエーションを行うことがほとんどです。どのような特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。

買い手は時価純資産をもとにする

買い手は時価純資産をもとに企業の価値を判断することが多く見られます。オンラインのM&Aの特徴として、上場していない企業が売り手企業になることが多く、非上場の企業を買収する場合はマーケットアプローチや時価純資産をもとに何年で買収額を回収し利益を立てられるようになるかを軸に価格を決めることになります。

 

具体的な金額の計算式としては、

 

・時価純資産+営業権

 

という形で算出したり、非上場企業のM&A事例が増えてきたため

 

・マーケットアプローチ(類似会社のebitda何年分)

 

を相場感として交渉により決まることがほとんどです。営業権に関しては、「営業利益の何年分」を相場として換算しますが、業種によって違うため注意しておきましょう。

 

WACはそもそも使わない

先述の通り、オンラインでのM&Aにおいては、WACを用いたバリュエーションよりも時価純資産や営業権、類似企業との対比による企業価値の算出が多いです。オンラインでのM&AはWACをあまり用いないので、ぜひ覚えておきましょう。

 

ネットのM&Aでは、何年で回収できるかが買い手の考え方

ネットのM&Aにおいては赤字債務超過企業の成約事例は多く、バトンズでは成約事例の約半数近くを閉めるといっても過言ではありません。また、今回ご紹介したような従来の手法でバリュエーションを算出せずに、類似会社の取引事例を相場としてM&Aを進めるケースもでてきています。日本M&Aセンターグループのバトンズは、過去数千件におよぶこれまでの取引事例をデータベース化しており、その事例数は日本で唯一無二を誇ります。

とはいえ、過去のM&A取引事例の相場感を元にM&Aを進める場合であっても、豊富な実績を有した専門家と二人三脚で取り組むことが成功への近道であることに変わりありません。M&Aを少しでもご検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

 

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