「出口」から逆算した事業創り。沖縄の繁盛店を譲渡し、次なる事業へ向けて戦略的資金調達
2026年04月06日
2026年04月06日
M&Aは、次なる事業への再投資を目的とした「戦略的資金調達」としても活用されています。今回ご紹介するのは、沖縄の繁盛バーを譲渡し、その資金を新業態である「しゃぶしゃぶ店」の多店舗展開に充てた株式会社Sの事例です。創業時から、将来的な売却も視野に入れ、「オーナーがいなくても回る仕組み」を構築。譲渡を一つの成長プロセスと捉えるSの代表取締役を務める髙橋興央様に、その具体的な手法や事業戦略を伺いました。
| 売り手 | |
|---|---|
| 事業名 | 株式会社S |
| 業種 | 飲食業 |
| 拠点 | 沖縄県 |
| 譲渡理由 | 選択と集中 |


| 買い手 | |
|---|---|
| 社名 | ペンブルック株式会社 |
| 業種 | 商社 |
| 拠点 | 愛知県 |
| 譲受理由 | 起業、副業 |

福島県を拠点に代行業や建設業を経営する髙橋様が、沖縄県沖縄市・ゲート通りに「STAR BAR」を立ち上げたのは2021年。コロナ禍の当時に新規開店に踏み切ったのは、旅行で何度も沖縄を訪れるうちに、土地や人の魅力に惹かれ、「いつか沖縄に自分の店を持ちたい」と考えるようになった背景からでした。開業したエリアにも、明確な勝算がありました。
「沖縄市のゲート通りは、在沖米軍関係者の往来が多いエリアです。そこで米軍関係者をメイン・ターゲットに設定し、アメリカ人に好まれる内装やメニューを揃えました。
店内は海外のバーを思わせる空間に仕上げ、フードやドリンクも嗜好に合わせて構成。一般的なバーではなく、『アメリカ人が居心地よく過ごせる空間』を徹底的に追求しました。」
さらに髙橋様は、通常の営業時間より短くしても「お店を開ける」という方針を貫きました。当時は休業する店舗が多く、営業している店は限られていました。その結果、顧客が自然と集まり、短期間で認知を拡大できたといいます。
コロナ禍が落ち着くと、STAR BARはさらに活気あふれる店になりました。豊富なフードメニュー、シーシャ(水たばこ)を楽しめる点、フレンドリーな接客が口コミで広がり、リピーターが増加。Googleマップでも高評価を獲得し、エリア内で確かな存在感を放つ店へと成長しました。
順調にファンを増やしていた中、髙橋様がM&Aを意識するきっかけとなったのは、知人の体験談でした。
「関西の知人から、バーを譲渡したという話を聞きました。その成功事例を知り、自分にとってもM&Aは有力な選択肢になると考えるようになりました。私自身、ちょうど新業態『しゃぶしゃぶ はじめました。』の拡大に注力したいと思っていたので、このブランドの成長を加速させるための“戦略的な資金調達”という意味合いでも真剣に検討するようになりました。」
M&Aの検討は、事業の撤退ではなく成長戦略の一環。経営資源を事業の柱へ再投資する前向きな意思決定でした。M&Aを本格的に検討し始めた髙橋様は、バーを譲渡したという知人からの紹介で、M&A仲介会社Unlockの馬場将人様に相談。そこから、馬場様からの提案でバトンズに登録し、譲渡先を探し始めます。
「譲渡先を検討するにあたっては、誠実に店舗を運営してくれる方であれば、細かい条件は求めませんでした。」
初めてのM&Aで不安もありましたが、馬場様が交渉や契約実務を丁寧にサポート。専門家が伴走してくれたことが、大きな安心材料になったといいます。
バトンズに登録後、髙橋様は4社と交渉。オファーは沖縄県外の企業企業からも寄せられたといいます。その中から、最もスムーズに協議が進んだ株式会社ペンブルックと成約に至りました。
「ベンブルックの代表の佐藤様(仮名)は飲食業界の未経験者でしたが、現店長がM&A後も継続して店舗運営を担うため、大きな問題はないとお互いに判断しました。また、佐藤様から『引き続き現場をしっかり見てほしい』とのご要望があり、私自身も3年間のコンサルティング契約を結び、バックアップ体制を整えています。
そのため、運営体制は譲渡前とほとんど変わっておらず、佐藤様にも最小限のご負担で安定経営を実現していただいています。」
こうしてM&Aの交渉から契約締結までを円滑に進めることができましたが、一方で髙橋様には不安もありました。
「M&Aをする上で、従業員がどう受け止めるかという点は大きな不安材料でした。しかし、譲渡後も職場環境や待遇は変わらないこと、そして次のオーナーが信頼できる方であることを丁寧に説明しました。そのことをメンバーみんなが理解し、前向きに受け止めてくれました。」

新業態『しゃぶしゃぶ はじめました。』を成長させるための戦略的な意思決定としてM&Aを進めた高橋様。同事業は、2026年2月時点で沖縄県内を中心に5店舗を展開。さらなる事業拡大に向けて奮闘中ですが、この事業を育てた先には、再びM&Aで譲渡をすることもひとつの選択肢として見据えているといいます。
「譲渡をする上で一番重要なのは、『オーナーや社長、キーマンなどがいなくても回る仕組み』をつくることではないでしょうか。他の方に引き継いでいただくには、職人技や感覚に依存しない体制づくりが不可欠だと思います。
その具体策として、『しゃぶしゃぶはじめました。』では徹底したマニュアル化・システム化を推進しています。たとえば出汁の製造を工場と提携し、各店舗で“注ぐだけ”の状態にすることで、熟練の料理人がいなくても品質を維持できる体制を構築しています。」
次のM&Aという目標を掲げ、事業価値の最大化に挑む株式会社Sのさらなるご発展を、バトンズ一同、心より応援しております。
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