PERとは「ピーイーアール」または「パー」とよみ、英語では「Price Earnings Ratio」の頭文字をとったものです。日本語では「株価収益率」といいます。
株価収益率とは、純利益から見た株価やM&Aの算定価格が割高なのか割安なのかをはかるものさし、いわゆる投資指標として使われます。計算方法は「株価÷1株あたりの純利益(EPS)」となり、倍率で表します。この倍率は、株価が1株あたり純利益の何倍まで買われているかを表しています。
1株あたりの純利益はメーカーなどであれば売上高から原価や販管費、利子や法人税、その他の損益などを引き算した最後に残る純利益を発行済み株式数で割り算して計算されます。
たとえばA社の株価が1,000円で1株あたりの純利益(EPS)が100円であれば、1,000÷100でPERは10倍ということになります。言い換えるとA社の株価は1年分の純利益100円に対して10年分の利益を見越した値段がついているともいえます。
PERが高くなるのはどんな時?
企業の成長性や期待度が高まり、投資家からの人気が集まってくるとPERは高くなります。たとえば、IT業界やバイオなどの医薬品業界では、将来の成長に対し期待度が高い企業も多く、PERは高くなる傾向があります。人気のテーマであるAI(人工知能)などに関連した企業のPERは100倍を超えることもあります。
ただ、PERが高くても純利益の伸び率が高ければ、PERはのちのち下がってくるため、必ずしもPERが高い=割高とはなりません。このような成長株に投資する投資の手法を「グロース(成長)株投資」といいます。景気の影響をあまり受けにくく、業績が比較的安定している「食品」や「小売」などの業界は、将来の純利益を期待しやすく、PERは高くなる傾向にあります。
一方でPERが低くなりやすいのは、どのような企業でしょうか?
自動車や商社などは為替変動や貿易摩擦、資源の価格など外部環境や景気の動向によって大きく純利益が変動する可能性があります。このため、PERが低めになる傾向にあります。また、景気動向や金利によって収益が大きく変動する金融や保険などの業種もPERが低めです。このような割安株に投資する投資の手法を「バリュー(割安)株投資」といいます。
PERを見る際の注意点
PERは業種や成長フェーズによっても水準が異なります。
前述のように業界全体の成長期待度、景気の変動を受けやすいか受けにくいかなどにより業種毎に水準が違うため、企業のPERを他の企業と比較するときは、同じ業種の企業を比較対象として考えるのが良いでしょう。たとえば、トヨタ自動車のPERを比較するときは、日産自動車やホンダと比較するといった感じです。
会社が様々な事業を手掛けているとPERは低くなる
その他にも、様々な事業を手がけている、いわゆるコングロマリット企業のPERも低めになります。たとえば日立製作所を例にとりましょう。鉄道・ビルシステムなどの社会インフラやITシステム、家電、自動車部品、子会社の建設機械など様々な事業を手がけているため、投資家からすると各事業を全体で評価するのが難しくなるからです。このようなケースでは、PERは各事業の実力よりも割り引かれることが多くなります。
成長フェーズによって水準が異なることも
また、企業の成長フェーズによってもPERの水準は異なります。
創業間もないスタートアップの企業は成長率が高くても、事業の拡大のための投資や宣伝費を多く使うため、純利益は低めになる傾向があります。そのためマザーズ市場などの新興市場には純利益の額が小さく、PERの高い企業が多いです。その後会社が成長し、成熟してくると売上高の成長率は低くなっても純利益の伸びが大きくなるためPERは低くなっていく傾向があります。利益が安定してくるとPERも低めのレンジで推移するようになるのです。
一方で、企業が衰退フェーズに入った局面では、利益が減っていくことになるのでPERはさらに低くなります。
このように、企業がどのフェーズにあるのかを考えてPERを見ることが大切です。利益が伸びる局面なのか、減っている局面なのかをきちんと見極めましょう。
PERを読み解いて投資の判断材料に
これまでお伝えした通り、PERは純利益から見た株価やM&Aの算定価格が割高なのか割安なのかをはかるものさし、いわゆる投資指標として使われます。数値が高ければ割高、数値が低ければ割安となりますが、単純に低ければ良いというものでもありません。
業種の特性や成長性によっても異なります。商社や自動車など景気に敏感な業種のPERは低めに、食品や小売などの景気の変動に強い業種のPERは高めになります。単純にPERの数値だけで判断するのでなく、業種の特性や企業の業績のトレンド、他の投資指標もあわせて見ることが必要になります。
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