病気をきっかけに決断した事業承継。40年培った技術と社員を守るM&A
2026年07月17日
2026年07月17日
建築設計業界で40年以上にわたり事業を続けてきた株式会社エフイーエー設計。代表を務める曽根信之様は、自身の病気をきっかけに会社と社員の未来を考えるようになり、辿り着いたのがバトンズを活用したM&Aでした。同じ志を持つ買い手企業との出会いや、社員の未来を考えた決断の裏側、成約までの道のりについてお話を伺いました。
| 譲渡企業 | |
|---|---|
| 社名 | 株式会社エフイーエー設計 |
| 業種 | 建築設計業 |
| 拠点 | 東京都 |
| 譲渡理由 | 後継者不在 |


| 譲受企業 | |
|---|---|
| 社名 | 株式会社エム・ジェイホーム |
| 業種 | 不動産・建築業 |
| 拠点 | 滋賀県 |
| 譲受理由 | 開発ノウハウの強化、エリア拡大 |
――まずは、貴社の沿革と事業内容についてお聞かせください。
新卒で建設会社に入社し、その後一級建築士の資格を取得して27歳で独立しました。アパートの6畳一間、1人でのスタートでした。
最初に手がけた事業は、会社員時代の経験を活かした防音工事の設計管理です。その後、新しく加わった仲間のノウハウを活かし、住宅設計事業も開始しました。実績を重ねていく中で大手ハウスメーカーとも取引をいただけるようになり、以降30年以上にわたる弊社の主要取引先となっています。
その後も、バブル期にワンルームマンションの設計、バブル崩壊後は防衛庁(現防衛省)向けの防音工事、携帯電話用のアンテナや鉄塔の設計など、時代のニーズに合わせて事業領域を広げていきました。近年では、東京都や警視庁から受託した建物の改修工事といった公共案件も手がけています。
――40年以上にわたり、安定して経営を続けられた理由は何でしょうか。
特定の事業に依存せず、常に3〜4つの異なる事業領域を重ね合わせてきたことです。どれか一つの事業が外部環境の変化で落ち込んでも、他の事業で支えることができれば会社として生き延びることができます。
逆に言えば、その時々で稼げる部門とそうでない部門が存在することになりますが、当社は会社全体で支え合って利益を循環させるという方針を徹底しています。経営面だけでなく、優秀な社員が揃っていることも、当社がここまで続けられた要因です。

――M&Aを検討されるようになった経緯を教えてください。
きっかけは5年ほど前に、私が病気を患ったことです。手術を受けて幸いにも回復しましたが、再発リスクが頭をよぎるようになりました。
元気だったときは深く考えていなかった「自分が突然倒れたら、社員たちが路頭に迷うことになる」という考えがよぎるようになり、経営者としてそれだけは絶対に避けなければならないと思いました。
最初は従業員への承継を打診してみました。しかし、日頃から私の苦労を近くで見ていた側近のメンバーからは、自分たちがその責任を背負って運営するのは難しいと言われました。
そうなると、会社を存続させるための選択肢は限られます。第三者への承継に舵を切る決意を固め、地元の商工会議所に相談しました。そこで紹介されたのが、バトンズでした。
――バトンズをご利用されてみての印象はいかがでしょうか。
M&Aの手続きを進める中では、初めて経験することばかりで不安もありましたが、バトンズの担当者である大村さんに、丁寧で迅速な対応をしていただきました。
私たちの言葉をしっかりと受け止め、即座にレスポンスをくれたおかげで、終始安心感を持って進めることができました。バトンズのおかげで、M&Aへの精神的なハードルが大きく下がったと思います。
――買い手企業様と成約に至った経緯を教えてください。
譲渡先を選ぶにあたり、私は「社員の雇用を守ること」と「会社の将来性」を重視しました。同業他社からの連絡もありましたが、それだと従来の延長線上でしかなく、新しい将来性を見出すことは難しいと感じ、候補先から外させていただきました。
最終的に譲渡先として選んだエム・ジェイホームは、不動産業を主軸とした会社で、事業領域の拡大を目的としたお声がけでした。実は、同社が展開する事業のひとつは、当社の専務である小森も経験がある領域だったため、異業種でありながらも、事業や技術面に関するお話が最初からスムーズに通じ合った印象です。
それだけでなく、メインでやり取りさせていただいたエム・ジェイホーム野村様のお人柄や、葛川社長の経営者としての信頼性も譲渡を決めた理由です。非常にお若いながら、経営者として芯が通っており、厳しい視点と深い人間性を兼ね備えた方という印象を持ちました。そして何より、会社としての明確な成長ビジョンを語ってくださいました。
単に雇用を守るだけではなく、エム・ジェイホームの成長ストーリーに加われば、社員がより輝かしい未来を描くことができると確信しました。

――M&Aを社員の皆様に伝える際、不安や懸念はありましたか。
過去に病気を患ったこともあり、社員たちも「近いうちにそういった話があるのだろう」と、なんとなく察して心の準備ができていたようです。日頃から私の体調を気遣ってくれていましたから。
正式に契約が決まったタイミングで、私から全体に向けて話をし、一緒にM&Aを進めた専務の小森からも丁寧に説明をしてもらいましたが、反発や不満は一切ありませんでした。
M&A後に開かれた親睦会では、エム・ジェイホームの皆様と弊社の社員たちが、お酒を酌み交わしながら本当に楽しそうに談笑していました。その光景を見たとき、このM&Aは間違いなく成功だったのだと、心の底から救われる思いがしました。
――M&Aを終えての率直なご心境と、現在のご状況をお聞かせください。
これまで、現場のトラブルや資金繰りなど、いつ何が起こるか分からない立場で、気が休まる暇はありませんでした。まずはそうした日々の重圧から解放され、大きな安堵感を得ています。
社員たちも、素晴らしい将来性を持った企業のもとで、新しいやりがいを持って仕事に取り組んでいけるのではないかと思います。非常に素直で、真面目に仕事へ向き合う職人ばかりですから、新しい環境でも大きく貢献できると信じています。
私自身は、「代表取締役顧問」という役職をいただいています。まずは、これまで長年お世話になってきた取引先の方々へご挨拶回りを進めているところです。その後は、自分の体調を考慮しながら、できる範囲でエフイーエー設計の未来を少しでもサポートしていきたいと思います。

写真)左からバトンズ大村、事業承継・引継ぎ支援センター竹内様、
売り手:曽根ご夫妻、買い手:葛川社長、野村様
――最後に、M&Aを検討されている経営者の方々にメッセージをお願いします。
昭和50年代の建築ブームで、私と同じように独立して設計事務所を立ち上げた同世代の経営者は、日本全国にたくさんいます。今や、そうした経営者の多くが私と同じように後継者問題に直面していると思います。
この業界では、社員を一人前に育て上げても、他社へ引き抜かれたり、独立して去ってしまうことが日常茶飯事です。日々の経営業務と並行して後継者を育成していくことは、非常に大変です。
そして、これまで築き上げてきた大切な技術や信頼が、廃業によってすべて無に帰してしまうのは、あまりにもったいないことです。だからこそ、経営基盤や将来性を持つ企業と手を取り合えるM&Aという選択肢を、ぜひ多くの経営者に考えていただきたいです。
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