創業以来54年間、金型製造を営んできた宮田様(仮称)。高度経済成長期からこれまで経営は至って順調で、60歳になったら引退すると常々周囲に話していました。ところが、時期がきたら会社をたたむ準備をしていたもののなかなかタイミング良くは辞められず・・。そんな矢先、金融機関からの紹介を受けてバトンズに掲載。なんと、掲載した次の日に同じ町内の買い手からオファーがきました。
赤字でもないのに会社を畳めない。気づけば予定より15年長く経営していた
当初予定していた時期よりも引退が伸びてしまったのは、どんな理由があったのですか?
実は57歳頃から長年一緒にやってきた従業員には自分は60歳になったら会社を辞めるから誰か継ぐ人はいないかと打診していたんです。しかし誰も手を上げず、あっという間に時が過ぎてしまいました。それに60歳といっても、当時はまだまだ体力があるし働けたので。会社を畳むにあたって負債を無くし、取引先を縮小するなど準備は色々と始めていましたが、しょうがないので経営を続けていました。
なぜ会社を畳まずに経営を続けていらっしゃったんですか?
法人を解散するには会社の資産をゼロにしなければいけないのですが、それが邪魔をしていました。会社を休眠させるとか、自分で資産を買い取るという手があったけれど、固定資産税が発生するうえに会社は残ってしまうので最終的にはなんとかしなくちゃいけない。それ以外の選択肢となると、誰かに土地と建物だけでも売却するしかないのですが、法人税など支払う税金の負担が大きくなかなか実行できず。結果的に15年続けることになりました。
法人を解散するって難しいことなのですね。
そうですね。昭和52年に会社を法人化して以降は、何事もなく無事にやってこれたのでそれだけは恵まれていたと思っています。しかし辞めるのがここまで大変なものだとは想定していませんでした。
金融機関に相談しM&Aによる第三者への事業承継を知る
ご親族への承継は検討していなかったのですか?
息子が2人いますが、どちらも就職していたので実家に戻って会社を継いで欲しいとは思っていませんでした。もし親族に継がせて引退したとしても気がかりで落ち着かないですからね。そこで昨年、金融機関に相談しに行った際にM&Aという手段があると紹介されまして。その時に初めてインターネットでM&Aができることを知りました。
アルプス中央信用金庫の高坂さんを通してバトンズに掲載してもらったんですが、掲載した次の日に現オーナーから連絡が来たんです。これには驚きました。しかも同じ町内の同業です。私はお相手の先代社長のことも知っていましたから、こんなに近くから買い手が見つかるとは正直思ってもいませんでした。
掲載した次の日にオファーがあったのは驚きですね。お相手社長の印象はいかがでしたか?
自分の息子と同じ年齢で、3年前から買収できる企業を探していたと聞きました。ぜひ買いたいと意向を示してくれ、こんなに喜んで買いたいと思ってくれる人が見つかって素直にありがたいと感じました。
実は今年の3月にトップ面談をしたのですが、交渉が進むにつれコロナの影響が拡大していたので、もしかしたら破談になるかもしれないかなと聞いてみたんです。するとお相手の方は「そんなことない、コロナ禍だから今が逆にチャンスなんです」と言いました。融資が出やすく、投資するにはいいタイミングだったみたいです。
コロナ禍でもあっという間に契約締結。譲渡後は新オーナーの手によって工場建て増し中
株式譲渡により無事に最終契約を締結されましたが、交渉中に論点はございませんでしたか?
幸いにもこんなにスムーズにいくものなのかと思うくらい問題は起こりませんでした。もめたりすることもなく先方が喜んで買って下さった。担当してくれたアルプス中央信用金庫の高坂さんからもハッピーエンドでしたねと言われまして。M&Aがこんなにいいものだったとは考えてもいませんでした。これは周りにも勧めないといかんですね。笑
最終契約を終えた後どのような気持ちでしたか。また新オーナーへの引き継ぎはございますか?
肩の荷が下りて安心しました。今年7月に最終契約を締結し、現在は新オーナーが工場の建て増しを行っています。それが終わったら、一緒に取引先に挨拶に行く予定です。頼れる若い社長が引き継いでくれたので、これからはどんどん発展していって欲しいなと思います。
当初の計画通りではなかったものの、M&Aを行ったおかげで無事に後継者が見つかり、15年目にしてやっと経営の第一線から退くことができた宮田様。今回の宮田様のご経験は、後継者不在で事業承継の悩みを抱える経営者の方々にとって、勇気づけられる事例だったのではないでしょうか。
担当アドバイザー:アルプス中央信用金庫の高坂様から
宮田様、長い間お疲れ様でした。ハッピーエンドのお手伝いができて本当に良かったです。今、思えば営業店から私に相談案件が持ち込まれたときは廃業支援でした。それがバトンズに掲載して短期間で、しかも同じ町の同業者様とのM&A成約に至るとは思ってもいませんでした。無事に後継者が見つかってよかったですね。
http://www.alupuschuo-shinkin.jp/
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