東京・調布市、町の本屋さんを譲受! 「人が集まり、つながる場所」として、本屋の枠を超えた集い場所に
2025年06月19日
2025年06月19日
京王線・飛田給駅前で地域の文化拠点として親しまれてきた「ひたちや書店」。この書店が2025年春、合同会社First Step代表・明壁陽子様により、事業承継されました。本屋を単なる“本を売る場所”ではなく、「人が集まり、つながる場所」として運営していきたいと話す明壁様は、どのような想いでこの書店を受け継がれたのでしょうか。M&Aに至るまでの経緯や引継ぎ業務のプロセス、今後の事業ビジョンなどについて、明壁様にお話を伺いました。
譲渡側 | |
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店舗名 | ひたちや書店 |
業種 | 小売(書店) |
拠点 | 東京都 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受側 | |
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区分 | 個人 |
業種 | 個人向けサービス業 |
拠点 | 東京都 |
譲受理由 | 起業・副業 |
明壁様がM&Aに興味を持ち始めたのは、数年前のこと。「講師としての活動の幅をもっと広げたい」という想いから、M&Aという選択肢に自然と目が向くようになったそうです。
「私は『一般社団法人ほめる達人協会』の認定講師として活動しています。“人が集まる場”があれば、きっと講師としての幅も広がるんじゃないか。そんなイメージを以前から持っていました。
ただ、ゼロから立ち上げるのはハードルが高い。それなら、すでにある事業を引き継いで、自分の活動と結びつけられたらと考えて、M&Aに関心を持つようになったんです。
その後M&Aについてネットで調べてみたところ、バトンズのサイトに出会いました。いろんな案件が掲載されていて、もしかしたら良いご縁に出会えるかもしれないと思い、すぐに登録しました。」
最初は「人が集まる場」という軸で、カフェやバーなどの案件を中心にチェックしていたという明壁様。一方で、もともと本が好きだったこともあり、本屋さんの案件も時々検索していたとのこと。ただ、条件に合う書店の案件はなかなか見つからず、「やっぱり現実的には難しいのだろうか…」と感じていたそうです。そんな中で出会ったのが、今回ご成約された「ひたちや書店」でした。
「ひたちや書店の案件を初めて見たとき、『え、本屋さんがある!?』と思わず感動してしまいました。しかも、場所は私の暮らす東京都内で、金額も自己資金で十分まかなえる範囲内だったんです。『これは……!』と心が動き、迷わず申し込みを入れて、現地を見に行くことにしました。」
書店の最寄り駅は、京王線の飛田給駅。味の素スタジアムや武蔵野の森公園がすぐ近くにあり、他地域からも多くの利用者が見込まれるエリアです。駅から書店までは徒歩2分。実際に歩いてみると、想像以上の駅チカという好条件である一方で、少し気になる点もあったと当時を振り返ります。
「駅前ではあるものの、スタジアム方面とは逆側の南口近くにあって、逆側と比べて少しひっそりした印象だったんです。また、建物も築年数がかなり経っていて、外観も内装もけっこう傷んで。それが少し不安材料ではありましたね。」
不安な点はあったものの、同時に明壁様のなかでは「やり方次第でこの場所の良さを引き出せるのではないか」という感覚もあったそうです。「工夫次第で、きっと面白い場所になる」そんな前向きな期待が芽生えていました。
ひたちや書店の前オーナー・佐野様との面談で、明壁様は「ぜひ譲り受けたい」と前向きな気持ちを伝えていました。これに対して、佐野様も「明壁さん以外の人とは交渉していないですよ。こちらも、ぜひお願いしたい」との意思を明らかにしていたとのこと。
しかし、佐野様はオンラインでのやりとりにあまり慣れておらず、バトンズのサイトをしばらく確認されていなかった期間があるなど、実際には申し込みから成約までに約1年を要しました。
「ご年齢やネットの習熟度によってペースが違うのは当たり前ですし、こちらが無理に急がせるのは違うなと感じました。だからこそ、佐野様の歩調に合わせて、焦らず丁寧に向き合おうと決めたんです。」
そんな折、佐野様の娘様がやりとりのサポートに加わってくださるようになり、そこからはやりとりがスムーズに。交渉のテンポが速まり、譲渡に向けた話も具体化していきました。佐野様も明壁様も初のM&Aでしたが、契約の流れやポイントについてはバトンズからのサポートがあったため、問題なく運んだと振り返ります。
「ひたちや書店」は、店名を「本屋ふらふらっと」に改め、新たなスタートを切りました。書店の経営を引き継ぐ際、どんな業務があるのかを明壁さんに伺ったところ、大きく分けて3つの引継ぎがあったとのことでした。
まず1つ目は、本や雑誌の流通を担う「取次」とのやりとり。これは、取次会社の担当者が丁寧にサポートしてくれたおかげで、比較的スムーズに進んだそうです。
2つ目は、公的機関との契約の引継ぎです。「ひたちや書店」は、調布市内の書店組合に加盟しており、市内の学校や公民館に本や雑誌を納入する役割を担っていました。この手続きも事務的な内容が中心だったため、円滑に進められました。
そして3つ目が、雑誌の定期配達。これは、近隣の美容室やクリニックなど約100に雑誌を定期的に届ける内容です。この定期配達の引継ぎには、思っていた以上に手間がかかったといいます。
「月刊誌や週刊誌のように発行サイクルが短い雑誌は、データベースが整備されていて、配達先や配達頻度をすぐに把握できました。ただ、年1回や半年に1回といった発行サイクルの長い雑誌については、データベースが十分整っておらず、把握に時間がかかりました。」
この課題は、前オーナーの佐野様に明壁様から都度ヒアリングを重ね、配達情報を一つひとつ整理することで解決していきました。
「成約後は、3月から本格的に引継ぎを始めて、4月から私が雑誌や書籍の配達をするようになり、6月10日から店頭販売をスタートするというのが大きな流れでした。午前中に雑誌や書籍の配達の業務があるため、店頭営業の時間は、平日(火〜金)13時~19時、休日12時〜18時(土日・祝)、定休日は毎週月曜日としています。沿線をご利用の方や、近くにお住まいの方は、ぜひ、お気軽にお立ち寄りいただけると嬉しいです。」
店名を「本屋ふらふらっと」に変え、リニューアルオープンした飛田給駅前の書店。これからどんな場所に育てていきたいのか、明壁様に伺いました。
「町の本屋さんとしての役割を、何より大切にしたいんです。店名のとおり、誰もが“ふらっと”立ち寄れて、気軽に本と触れ合える。そんな場所にするのが、私の一番の目標です。」
なかでも、お子様や女性が訪れやすい雰囲気づくりを心がけているそう。その一環として、絵本を多めに揃えたり、駄菓子を置いたりと、親子で楽しめる仕掛けを店内に散りばめています。
「町のみんなが気軽に集まれる場にしたい」という想いに加えて、明壁様はもうひとつ、「本屋ふらふらっと」ならではの個性を出していこうとしています。それが、“ほめる”というテーマです。
「私は『日本ほめる達人協会』の認定講師をしています。全国に約400名いる認定講師のなかには、著書を出している方もいますので、そうした方々の本を集めた“ほめ達コーナー”を設ける予定です。今後はワークショップなども開催して、協会が提唱する考え方をもっと身近に感じてもらえたらと思っています。」
日本ほめる達人協会は、「ほめる」素晴らしさを伝え、「ほめる達人」を世界中に生み出すことを目的に設立されました。明壁様によると、ここで言う「ほめる」とは、単にお世辞をいうことではなく、「人・モノ・出来事の価値を発見して伝える」ことで、人間関係や日々の暮らしをより豊かにしていく、そんな考え方なのだそうです。
明壁様は今後、町の書店を受け継ぎ、育てていくという実体験を積極的に発信していきたいとのこと。これにより、「本屋を残したいけれど跡継ぎがいない」と悩む人たちに、こういうやり方もあると知ってもらうきっかけになればと考えていらっしゃいます。
バトンズ一同、「本屋ふらふらっと」が、地域に根ざした“人と本がつながる場所”として、これからも多くの方に愛され続けることを心より願っております。
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