M&Aとは企業の合併や買収をする戦略のことです。M&Aは経営戦略のひとつで、弱い部分を補えたり、市場の変化に迅速に対応できたりするなどのメリットがあります。そのため近年は積極的にM&Aを行う企業が増えています。
しかし、M&Aは簡単に成立するものではありません。M&Aが成立した後に、経営がうまくいかなくなるケースもあり得ます。実は、一筋縄ではいかないM&Aを成功させるためには、経営者同士の相性が非常に重要なのです。
では具体的にどのような点をもって相性がいいと判断すればよいのでしょうか。今回は、売り手と買い手の経営者がお互いに注意すべきポイントをおさらいし、M&Aの成功率を高めるための秘訣をお教えします。
いい案件とマッチングしたら、買い手が配慮すべきこと
M&Aでは買い手が注意すべき点が幾つかあります。その中でも最も重要なことが、売り手を待たせないこと、さらには売り手に敬意を持って接することです。特にネットでやり取りする場合には、重要なポイントです。
売り手はあなただけとマッチングしているわけではない
売り手を待たせないというのはどういうことなのでしょうか。バトンズのようにネットマッチングが可能なサービスを利用する場合、従来のM&Aとは異なり、すべてネット上でのやりとりからスタートします。近年は買い手の母数が増大してきているため、M&A実務を支援する専門家や、M&Aの関連サービスを提供する企業も増えてきています。
そうした環境の変化によって、M&Aの交渉の場が増えているわけです。もし先に交渉をはじめたのに返事がなかなかなければ、売り手は「次の買い手候補と交渉を進めたほうがより良い条件交渉ができるかもしれない」と思うでしょう。しかし、先にマッチングした買い手の反応も待たなければならいので、悶々としてしまいます。
売り手としては先に話をはじめた買い手と、優先的にM&Aについて交渉するのが当然だとも考えるわけですが、返事を待っている間にさらに条件のよい買い手候補を逃してしまう可能性もあるのです。
こうして連絡が遅い買い手には、「会社を売りたくない」とM&Aの交渉そのものが無くなってしまう可能性すらもあります。つまり買い手は売り手を待たせずにすぐに返事をすることが大切なポイントになのです。
またネット上でのやりとりだと、どうしても言葉が雑になってしまうことがあります。レスポンスを早くするのは非常に重要なことですが、相手への配慮を欠くべきではなく、言葉選びも慎重に行う必要があります。
買い手だからといって強気の態度に出ていたら、うまくいくはずがありません。売り手の言葉に耳を傾け、敬意を持って接しなければなりません。売り手はM&Aに対してさまざまな不安を持っています。「本当にM&Aをしていいのだろうか」と悩んでいる経営者もいるでしょう。「従業員とうまく行くだろうか」「取引先は納得してくれるだろうか」と不安なのです。
そうした不安を解決する相手の役割でもあります。売り手の不安が解消されるようなコミュニケーションを取ることを最大限努力していきましょう。
トップ面談(対面)に進んだら注意すべきこと
ネットでの条件交渉のやりとりからトップ面談に進んだら、COC(チェンジオブコントロール)条項についても確認しておきましょう。この確認を怠ると、最後の最後で破談になってしまったり、最悪の場合、M&A後に取引先を失う可能性もあります。
COC条項の重要性
M&Aを行うということは会社のオーナーが代わるということです。そうしたオーナーの交代は取引先にも連絡しておくべきです。特にCOC条項がある際には、その条件をしっかりと確認しなければなりません。
COC条項には通知義務だけでなく、契約解除について記載されている場合があります。通知の場合は、事後に知らせればよい場合もあります。しかし契約解除がCOC条項に含まれている場合、どのような場合に契約解除が考えられるのか、買い手は事前に知っておかなければなりません。そうしなければM&Aをしたことで、契約が解除されるということも考えられます。
ではどのような場合に契約解除がなされるのでしょうか。考えられる理由としては以下の2つが考えられます。
1.買い手と取引先が競合する場合
取引先と買い手が競合である場合、その買い手に自社の情報が漏れてしまっては困りますよね。そのため自社の情報を買い手に流さないために、契約を解除するということが考えられます。取引先との間意にCOC条項はあるのか、あるとしたら契約解除の条件はどうなっているのか、またその可能性がどれくらいあるのか調べておくべきでしょう。
2.買い手の経営者や企業の印象が悪い
取引先としては世間の印象が悪い企業と仕事をすることにメリットはありません。とくにコンプライアンスが重視される現代において、悪評が立つのは企業にとって致命的です。ただし印象が悪いというだけで契約解除になる事例は、めったに起こらないことではあるでしょう。
基本合意後にきちんとデューデリジェンスを行う
売り手と買い手の双方がこれまでの条件交渉で合意しあった内容を整理し確認しあい、文書で締結する“基本合意”を行なった後は、デューデリジェンスをしっかりと行うことです。デューデリジェンスとは、売り手の企業の資産価値やリスクなどをしっかりと精査することをいいます。
デューデリジェンスが必要になる理由
デューデリジェンスというと、上場企業だけが行う監査と思われがちですが、中小企業においてもデューデリジェンスは必要です。企業の財務に関する調査をするためには財務デューデリジェンスによって、財政状況はどのような状態なのか、そこをしっかりと理解しておかなければ後々買い手が経営につまづく原因となります。
また、事業のビジネスモデルや取引状況、さらにはM&Aが成立した後にどの程度の価値があるかなどを測るビジネスデューデリジェンス、最後に法律上の問題点などを調査する法務デューデリジェンスも場合によっては行われることがあります。
万が一にも売り手が提示している事業内容や資産が間違っていては、M&Aの後に買い手が大きな損失を被る可能性があります。そのため、買い手としては隠れたリスクが存在しないかどうかをチェックしなければなりません。
こうしたリスクは意図的に売り手が隠している場合だけではありません。売り手には気づかないリスクが存在している可能性もあるからです。もちろん反対に売り手が気づいていない資産価値もあるかもしれません。そうしたリスクや資産価値は買収価格にも影響してきます。
こうしたリスクや企業価値をしっかりと把握するためにも、デューデリジェンスは大変重要な役割を担います。また相手がどんな小さな企業でも、デューデリジェンスは欠かしてはいけません。
「小さな企業に対する買収だからそんなに問題がないだろう」と思っていたら、財務上で大変な問題が存在していたこともあります。そのため企業の大小にかかわらず、デューデリジェンスはM&Aにおいて必ず実施するようにしましょう。
デューデリジェンスでは、チェックすべき項目は多岐に渡ります。ここで問題がなければ、最終契約に向けてスムーズに進むことができますので、デューデリジェンスは欠かさずに行いましょう。
デューデリジェンスには専門的な知識が必要になります。ぜひ、信頼できる専門家に依頼し、リスクを精査した上で最終的な判断を下すようにしましょう。
売り手が配慮すべきこと
M&Aでは売り手が配慮すべきこともあります。例えば、従業員や取引先と買い手がうまくやれるかということです。買い手と従業員や取引先との関係がどうかは、企業が存続していくという意味だけでなく、そこで働く従業員や会社に関わる取引先にとっても重要な意味を持ちます。売り手が引退後も事業が上手く回るような配慮が必要です。
従業員や取引先とうまくやっていけるか
売り手は、買い手が今後自分たちの会社を引き継いでくれる相手だと認識して接する必要があります。M&Aはただの売買ではありません。そこには多くの取引先や従業員がいることを忘れてはいけないでしょう。
売り手は会社を売ることが目的ですが、買い手が本当に事業をしっかりとやってくれるのかどうか、また従業員をきちんと受け入れてくれるかどうかを、早めに見極める必要があります。また、そうした見極めが売り手としての最後の責任でもあります。
さらには取引先のことを大事にしてくれるのかどうか、そこも重要なポイントの一つです。事業をすることになるので、どうしても相性というのがありますが、取引先とうまく続けていってくれるのかなども判断しなければなりません。
その際に重要なのは、お互いの(企業)文化が合うかどうかです。同じような文化の会社でM&Aを行えば、うまくいく可能性はかなり高いです。しかし一方で、まったく違う企業文化の会社のM&Aはうまくいく可能性が少ないといえます。買い手との面談で相手の態度を判断するだけでなく、そういった部分もしっかりと調べておいた方がよいでしょう。
また取引先や従業員を守るためには、買い手に信頼してもらわなければなりません。そのためには、買い手に対して正しい情報を出す必要があります。正しい決算書を3期分準備する、簿外債務がないことを確認する、さらには資産の整理を行っておく必要があるでしょう。
売り手も買い手もwin-winの関係になるM&Aを行いましょう
M&Aは売り手も買い手もwin-winの関係になるようなものにすべきです。その関係はただ経営者同士にとどまらず、そこで働いている従業員や取引をしている取引先も含めてよい結果をもたらすものでなければなりません。
そのためには、売り手も買い手もそれぞれに配慮しなければならない点があることを念頭に置いておきましょう。買い手は売り手に誠意を持って接するべきですし、売り手も今後の会社のために最適な買い手なのかどうか判断しなければなりません。ぜひM&Aでさらに会社の力が強くなるようにお互い配慮していきましょう。
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