「なるべくリスクもコストも抑えて事業を始めたい」。
新規事業を始めようとしている人がこのように考えるのは当たり前でしょう。とはいえ、資本主義社会においてこれを満たす方法はそう多くはありません。
そこで、法人や個人がリスクとコストを抑えつつ、新たな事業を始めやすい方法として注目されているのが、フランチャイズへの加盟とM&Aで既存の企業や事業を買うという二つの方法です。
現在の日本では、コンビニや飲食店をはじめとして、フランチャイズ加盟が成熟期を迎えています。一方で、少子高齢化等による後継者不在問題を受けて、中小企業のM&Aも急速に広がりを見せています。
今回は、新規事業進出を検討している人に向けて、フランチャイズ加盟とM&Aのメリット・デメリットを比較しながら、それぞれの優位性や将来的なビジョンについて解説していきます。
フランチャイズ加盟とM&Aの共通点
新規事業への進出や新規開業をしたい企業や個人が、1から事業を立ち上げるリスクとコストを軽減するための方法として、FC加盟とM&Aがあります。
FC加盟とM&Aに共通するメリットは次のようなものが挙げられます。
- 人材、技術、ノウハウ、顧客、仕入先等の経営資源が獲得できる
- 事業規模の拡大や多角化がスピーディーにできる
- 環境や時代の変化に対応した事業経営ができる
一見すると、両者は同じような効果をもたらすビジネスモデルに見受けられますが、中小企業での新規事業進出や開業希望者の中では、FC加盟を選択するケースが今のところ一般的かと思います。その背景のひとつは、M&Aに対する知識不足から、M&Aを上手く活用しきれていないからでしょう。
ここでは、FC加盟とM&Aの違いを解き明かすことによって、バイアスなく両者を検討できるよう、メリットとデメリットを比較してみましょう。
FC加盟というビジネスモデル
フランチャイズとは、新規に事業を始めたい、開業したい個人や法人が、フランチャイズ本部の看板やノウハウを利用する権利をもらい、ロイヤリティーを本部に支払いながら事業を展開していくビジネスモデルです。
FCに加盟する事業者(フランチャイジー)のメリットとデメリットは、次のようにまとめることができます。
FCのメリット |
・一般に広く知られているFCのブランドを活用できる ・事業経験がなくても経営ができる ・フランチャイズ本部のサポートが受けられる ・FCのスケールを活かした販売促進ができる |
FCのデメリット |
・フランチャイズ本部の経営方針やルールに従う必要がある ・フランチャイジー独自のアイデアが反映しにくい ・加盟金やロイヤリティーの支払いが必要 ・新しいビジネスの展開が難しい |
FC加盟のメリット
FCの例としてよく知られているのがコンビニエンスストアです。1から全く新しいコンビニを開業するよりも、既存のコンビニFCに加盟してブランドやノウハウ、顧客、仕入先を活用して事業を展開していくほうが、遥かにリスクもコストも抑えることができます。事業経験のない一般の人が退職や定年で独立、FC加盟でコンビニオーナーとなって事業を開始する例もよく知られていますね。
FCという大きな傘に守られ、その経営資源を利用しながら、安定した事業を展開していくことができるビジネスモデル。なによりも、大資本によるTVCMなどで慣れ親しんだ事業を自分で行うことができる、その安心感が、FC加盟が新規事業の進出や開業を希望する人に選ばれている理由です。
FC加盟のデメリット
FCに加盟すれば、本部が定めた経営方針やルールの範囲内で事業を展開していく必要があります。
再びコンビニエンスストアFCの例を挙げると、加盟店は本部が指定した店舗のイメージ、取扱商品、サービスなど本部の指定にしたがって経営していかなければなりません。オーナーが指定以外の商品を自由に仕入れたり、値付けや値下げをしたりすることにも制約があります。独立した事業者でありながら、FCに雇われている「雇われ店長(社長)」のような感覚は拭えないでしょう。
さらに、日本では既にFCのビジネスモデルが成熟しているため、FCに加盟しながら新規のビジネスを展開することはかなり難しいと言わざるを得ません。
FC加盟はどんな人におすすめか?
コンビニを始めとして、飲食店、学習塾、リペア、ハウスクリーニングとFCにはさまざまな業種があり、100万円以下の元手からでも始められるビジネスもあります。
FC加盟は、手元の資金が少ない人でも低リスクでビジネスをスタートできることが最大の魅力です。よって「資金はないがすぐにでも独立したい」という人は、FC加盟が自身のビジョンの実現に適しているでしょう。
M&Aという選択肢
M&Aの買主側は事業規模の拡大や新規事業の実施を目的として、売主側は事業承継や資金調達を目的として、株式譲渡や事業譲渡という形式のM&Aが行われています。M&Aで会社を買う人(譲受側)のメリットとデメリットは、次のようにまとめることができます。
M&Aのメリット |
・自社と既存事業のシナジー効果に期待できる ・既に回っている事業をそのまま引き継げる ・他にはない、特徴的なビジネスモデルを引き継ぐことができる可能性がある ・何にも縛られず独自の展開が可能 |
M&Aのデメリット |
・多額の費用がかかることもある ・(株式譲渡では)簿外債務等も引き継ぐ ・リスクが見通しにくい |
M&Aのメリット
FC加盟と比較した場合、M&A独自の大きなメリットは「経営の自由度が高い」「シナジー効果に期待できる」「(事業が立ち上がるまでの)時間を買える」の3点です。
国内のM&Aで最も知られている代表的な成功例はソフトバンクでしょう。2001年にブロードバンド通信事業に参入した同社は、2004年に日本テレコムを買収して販売シナジーを獲得。同年には福岡ダイエーホークス(当時)を買収して国内の知名度をアップさせます。さらに2006年にはボーダフォン日本法人を買収して携帯電話事業に進出、日本を代表する通信事業者に成長しています。
M&AはFCのように制約も条件もありません。引き継いだ企業や事業の経営資源を活かし、アイデア次第では既存事業と新規事業のシナジー効果にも期待できます。実際に、M&Aで引き継いで1年で5倍にも10倍にも売上が上がっている事例も出てきています。経営者の腕の見せ所が存分にあるのがM&Aかもしれません。
M&Aのデメリット
FCにはないM&Aのデメリットとしては、まず会社や事業を買うには多額の費用が必要となること、さらには株式譲渡であれば譲渡企業の簿外債務や偶発債務を引き継ぐ可能性があることが挙げられます。
簿外債務は貸借対照表に載っていない未払い給与などの債務、偶発債務とは顧客との訴訟や環境問題などを指します。どんな企業にも大なり小なり簿外債務は存在し、過度でなければデメリットというほどでもありません。一方の偶発債務は、大規模な訴訟等を引き起こす可能性もあるため、事前のデューデリジェンス(買収監査)によって有無を確認する必要があります。
日本では、FCに比べてM&Aの普及率はまだまだ低く、事業を始めたい多くの人にとっては不明点も多く、不安が大きいでしょう。ただし、そのようなM&Aによって生じるデメリットやリスクを回避するための対策として、M&A仲介業者などの相談窓口が現在はたくさんあります。
M&Aによって、会社という実像のないものを買うのは注意も必要ですが、最近は事業承継に関する融資制度なども数多くでてきていますし、譲渡企業の状況によっては買主側からの手出しを抑える(譲渡企業から売主に退職金等を支給)ことも可能ですので、上手く活用すればゼロから起業するよりもリスクやコストを抑えることができます。
中小企業M&Aはどんな人におすすめか?
M&Aは、すでにある程度の経営がされてきた企業を引き継ぐだけで、基本的にはこれまで通りの運営をしていきながら、新規事業と既存事業のシナジー効果を狙うこともできます。そのような経営資源を活用しながら、新たなアイデアも実践できるところが最大の魅力です。
現在の日本は中小零細企業の事業者の高齢化に伴い、後継者のいない会社が何十万、何百万社とあり、事業承継という観点からもM&A歓迎ムードが醸成されつつあります。各地の自治体等でも推奨する動きが増えてきています。
M&AはFCに比べて参入できる事業の幅も広く、新たな可能性も眠っているというところで、自由度の高い事業経営を希望する人におすすめの選択肢となるのではないでしょうか。
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