今、関心を持っている企業の株式は、市場ではどれくらいの値段で取引されていますか?その株式を買うにあたり、その企業の経営は安全性が高いと判断できますか?それとも、直感を頼りに購入を見送る判断をしようと考えていますか?
株価の状態を判断する指標の一つにPBRというものがあります。今回は、投資判断の際に活用できるようにPBRの値が意味することを解説します。
PBR1倍割れが意味すること
「株価 ÷ 一株当たり純資産」によって得られるPBRは企業の株価の割安さを測る指標です。では、具体的なPBRの数値はどのように評価すれば良いのでしょうか?
本来であれば1倍以上が当たり前
PBR>1の場合、あるいはPBR=1の場合、市場では高評価を得て本来の企業の価値よりも高い値段で株式売買が行われていることが分かります。株式購入には値段が気になるところですが、企業としては一定の評価をされていると思われます。
1倍割れする場合
PBR<1の場合は、その企業の本来の価値よりも安い値段で株を買えることになるので、割安であると考えることができます。ただし、赤字・業績悪化によってPBR<1となっている場合には、注意しながら分析しなければいけません。
まずは、直近の業績だけを見るのではなく、会社四季報やHPにあるIR情報で中長期の業績を見て、赤字の原因、業績悪化につながった事故・事件などを把握しましょう。原因究明・対策は適切だったか、例えば製薬や食品の分野であれば、致命的なミスを犯して現在も製品の安全性が疑われているのかなどを判断することで、その企業の今後を予測し、投資判断に役立てられるはずです。
一方で、現在は赤字の状態でも、新しいビジネスモデルを開発中の企業であれば、今後それが開花し利益につながっていく可能性があります。現在は世界のインフラへと変貌しつつあるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)も、かつてはそうした状況にありました。
一方で、自分なりの分析で「買い」を判断し、経緯を見守っているにもかかわらず株価が好転しない、あるいは変化が見られない場合もあります。これらは万年割安株などと呼ばれており、投資家とのコミュニケーションが上手くない、業界全体が不況のため特定企業の好転が注目してもらえない等、様々な理由によって起こります。もちろん万年割安株のゾーンを抜け出す企業もありますが、株価の変化を自身で判断していくことが大切です。
PBRの値が低いという事実は、その株式購入の判断条件のひとつになりますが、将来的に一向に好転しないのでは意味がありません。ここではチェックすべきポイントを確認しておきましょう。 景気の動向とは別に、その企業の属する業界の将来性・可能性を知っておく必要があります。 PBR >1の業界には、精密機械・医薬品・食料品・小売業・情報通信・陸運業などの名前が連なっています。またPBR <1の業界として、鉱業・海運業・銀行・パルプ紙・石油石炭・非金属などがあります。(出所:東京証券取引所HP2016/6) どんな業界でも革新的でニッチな技術・サービスで台頭する新しい企業が出てくる可能性はありますが、業界全体を取り巻く空気は簡単なことでは取り除けません。業界の動向を参考にしながら、自身の投資基準を明確にした上で計画を準備してください。 低PBRの銘柄の好転を狙っている間に、その企業が倒産してしまっては元も子もありません。企業の倒産というと、赤字がイメージしやすいかもしれませんが、実は黒字でも企業が倒産することがあります。そうしたリスクを判断するには、貸借対照表・損益計算書だけでなく、キャッシュフロー計算書を見ていく必要があります。 「純利益」というものは、記載通りにお金が入ってくるわけではありませんので、必要なときに現金があるかどうかが重要です。黒字倒産が避けられるかどうかは、キャッシュフロー計算書での期ごとの実際のお金の出入りに基づいて判断することができます。 Book-Value Per Share(「一株当たりの純資産」「一株当たりの株式資本」などと呼ぶ)という指標はBPS(ビーピーエス)と表記されます。この指標は貸借対照表から読み取ることができ、純資産(資産−負債)を発行済み株式数で割ったものです。 BPSはその企業の発行する一株をどれくらいの資産で支えているか、その価値を示します。そのため企業情報収集、特に財務分析においては、こちらも企業の安定性を評価する指標となります。業種・業態によっても基準は異なりますが、一般的にはBPSの数値が高い場合は企業の安定性が評価され、逆に数値が低い場合は企業の安定性を欠いているとみなされます。 現在興味を持っている企業のBPSを計算してみましょう。資産25億円、負債15億円、発行済み株式数250万株の場合で見ていきましょう。 もし企業が倒産したり、経営者判断で解散したりする場合、株主に払われる金額にはBPSが適用され、BPS x 株主持ち株数で算出されます。 BPSの数値は変化します。事業拡大や設備投資のための借入金を返済すると、負債額は減り純資産を押し上げるので、BPSは大きくなります。社運をかけたプロジェクトから大幅な赤字の計上が予測される場合、BPSは問題ないとしても資本などの数値は変わってくるので異なる評価基準を設ける必要が出てきます。 PBR<1が示唆する意味を理解していただけたでしょうか? 低PBR銘柄を買う際には、その背景や理由を分析して、自身の投資計画に沿ったものであるか判断することが大切です。情報収集と勉強を欠かさずに、赤字・業績悪化の理由を理解し、将来伸びそうな業界を選びましょう。 その他のオススメ記事 2024年09月17日 運送業界は、 M&Aの需要が高まっている業界のひとつです。その背景には、後継者不足や2024年問題などさまざまな理由があり、事業規模の大小問... 2024年09月05日 2012年に電気・電気通信工事業界で通信建設TECH企業として創業したバディネット。2024年現在、5社の買収に成功して業容を拡大させています。今回は... 2024年08月05日 デューデリジェンス(以下「DD」といいます。)は、M&Aの実施にあたり、関連当事者が種々の問題点を調査・検討する手続のことを指します。通常...低PBR銘柄でチェックしたいポイント
その業界が今後も伸びていく期待がもてるか?
黒字倒産しないか?
PBRと併せて理解しておきたい!BPSとは
=(資産総額 − 負債総額)÷ 発行済み株式数
=(25億円 − 15億円)÷ 250万株
=400円PBRの意味を理解して、リスクを回避しよう>
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