▼中小企業経営者にとってご自身の会社は子供も同然です。そして、経営者の多くは、会社を成長させ、少しでも良い会社にしたいと考えています。
会社を成長させるために出来ることは様々ですが、その1つとしてM&AやIPOがあげられます。今回は中小企業経営者にとってM&AやIPOを活用するメリットや、どのように活用するのが有効かを解説します。
M&AやIPOの概要
最初にM&AやIPOがどういったものかを整理しておきましょう。近年、M&AやIPOといった言葉を耳にする機会は増加していますが、正しく理解されている方は案外少ないように感じます。
M&Aとは?
M&Aという言葉は、新聞などでも使用される機会が多く、聞きなれた言葉になりつつありますが、「M&A」が用いられる場合、一方の会社が他方の会社を「譲渡」したり「買収」することを指す場合が多いようです。
しかし、M&Aにはこれだけでなく、「業務提携」、「資本提携」、「分割」、「合併」という意味も含まれています。業務提携の場合、提携する会社は互いの利益となることを目的として、お互いが存続した状態で、ノウハウや技術などを共有・協力します。
M&Aはいくつかの手法によって会社の成長を促進する活動です。但し、今回は、非上場企業を前提とすることと、IPOとの対比で考えるうえでも、M&Aの「譲渡」という狭義の意味を主として取り扱います。
IPOとは?
次に、IPOについて整理しておきましょう。IPOとは「株式上場」を意味する言葉です。非上場会社の場合、株主は創業者や、創業者の友人・知人、取引先など、かなり狭い範囲に限定されてしまいます。
しかし、IPOによって株式を上場すると、証券取引所を経由して、不特定多数の投資家が株式を売買できるようになり、幅広い方から出資を得ることができます。そのため、IPOは資金調達を行いやすくする手段だと言えます。
また、出資で集めたお金は「負債」ではなく、「資本金」となります。そのため、一般的に企業の財務内容を良化させる効果が期待できます。IPOは資金調達力を高めるだけでなく、財務内容を改善する効果も持つことになります。
M&A、IPOともに、活用方法次第では中小企業にとって大きな成長を期待できることをお分かりいただけたでしょうか。それでは、次にM&AやIPOを活用することで具体的にどのようなメリットがあるのかを整理しておきましょう。
M&Aのメリット
会社を譲渡する場合、最初にあげられるメリットは、創業者としての利潤確保です。経営者のなかには、それまでの努力や成果を「お金」に換えたいと希望する方もいます。M&Aは創業者が会社を譲渡して、資金を得るための手段としても活用できます。
また、経営者のなかには、「お金」のためだけでなく、年齢などを原因として、交代を希望される方もいます。しかしながら、親族や従業員のなかに、経営を任せることができる方が見つからない場合、M&Aによって外部の方に任せることも可能となります。
もう一つ、M&Aには大きなメリットがあります。それは、買主との相乗効果が期待できるということです。買主が同業者であれば、エリア拡大や仕入れコストの削減などが考えられますし、異業種だとしても相互の取引先へのクロスセルや規模の拡大で優秀な人材の獲得がしやすくなるなどの効果も期待できます。もし買主が個人だったとしても、これまでは伝統的なやり方で経営していた会社に新しいアイデアを取り入れるだけで売上が何倍にもなることだってあります。
IPOのメリット
IPOにも大きなメリットがあります。IPOは、「株主」、「従業員」、「会社」のそれぞれにメリットが期待できますので、当事者ごとに整理していきましょう。
株主にとっては、保有する株式の価値を高め、資金化しやすくなるメリットがあげられます。非上場の中小企業の場合、株式をお金に換えることは簡単ではありません。
しかしながら、IPOを行うと、証券取引所を通じて購入希望者を見つけやすくなり、さらに、適正な取引価格が形成されるため、株式を売りやすくなります。さらに、IPO直後の株式を狙う投資家が多いことから、株価の高騰も期待できます。そのため、IPOは株主にとって、保有株式の資金化や、利潤確保につながります。
次に、会社のメリットですが、IPOを行うと、会社の信用力や、資金調達能力が向上することが期待できます。通常、IPOには、証券取引所の審査を受け、上場基準を満たしていると認められる必要があります。そのため、上場が認められることで会社の信用力は高まります。加えて、銀行融資のような間接金融だけでなく、株式などの直接金融による資金調達も可能となります。
最後に、従業員にとってのメリットです。中小企業が「上場会社」になる効果は従業員にもあります。従業員にとっても、上場会社で働くことは、自身のステイタスや、社会的な地位の高まりに繋がります。
イメージだけの問題ではなく、住宅ローンの借入を行う場合など、上場会社に勤務していることがメリットになることもあります。さらに、世間から「上場会社」として認められている会社に勤務することで、従業員の満足度向上につながるといった効果も期待できます。
以上の通り、IPOは会社の成長だけでなく、株主、従業員に対してもメリットが期待できます。
どちらを利用すべき?
では、中小企業が成長を目指す場合、M&AやIPOが有効なのは理解できますが、実際に利用すべきはどちらなのでしょうか。これには絶対的な答えはなく、それぞれの会社の状況にあった方法を選択する必要があります。
すぐに利用できるのは?
時間的な面や、コストなど、比較的利用しやすいのは、M&Aだと言って良いでしょう。
IPOするには、証券取引所の審査に通過して、上場を認められなければなりません。しかし、審査通過は容易ではなく、時間をかけて準備を行う必要があります。
そのためには、監査法人や公認会計士の監査を受け、主幹事証券会社を決定して、上場審査で認められるための協力を仰ぐ必要があります。監査法人、主幹事証券会社ともに選べば良いだけでなく、それぞれの基準に見合うように、社内体制を整えていく必要があります。通常、IPOを目指すと決めてから上場に至るまでに、1~2年程度を要することもあります。
一方、M&Aを利用する場合、M&A仲介会社や金融機関、最近ではマッチングサイトなどを通じて、自身の希望に沿う企業を探すことから始まります。譲渡価格の評価や、価格交渉も必要となりますが、お相手さえ見つかれば、早ければ2~3ヶ月程度で完了することもあります。
効果が大きいのは?
IPOは時間やコストはかかりますが、成功すれば、かなりの効果が期待できる手法です。例えば、IPOによる資金調達手段の多様化や、信用力の向上、従業員の満足度の向上などは高い確度で期待できます。
一方でM&Aの効果は、会社の成長という意味では引き継ぐお相手によって大きく変わります。1+1が2にしかならないこともありますし、3にも4にもなることもあります。
総花的な話ではそれぞれの手法を評価することは難しいので、ここでは論点を絞ってみたいと思います。
創業者利潤の確保
IPOで得られる利潤は大きいです。ただし、それは株式の時価総額が一定以上(東証2部でも20億円以上など)必要であるゆえに、大きな額に見えるということもあります。
一方、M&Aでは株式の時価総額が数十億円以上になることもありますが、数億円、場合によっては数千万円、数百万円ということもあります。この意味では、IPOは難しいという小規模な会社においては、そもそも手法としてM&Aしかとれない、ということになります。
後継ぎの確保
IPOを行うと信用力が高まり、人材を獲得する力が強まります。この意味で、これまで経営者として後を継いでくれる優秀な人材が仮に周囲にいなかったとしても、新たに外から招へいするなどの選択肢をとれるようになります。ただ、やはりIPO後に後継ぎを探さなくてはならないという課題が残ります。
一方で後継ぎを確保したい経営者にとってのM&Aは、M&A自体が後継ぎ探しになっており、M&Aにより後継ぎが確保できるという大きなメリットがあります。
従業員にとって
上述の通り、IPOは従業員にとってもステイタスになるなど喜ばしいことです。では、M&Aはと言えば、これも実は従業員にとってメリットになることが多いです。
例えば、自社よりも大きな会社に譲渡することで、譲渡先の会社の給与体系や福利厚生を踏襲したりして、改善することがあります。
会社の業績がどうしても悪く、リストラしなくてはならない状況にある場合というのは、売主の破産などを伴うものであり、これは企業再生の一環ですので、IPOと比較すべきM&Aとは性質が異なるものなのです。
会社の状況、経営者の状況で柔軟な検討を
中小企業経営者が、自社の成長、発展を図るための方法として、M&AやIPOは効果的です。
しかし、M&AとIPOには、それぞれの特徴やメリットがあるため、どちらを目指すべきかは、企業ごとの置かれた状況によって異なります。そのため、経営者は、自社の状況を理解することと、M&A・IPOの基礎知識を持ったうえで検討する必要があります。
本記事でご紹介した内容を参考として頂ければ幸いです。
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