レポート

2019.05.07

攻めの採用活動でIターン・Uターン人材を確保!独自の試みを実施する企業や行政の挑戦

人材不足の影響を受けて、たとえ繁盛していたとしても従業員を確保できなかったために中小零細企業は会社を解散せざるを得なくなった、という事態が起きています。特に、人口流出が止まらない地域では、その土地の商店や企業の数が減っているとなると、地域経済の衰退に直結しローカルの人々にとって死活問題です。

そんななか、都会に出て行った人材に雇用を用意し再び故郷に迎え入れよう、または、都会から新しい人たちを呼び込むために、地方で働くことに興味を持ってもらい移住してもらおう、と考える地域企業が増えています。

独自の試みで、新たな雇用の形を生み出そうとしている企業や行政を紹介します。

人材のUターン・Iターンが生まれた背景

昨今、都会で働く人が故郷に帰り、自分らしく働きつつ新しい幸福の形を模索しようという気運が高まっています。

その結果として人材のIターン・Uターン就職は増加傾向にあり、東京への一局集中スタイルは崩れつつあります。

マイナビが500人を対象に行ったアンケートによると、田舎で就職したいと答えた人は、その理由として「都会での電車通勤時のラッシュが大変」「生活費があまりかからないので貯金しやすい」などの意見がありました。

実際、現代の20〜30代は額面給与が変わらないどころか下がっているにも関わらず、社会保障費などの増大によって納税額が増加しているため、生活は圧迫されています。

暮らしの豊かさを求めるのであれば、多少給与水準が低くても家賃などの固定費がかかりづらい故郷で生活するほうが魅力的と考える人が以前よりも増えているということです。

認定NPO法人ふるさと回帰支援センターの調査では、2008年に比べて2016年の問い合わせ件数は2000人から2万人へ急激に増加したことがわかっています。

こうした背景を踏まえてみると、地方の企業は「都市部では提供できなかった幸福」をテーマに人材確保に乗り出すべき、という方向性が見えてきます。

人材確保のために従業員が何を望んでいるのか理解する

人材不足が叫ばれるなかで有能な人材を確保するのは至難の業。これまで通りに求人を出すだけでは、自社に適した人材は見つかりにくくなっています。

しかし逆を言えば、地方の企業はIターン・Uターンを望む人にとって魅力的な労働環境や条件を提示することで、都会の企業との差別化を図りつつ有能な人材を確保することが出来ます。

結果、獲得した人材が長期的に会社を支えてくれる存在となったり、高いモチベーションを持って従事してもらうことができるのです。

企業が人手不足に陥る原因はさまざま。活路を開くためにはその原因を突き止めることから

人材不足に喘いでいる業界はITや福祉、飲食などが挙げられます。

IT業界は体制が整う前に需要が高まった稀有な例です。急成長したぶん、十分な教育や体制が整う前に生産を行わなければならなかったために、法律を守らないブラック企業が蔓延していたことも記憶に新しいのではないでしょうか。今では法整備が進み、IT業界から日本を牽引する大企業も現れていますが、深刻な人手不足に悩んでいる現状は変わりません。

福祉業界についてもIT業界と同様に、需要が先行しすぎて供給が追いついていない状態です。近年導入された「処遇改善手当」の効果もあり、福祉業界ではたらく方々の待遇は改善されつつありますが、介護や保育分野では未だ深刻な人手不足が問題となっています。

飲食業界も慢性的な人手不足に喘いでいますが、理由としては昇進しにくく、待遇が悪いことが挙げられます。入社時には希望に満ちていても、社内の風土に馴染めなかったり、日々の業務に謀殺されたりして、やる気が削がれてしまう方もいるでしょう。

これらの現状を踏まえて、いまいちど地方の企業が人材不足に悩まされている状況を見てみましょう。

紹介した業界とは異なっていたとしても、昇進や責任ある立場への抜擢、働きやすい環境作りなどを進めることで、居心地の良い労働環境に整えることができるのではないでしょうか。

それだけでなく、人材の定着や成長を促すためには、しっかりとしたキャリアプランを提示する必要があります。

ここからは実際にIターン・Uターン人材を獲得している企業の成功事例にもとづいて、人材を確保するための施策について考えてみます。

成功事例から読み解くIターン・Uターン人材の獲得方法

大手総合人材サービスであるPERSOLが2019年3月に開催したシンポジウムに、大手転職サイトdodaの編集長である大浦征也氏が登壇しました。

シンポジウムで大浦氏は「求人サイトへの登録への垣根は、非常に低くなっていて、dodaでも10年前に比べ登録者は7倍になっています。また、信じたくないデータですが、大卒新卒者が入社した4~5月に人材会社に登録するデータが10年前の30倍になっています」と話しています。

地方企業がIターン・Uターン人材を獲得するには、まずは、こうした転職希望者にアクセスする仕組みづくりも必要になりそうです。ここで、Iターン・Uターン人材を獲得する手法を確立した企業の先行事例を紹介します。

宮崎県・株式会社池上鉄工所

宮崎県北部、延岡市に居を構える池上鉄工所は創立から72年を数える老舗企業のひとつ。

総勢46名の社員が、受け継がれた技術やノウハウを伝承し、経営を続けてきました。池上鉄工所も他の地方企業と同様に人材確保に課題を感じていましたが、その壁を打ち破ったのが4代目の松田さんです。人事総務や営業の基盤を固めるために、プロ人材の採用を考えていた松田さん。

これまではハローワークや地元の求人媒体にしか掲載していなかった求人案件を、人材紹介会社にも取り扱ってもらうべく、自ら人材紹介会社へ足を運びました。担当者と膝をつきあわせて対話を行い、どのような人材を求めているのか細かく要望を伝えたそうです。

その後、人材紹介会社から紹介された、自社の要望に応えてくれそうな人材のもとへ直接出向き、2〜3度の面談を経て採用を決定。増強したかった人事総務や営業に特化した人材の採用に成功しました。

ここから見えてくるのは、人材の採用も「営業」の一環であるということではないでしょうか。採用活動を効率化するためには、これまで手を出していなかった媒体にも積極的に関わっていく攻めの営業姿勢が重要だということが分かります。

松田さんはIターン・Uターン人材の採用に人材紹介会社を利用したメリットについて次のように語っています。

「実際に人材紹介会社を活用してみてわかったことは、そもそも、求める人材が世の中にいるのか、中でも宮崎県で働きたい人がどのくらいいるのかなど、人材マーケットを把握できることです。すべての条件に当てはまる人材がいない場合、どの条件を薄めれば母数が増えるのかわかり、次の手が打ちやすくなります。こういった情報を得られることだけでも、人材紹介会社を活用するメリットは十分にあると思います」

岩手県・ハローワーク沼宮

民間企業だけでなく、官公庁も地方創生に向けた取り組みの一環として、Iターン・Uターン人材の確保に手を尽くしています。

岩手県岩手市にあるハローワーク沼宮では、地元への帰省客が増加する8月に、求職者へ働きかける取り組みを実施。

「出張ハローワーク!おかえり ふるさとへ」と題された取り組みは、新幹線いわて沼宮内駅改札口付近にハローワークの出張窓口を設置。ふるさとでの就職を考えている求職者へ情報提供を行うことで、Iターン・Uターン人材の確保を狙うものです。

正社員の求人情報をあらかじめハローワークで調査し、地域の主力産業である建設・福祉業界の求人を中心に情報を提示しています。また、この日のために地元企業へコンタクトを取り、求人情報を集めたりもしているそうです。

さらに、岩手県が行う「定住促進事業」等の案内も実施し、Iターン・Uターンに伴って必要となる移住についてもケア。移住に役立つ情報をセットで提供することで、Iターン・Uターンでの就職をリアルにイメージすることが可能になります。

このケースにおいても、ハローワークに求人情報を開示し「待つ」のではなく、自ら出向いて人材を「迎えに行く」姿勢が読み取れます。

内閣府・地方創生推進室

地方創生に向けた行政側からのアプローチも紹介します。

内閣府に設置された地方創生推進室では、プロフェッショナル人材戦略拠点と呼ばれるプロジェクトが始動しています。

プロフェッショナル人材とは、経営や事業の立案、実行経験が豊富で知識のある人材のことを指し、ミドル層に集中しているのが特徴です。大都市圏に集中しがちなプロフェッショナル人材を地方で獲得するために、地方創生推進室ではさまざまな取り組みが行われています。

その取り組みのひとつが、自治体に採用側と転職希望者のコーディネートを行う窓口を設置するというもの。

Iターン・Uターン人材の獲得を目指す企業と、地方でのIターン・Uターン就職を目指す求職者のマッチングを通して、地方創生に貢献しつつ経済の輪を円滑に回す目的があります。

すべての自治体が参画しているわけではありませんが、受け入れている地方も数多く存在します。自社が所属する自治体が同様の取り組みを行っているかどうか調べて、もし行っているようなら役所へ相談に行くことで、求職者へのアプローチ方法が広がるでしょう。

結果として、求める人材を獲得しやすくなります。

令和時代のキーワードは「自分らしさ」

2018年、政府主導でスタートした働き方改革は記憶に新しいと思います。

副業の解禁なども相まって大きな話題となりましたが、これによって多くの労働者は自分の働き方を見直すきっかけを得ました。

多くの人があらためて自分の将来やキャリアプランを見つめ直したことで、転職という選択肢の有用性や、Iターン・Uターン就職のメリットを実感しています。

大都市圏での勤務だけでなく、地方での暮らし、仕事が再評価されているといえるでしょう。

その証拠に、認定NPO法人ふるさと回帰支援センターの調べによると、Iターン・Uターン希望者の数は年々増加傾向にあります。

地方企業がこの機会を逃さずにIターン・Uターンの人材を確保するためには、求職者を迎え入れるような姿勢が大切ということかもしれません。

採用にも「攻め」の姿勢が大切

改めて考えると、地方には普段は気づかないけれど都会にはないメリットがたくさんあるのではないでしょうか。

Iターン・Uターン就職を考える人にとっては、そうしたメリットは企業が思っている以上に魅力的に捉えてもらえるようです。だからこそ、Iターン・Uターン人材を獲得したいと考えるのであれば、最大限そのメリットを理解し、アピールしていくために活かしましょう。

都会の企業で研鑽を積んだ人材は地方の企業に新しい風を持ち込んでくれるでしょう。お互いに気持ちよく働ける場所を作れば、双方にとってwin-winの関係が結べます。ひいては、長期的な勤続に繋がり、企業のさらなる発展にも寄与するはずです。

 

参考URL

https://www.manpowergroup.jp/talent-shortage-2018-japan/

https://www.glocaltimes.jp/lifestyle/4596

 

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