
銀座でバーを経営していた岩下様。2020年7月上旬に、わずか3週間でM&Aを完了し売却されました。現在はメイン事業のコンサルティングに集中し関連事業の開発準備を行われています。コロナの影響でまだまだ先行きが見通せない飲食業ですが、素早い判断が成功のカギを握るようです。
念願の独立後はじめてのバー経営。お客がまたお客を呼び、利益を得る以上の経験ができた
そもそもバーの経営はなぜ始められたのですか?
会社員だった頃から自分で事業を行いたいと常々思っていました。独立時に同僚と会社を設立し、何の事業をやりたいかと考えた時、まだ蓄えがそんなになかったので日々売上が上がり粗利も高い事業としてバーの経営をしようと考えました。昼間は時間があくので、夜バーを経営し昼間は違うことができるのもいいなと思ってはじめました。
経営は順調でしたか?
事業計画をかなり保守的に作っていたのでこれだったら失敗しないだろうと思っていましたが、実際に自分でやってみるとこんなに新規集客が難しいとは思いませんでしたね。
オープンしてすぐは前職の同僚や先輩、知り合いがよくお店に来てくれていたのですが、徐々に新規のお客様も増えて、いい時は月200万円ほど利益が出るまでになっていました。
バーを絶対やってみたいから起業したというわけではなかったのですが、初めての経営でバーを選択して良かったなと思ったのはこれまでとは違う分野の人脈が広がったことです。銀座にお店を出していたのでお客様は若い方でも年配の方でも経営者が多かった。特に多くの店舗ビジネス経営者の方々と知り合いました。
こうしたお客様の出会いから新しいビジネスの話を紹介してもらったり、並行して行っているコンサルティングの営業や案件の獲得にも繋がり、バーという場を利用してオフラインで人とのネットワークを築くことができたのは非常に面白いと思います。
コンサルティング事業の他にも人材紹介、HPの制作事業、営業代行を行っているのですが、今後のビジネスに繋がるお客様との出会いは貴重な経験になりました。
人気のバーだったのですね。ところが今回譲渡を決断されたのは早かったですね。
実は、通ってくれるお客さんもいたのでギリギリまで今回の店舗は残しておこうと迷っていたのです。しかし、銀座にふたつ目の路面店(家賃180万/月)を作るときに5000万円くらい資金投下していまして。手元のキャッシュが多くは残っておらずコロナの影響がどれくらい続くのかも見えない状況なので、保守的に2店舗とも売るなら今しかないと思いました。飲食事業は固定費が大きいので、譲り受けていただけるお相手を探すならば早いほうがいいだろうなと考えました。
他サイトにも掲載していたが一番高い買収金額を掲示してくれたのがバトンズの買い手だった
早速バトンズでお相手の募集開始。買い手の印象はいかがでしたか?
バトンズや他サイトに掲載していたのですが、最終的にバトンズからマッチングしオファーをいただいたアパレル商社の社長に事業譲渡しました。人柄や長年の経営経験を含め尊敬できる方だなと思いましたね。最近も一緒にご飯に行き、「うちのビジネスについて一緒に考えてもらえませんか」とご相談を受けさせていただきました。M&A後にキッパリと途切れることなく、新たなビジネスを出来ないか引き続き良い関係を築けていると思います。
交渉中はどんな論点がありましたか?
金額面ですね。お店は解約通知を不動産屋にすでに提出していて、3ヶ月くらいでM&Aで売却できるお相手を決めなければならなかったのですが、最初は知り合いに相談したり、バトンズだけでなく居抜き物件の売却サイトにも掲載したりと、幅広く探していました。結果的に9社からオファーがあり、一番高く提示していただいたバトンズの買い手の方にお譲りすることになりました。
新オーナーはアパレル出身のため飲食事業は初参入ですが、学生時代にバーでアルバイトを経験されていていつか自身で経営してみたかったと非常に関心を寄せていただいたので、お相手の条件としては文句なしでした。
自身がM&Aで事業譲渡した経験を活かし、飲食店の厨房機器や什器の再販ビジネスを構想
今後はどういった事業展開を行なっていかれるのですか?
今後は飲食事業とか固定費が大きいものは控えて、私はこれまでやってきた経験を活かして店舗内装や設備を含めた譲渡、いわゆる居抜き譲渡のコンサルティング、共同経営者は人材紹介事業の二つをメイン事業として注力していきます。あとはスポットでHP制作事業や営業代行業を並行していく予定です。
やはりコロナ禍においては固定費が高い事業は不安定すぎるので、なるべくリスクが低い事業を安定させていきたいと思います。
メイン事業に集中しつつ、関連事業を複数持つのは重要な戦略ですよね。
そうですね。実は知り合いの飲食経営者からお店を譲渡したい、もしくは閉めたいという相談が増えているんです。そこでコンサルティング以外にも店舗の売買に付随したビジネスをしたいと構想しています。
お店に残った厨房機器やお酒など(冷蔵庫、ワインセラー)の在庫の処分は通常、中古買取業者に買い取ってもらうか処分するのですが、非常に安価な値段でしか買い取ってもらえないか、もしくは処分代で逆にお金を払わないといけなかったりします。
私自身は、今回バーを譲渡すると決めたときに酒類販売業免許を取得。在庫のお酒や厨房機器、その他備品をネットや店舗で販売して、ほぼ全てを捌く事ができました。その経験から、閉店や売却予定の店舗内にある厨房機器や什器、お酒を販売する事業を自分でもやったらいいのではないかと。
飲食店経営は、内装、厨房機器、家具、仕入れ等、初期投資は数千万掛かるケースが多いです。ただ、閉店となると、厨房機器、家具、在庫はほとんど価値の無いものとなってしまいます。また、多額のお金を掛けた内装も退去時に解体しなければならないため、更に数百万円の解体費用を掛ける事になります。始めるにもお金が掛かり、やめるにもお金が掛かる。店舗経営者が事業をやめる時にはほとんど手残りが確保できていないのが現状です。
今後は、店舗売却のコンサルティングだけでなく、店舗で使用していた物品の売買を含め、店舗経営者にとって少しでもプラスになるような形で我々が買い取り再販するビジネスも構築できれば良いなと考えています。
Photo by Jason Leung on Unsplash
<売り手のご紹介>
岩下 岳
新卒で大手メーカーに入社。同社の海外拠点立上げ業務等に従事。その後、M&Aコンサルティングを行う大手企業に入社し、複数社のM&A成約に関与。これまで、IT・製造業・人材ビジネス・小売・物流・アパレル等、 業界・業種を問わず多数のM&Aを支援。独立後は、飲食店経営、人材紹介エージェント事業、M&Aコンサルティング事業等に従事。現在は、自ら飲食店を経営、売却した経験を活かし、店舗売却・閉店時のサポート(店舗売却のコンサルティング業務)も手掛けている。(https://right-b.com/)
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