
現在、モバイルソフトの開発者としてIT企業に勤める岡村様(仮称)は、2020年4月に家具のECサイト(https://space-design.info/)を事業譲渡により買収。会社員として勤務する傍ら副業としてECサイトの運営を行っています。岡村様は今後も買収意欲があり、今回のM&Aについては「次のM&Aの土台作りです」とのこと。事業の買収に至った決め手や、今後の展望を伺いました。
将来独立するための布石として低リスクの事業をM&A。まずは副業として運営開始
そもそも、独立を目指していらっしゃったと伺いましたが?
そうですね。元々副業することが目的ではなく、会社員を辞め将来独立することを目指しています。前々から会社員としての生活は長くはないと考えており、過去に会社勤務を続けながら知り合いとITベンチャーを起業するなど、独立する道を探していました。約1年半前にM&Aで独立するという選択肢を思い立ち、業種を問わずバトンズで案件を探すようになりました。
しかし、なかなかこれ一本でやれると自分が思えるような案件を見つけることができずちょうど一年経った頃、まずは会社員を続けながらこれまでやってきた本業(IT事業)に関連する案件を買収してみて、副業としてモノを売るサービスの土台を作るほうが現実的だと考えるようになりました。
初めてのM&Aはどんなビジネスモデルにするかが非常に大事ですものね。
はい。正直、サラリーマンが買収できる規模の案件の多くは経営状況が少し傾いていたりする中小・零細企業が多いと思います。なので、まずはビジネスのベースを持ちこれから自分で立て直せる規模の製造業や小売業などを買収しECサイトと結びつけていこうと考えています。
いつ売り手様とマッチングされましたか?ご成約までの期間は?
2020年1月にマッチングして3月に成約したので約2ヶ月でM&Aを終えました。
売り手の印象はいかがでしたか?
売り手の方はM&A専門の会計事務所の会計士だったため質問に的確に答えてくださりスムーズに交渉を進めることができました。
譲渡価額については、元々提示されていた希望額は想定よりも高かったのですが在庫を持っているわけでもないですし、いわゆる転売で直近の売上もゼロでした。そこで、拒絶されるのを承知で正直に値下げ額を提案したらすんなりと受け入れていただきました。最終的には色々と事業内容を見させていただいた結果、50万円で譲渡していただきました。
低リスク事業のポイントは固定費が安く、在庫がないこと
買収の決め手はなんでしたか?
なんといってもリスクが少なかったからです。また本業に影響しない範囲で事業譲渡というM&Aスキームを学び、この事業で様々なことを試せると思いました。
サイトは2008年から運営されており、10年以上かけてそれなりのPV数を稼いでいました。また、取り扱っている家具は高額商品というわけではないので損益分岐点は非常に低く、サーバー代といった毎月の固定費も数万円程度で済みます。商品によって利益率は異なりますが、1週間に1〜2個の商品が売れれば経費を回収できてしまう。どう失敗しても大きな損をすることがないと思ったのが決め手です。
M&Aを行われた直後、まず何をされましたか?
実は3ヶ月は何もできないという状況でした。買収後、新たに会社を立ち上げたのですが、ECサイトに必須である決済の仕組みを導入する審査が予想以上に厳しく・・・。4月1日に譲渡契約をしたあとすぐにビジネスを始められるかなと思っていたのですが、実際に運営開始できたのは6月からです。
決済をスタートさせるためには会社名義の銀行口座が必要ということを把握していなかったからなんですが、ちょうどコロナの影響もあり郵便が遅れ気味で、口座開設のための審査や電子マネー決済システムの審査などに通常よりも時間がかかってしまいました。
また、サイトをすぐにでも大幅リニューアルしたかったのですが、審査中はサイトを変えることを禁止されていたので、ひたすら待っていました。
無事にサイト運営が開始されてから取り組まれていることは?
まずは大幅にサイト内をリニューアルしました。元々は商品点数が約1000点あったのですが、そのほとんどはすでに卸先が取り扱っておらず注文しても発送できない状況だったのです。リニューアル時にそうした商品をすべて取り除き、いまは約200点に整理しました。

Photo by Carlos Muza on Unsplash
しかし、商品点数を整理したことと、M&A直後に3ヶ月間サイトを一時停止せざるを得なかったことが原因でサイト流入が大幅に減ってしまっています。いまはSEO向上のために色々と試行錯誤している段階です。あとは、新たな取扱商品を増やすために取引先の開拓を行っていて、今後ヤフーショッピングやアマゾンに出店するための準備を行っています。
じっくり事業を育てるよりもピボット重視で試行錯誤していく
今後の目標はありますか?
まずはこのサイトを成長させて大手ECのモールに出店することが近々の目標ですが、最も重要なのは、サイトをどんどん大きくしていくのではなく、M&Aを行う上で自分に必要な知識やノウハウを身につけ、次のM&Aをしっかりやるためのベースを作るということです。
ECサイトのなかでも家具のECは本当に激戦で、自分自身、特に家具にこだわりがあるわけではないため、今後数ヶ月以内に可能性を見極めるつもりです。芽が出ないのであれば売るモノを変えて方向転換してみようかと思います。
試行錯誤の繰り返しですが、次にM&Aを行う時はサラリーマンを辞めて本業として行える事業を買収したいですね。
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