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事業承継マニュアルをわかりやすく要約!承継前に目を通しておくべきステップ

2020年05月07日

「事業承継の経験が豊富」という経営者はほとんどいないはずです。多くの人が不安な思いを抱えながら準備を始めるのではないでしょうか。では事業承継を本格的に進めたいと思ったとき何を参考にしますか?

これまでは「事業承継ガイドライン」というものがありましたが、100ページ近くに及ぶガイドラインのため中々、忙しい経営者にとっては身近なものではありませんでした。しかし2017年4月に中小企業庁が「事業承継マニュアル」を発表し、ガイドラインの情報がかなり簡潔にまとめられました。このマニュアルの中身は一体どのような内容なのか確認していきましょう。

 

事業承継マニュアルとは

事業承継マニュアルは、中小企業庁の発行する資料です。日本の経済や社会に重要な役割を果たしている中小企業や小規模事業者が、事業承継をスムーズに行えるように作られています。正式には「経営者のための事業承継マニュアル」といい、早期準備の重要性や種々の支援制度等を記した「事業承継ガイドライン」に沿って、経営者が事業承継を進めるためのポイントがまとめられています。

この背景にあるのは、経営者の平均引退年齢が70歳と言われるなか中小企業などにおける経営者の年齢のピークが66歳である現在、多くの会社が近いうちに事業承継のタイミングを迎えるという現実です。価値ある企業が将来へ受け継がれていくためにこのマニュアルが発表されました。

ここでは大切なポイントに絞って紹介していきます。

 

アウトライン

第1章は事業承継の概要が記されています。事業承継を成功させるために必要な最低限の情報とは、どのような内容なのでしょうか?

 事業承継の前に知っておくべきこと

多くの中小企業などが後継者不在という問題に直面し、経営者の平均年齢は上がりつつあります。また、具体的に何をすればいいのかわからず、事業承継を先送りしている経営者も多いようです。事業承継のポイントは、後継者に「人・資産・知的資産」の3つの要素と「経営理念」を引き継ぐことです。まずはこの点を認識しましょう。

準備から実行までの5ステップ

事業承継の準備から実行までの流れは、次の5つのステップで表すことができます。

1:事業承継の準備の必要性を認識
2:経営状況・課題を「見える化」
3:事業承継に向けて会社を「磨き上げ」
4:事業承継計画策定/マッチングの実施
5:事業承継やM&Aの実行

 

会社を承継するというのは社内だけの問題ではなく、また、後継者の育成には時間がかかる、ということをまず理解します。そして、早めに準備をスタートさせることの必要性を認識する、というのが初めの一歩です。

次に、事業の将来性や財務状態など会社の経営状況を把握し(「見える化」)、事業の強みを強化したり組織体制を再構築したりすることで、企業価値を高めます(「磨き上げ」)。このようなステップを踏むことで、スムーズに引継ぎを進めることができるのです。

 

事業承継計画

第2章は事業承継計画に向けた準備の進め方にフォーカスした内容となっています。事業承継を実行していくためには、経営者自身がその重要性をしっかりと認識し、現在の事業の10年後を見据え、着実に準備を進めていくことが重要だと記されています。

会社の中長期的な経営方針を設定し、後継者と共に目標に向けた行動計画を策定するのが事業承継計画のポイントです。

事業を振り返る

事業承継計画を立てるために、まずはこれまでの会社の歴史を振り返りましょう。特に自社の経営理念を承継すること、いつ、どこで、どのような思いで創業したのかを承継することも非常に重要です。このプロセスも明文化し後継者や従業員に共有することで、会社の強みや譲れない点を再認識することができます。これをベースにして、今後の目標を立てていきます。

事業承継計画を策定する

事業承継計画書を策定する一番の目的は、会社・経営者・後継者・関係者それぞれの今後の動きを明確化することです。

そのために、まずは会社の中長期目標を設定し、会社の進むべき方向性を示さなければいけません。そして経営者は、後継者の選定、専門家への相談、関係者への周知などを進めます。後継者となった人物は、実際に会社を継ぐまでの間に社内外での実務経験や研修によって経営者としての素質を向上させます。

また、会社としても、定款の変更や退職金支給のための資金確保などを計画的に行う必要があります。

このような事項を「誰が」「いつ」行うのかといった計画を立てていくのが事業承継計画です。社内外の関係者と共有し、周囲の協力を得ながら計画を進めましょう。

 

事業承継を成功させるアクション

第3章は事業承継を成功させるために知っておくべき様々な課題と対応策が記されています。事業承継を成功させるためには、自社の業績・財務状況、経営者や後継者の個人資産の整理なども考慮する必要があります。

また、経営者が高齢化しているとはいえ、健康なうちに後継者との間で会社の未来についてしっかりと話し合っておくことが重要です。

後継者の選び方・教育方法

子どもが会社を継ぐことが決まっていなければ、後継者を親族外から探さなければいけません。ポイントとなるのは、「経営者としての資質があり、事業を継続・成長させていける人材かどうか」という点です。社内外の関係者から候補を挙げ、会社を継ぐ意思があるかどうか対話を重ねて確認しましょう。

後継者候補が決まったら、経営実務の経験や企業理念を守る心構えなどが身に付くよう、経営者としての教育を行います。社内でのジョブローテーションや他社での勤務経験、外部セミナーの活用など、様々な方法で幅広いスキルや知識を学ぶ環境を提供することが大切です。マニュアルにも、後継者の育成には5年から10年必要といわれています。余裕を持って準備を始めましょう。

経営権分散を防ぐ

安定的な事業承継のためには、後継者が集中的に自社株式を承継するのがポイントとなります。しかし、ほかの相続人からの請求により、自社株式が分散して承継される可能性もあります。このような事態を回避するため、経営者は前もって株式譲渡などの対策をしておくのがベターです。

後継者への生前贈与や、経営者の方針に賛同する安定株主の導入、遺言の作成など、経営権の分散を防ぐためにはいくつかの対策が考えられます。どのような手法を利用するのか、経営者がまだ現役の間に検討して準備を進めましょう。

経営承継円滑化法の特例により、後継者に贈与された自社株式等は相続財産から除外させるような合意をすることも可能です。ただし、後継者以外の相続人への配慮を忘れないことが大切です。後に相続人同士でトラブルになることを防ぐためにも、相続人全員と意思疎通を図りましょう。

税金対策

経営者が後継者に自社株式や資産を承継すると、贈与税や相続税といった税金が発生します。この負担は意外と大きなものですが、負担軽減のための制度等も用意されています。

特に生前贈与については、活用できる制度が充実しています。たとえば、110万円までの生前贈与には贈与税が課税されない「暦年課税」 という仕組みがあります。

ほかに、贈与財産の2,500万円以上の部分について一律20%で納税し、将来相続が発生した場合にこの納税額を相続税から控除することができる「相続時精算課税制度 」というものもあります。

相続に関しては、自社株式を相続する際の相続税が80%猶予される「事業承継税制」 という制度が利用できます。5年間にわたって雇用の8割を維持することなど、適用にはいくつかのルールがあり誰でも利用できるわけではありませんが、後継者の納税負担を軽減することのできる仕組みとしては積極的に活用したいところです。

ほかにも、円滑な事業承継を進めるために用意された税制上の特例はいくつかあります。専門家にも相談し、何が利用できるのかを把握しておくとよいでしょう。

資金調達

事業承継では、納税や経営改善のための投資などの資金が必要になります。特に親族以外の人物が後継者となる場合、自社株式を有償で引き継ぐことも多く、巨額の資金を確保しなければいけない可能性もあります。そのために、借入をしたり役員報酬を引き上げたりするほか、有望な会社であればベンチャーキャピタルなどから投資してもらえるようなケースもあるでしょう。

公的な制度としては、経営承継円滑化法が事業承継の資金ニーズにも対応しています。都道府県の認定を得ることで、日本政策金融公庫や信用保証協会などから事業承継に関する金融支援を受けることができるのです。比較的幅広い目的で利用できるので、確認しておくとよいでしょう。

債務や保証

会社を経営していると、経営者が個人で事業用資金を借り入れていたり自己所有の不動産を担保に入れていたりすることもあるかもしれません。事業承継の際には、経営者個人の債務や保証を整理しておく必要があります。中小企業であっても、経営状況が適切であれば事業承継時に経営者保証が解除されるケースが増えてきています。債務や保証については、時間に余裕を持って取引のある金融機関に相談しましょう。

 

サポートする取組

第4章は中小企業の事業承継をサポートする種々の取組が紹介されています。商工会議所、商工会などの専門機関、金融機関、税理士などの専門家、事業引継ぎ支援センターなどに相談できるということをご存知でしょうか?

ほとんどの経営者にとって、事業承継というのは1回きりの経験です。早い段階で、事業承継について相談できる専門家を見つけておきましょう。まずは、普段から付き合いのある税理士や金融機関の担当者、地域の商工会議所などに相談するのがおすすめです。「事業引継ぎ支援センター」や「よろず支援拠点」など、公的な支援機関もあります。

マニュアルには「支援機関のご案内」のページに連絡先がまとめられているので、信頼できる相談先をすぐに見つけることができ安心です。

 

マニュアルを参考に事業承継計画を立てる

多くの経営者が、事業承継について何らかの不安を抱えているのではないでしょうか。しかし、時期に引退のタイミングがやってきます。早めの対策をするため、まずは「事業承継マニュアル」に目を通すことから始めてみましょう。

どこから着手したらよいのか、どれくらい前から何を準備したら良いか把握することができ、心配に思っている点が明確になります。このように対策しておくことで具体的な解決策を見つけられるので、早めに準備をスタートさせることが事業承継を成功させる1番の秘訣です。

事業承継マニュアルを参考にしながら、しっかりと事業承継計画を立てていきましょう。

 

 

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