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eスポーツ業界初の上場企業が仕掛けた、異業種M&Aの舞台裏「ゲーム×デザインでコンテンツ力を高める」

2025年05月20日

ゲーム・eスポーツのイベント企画・運営を中心にビジネスを展開する「GLOE株式会社」(東証グロース市場)は2025年2月、WEBやグラフィックなどデザインを主軸に事業を行う「株式会社28」の株式を取得し、子会社化しました。M&Aで規模を拡大し続けるGLOEグループが、ゲーム分野と異なる会社を譲受した理由、またM&Aの舞台裏を代表取締役の谷田優也様に伺いました。


 

譲渡企業
社名 株式会社28
業種 WEBデザイン・システム開発 など
拠点 東京都
譲渡理由 資本獲得による事業拡大

 


 

譲受企業
社名 GLOE株式会社
業種 エンタメ (ゲーム・eスポーツ事業)
拠点 東京都
譲受理由 既存商品・サービスの強化

 


すべては渋谷のゲームセンターから始まった──GLOE創業の原点

GLOEグループ創業の出発点は、2010年頃の渋谷のゲームセンターから始まります。当時、谷田様は流行していたストリートファイターに熱中しており、そこで対戦相手としてしのぎを削っていたのが、後に共同代表として会社を立ち上げることになる高尾恭平様(現:ハイッテイル株式会社 代表取締役)でした。

名前も職業も知らない間柄だったところから、親交を深めるうちにeスポーツやゲームに対して共通する思いを抱えていることがわかり、谷田様と高尾様は一緒に会社を立ち上げることになりました。それが、後にGLOEの前身となるウェルプレイド株式会社です。

「2010年代、日本ではプロゲーマーという職業がまだ一般に理解されていませんでした。世界では英雄のように扱われるプレイヤーたちが、日本では正当に評価されていない。そんな現実に対して違和感を抱いていました。

ゲームのイベント・大会を生で見てみるとわかりますが、ゲームを極めた人たちが真剣にゲームに向き合う姿は、多くの人の心を動かします。私自身がその体験に触れ、『これはスポーツの熱狂と同じような感覚なのではないか』と思いました。プロゲーマーが、スポーツ選手と同じように金銭的価値や感情的価値を当たり前に得られる世の中を創りたい。そんな思いで会社を立ち上げました。」

提携・合併・上場。eスポーツの価値を証明するために疾走し続ける

2015年に設立されたウェルプレイドは、eスポーツのイベントや大会を企画・実行する事業を展開しながら着実に成長してきました。その後、2017年に面白法人カヤック(東証グロース市場:証券コード3904)と業務・資本提携を締結。その背景について、谷田様は以下のように解説します。

「当時、世間では『eスポーツの波が来るかもしれない』という雰囲気があり、市場は熱気を帯びていました。それに伴い、ウェルプレイドの業績も好調でした。しかし、eスポーツの盛り上がりに対して、私たちの成長が追いついていないという危機感もありました。成長を加速するためには、人的資本と金銭的資本を投入する必要があると考えており、その支援をしてくれたのがカヤックさんだったんです。」

2021年2月には、協業他社の株式会社ライゼストと合併し、「ウェルプレイド・ライゼスト」を新設。ゲーム業界を驚かせました。競合との合併を決断された経緯について、谷田様は以下のように振り返ります。

「私たちはもともと競合関係にありましたが、同じ業界で働く仲間のような存在でもありました。そのため、代表同士で話す機会も多くありましたが、何度話しても、目指す方向が驚くほど一致していたんです。

お互いが上場を目指す場合、単独で取り組むと5年かかるかもしれないが、一緒になって取り組めば、その期間を2年に短縮できるかもしれない。『それなら、いっそのこと一緒にやりませんか?』と話が進んでいきました。」

ウェルプレイド・ライゼストは合併から1年10ヵ月後の2021年11月、東証グロース市場に上場し、eスポーツに大きな価値があることを世の中に示しました。2023年にはゲーム配信に特化した「配信技術研究所株式会社」を第三者割当増資の引受けにより子会社化。そして、2024年2月に商号をGLOE株式会社に変更します。

クリエイティブの力でゲーム事業を加速!GLOEが描く戦略的M&A

これまで、ゲーム関連企業との合併や子会社化を進めてきたGLOE。今回グループに迎え入れた株式会社28は、グラフィックやWEBなどのデザイン事業、アプリ開発などのシステムデザイン事業等を展開する会社です。

2011年に創業された28社は、会社の成長を加速させることを目的に、M&Aの検討を2024年9月頃から本格化。2025年1月にはGLOEと独占交渉に入り、その翌月に契約締結というスピード感で進んでいきました。

ゲーム事業を主軸とするGLOEがデザイン会社を譲受する理由について、谷田様は以下のように解説します。

「GLOEがM&Aを検討する際、2つの軸があります。1つ目は、私たちの既存事業と同じゲームに関連する事業を行っている企業です。そして2つ目は、ゲーム事業を拡大する過程で、それを加速するために必要なリソースを提供してくれる企業です。今回の28社とのM&Aは、後者の既存事業の拡大を加速するための施策になります。

現代社会は多様なエンターテインメントにあふれており、コンテンツの質が厳しく評価されるようになっています。そのような環境下で、GLOEグループが持っているゲームやイベント、配信に関する知見と、28社が持っているクリエイティブ、デザインの力がうまく組み合わさることで、コンテンツの質がさらに向上することを期待しています。」

「この人はデザインの本質を理解している」トップ面談で確信したM&Aの手応え

M&Aにおいて、譲受企業と譲渡企業のトップ同士が面談した際の“第一印象”は、その後の交渉に大きな影響を与えます。28社の代表取締役である村上様と初めてお会いした際、谷田様はどのような第一印象を抱いたのでしょうか。

「村上社長と初めてお会いしたとき、『この人はデザインの本質を理解している!』と直感的に感じました。たとえば、村上社長が『こういうデザインが良いと思っているんです』とお話された際、その説明の解像度が非常に高く、デザインの専門家ではない私でも理解しやすい内容でした。

これだけの解像度でデザインに向き合っている方が代表の会社であれば、従業員の皆さんも含めて、ゲーム領域のクリエイティブでも質の高いアウトプットをしてくれると感じさせてくれました。」

代表同士がリスペクトを持ち、心から親しくなることが統合において重要

GLOEグループと28社は、企業文化の統合を含めたPMIに向けて動き出しています。M&Aを通じて成長してきたGLOEは、PMIを成功させてきた企業と言えます。谷田様は、PMIで重視することとして以下の3つを挙げます。

1つ目は、代表同士が仲良くすること。これは単なる見せかけの仲の良さではなく、代表同士が互いをリスペクトし、心から親しくなることを意味します。両社の従業員が代表同士の良好な関係を実感することで、企業文化の統合が自然に進みやすくなります。

2つ目は、社員同士が交流することです。ウェルプレイドとライゼストが合併する際にも、飲み会や各種イベントを通じて交流を深めました。28社との統合においても、社員の交流を重視しています。

そして、3つ目は、お互いのビジョンを理解する努力をすることです。谷田様は「これにより、グループ会社同士の繋がりが生まれ、利害関係を超えて相互に助け合う文化が形成されると考えている」と話します。

多くの人が『ゲームを楽しむことを選んで良かった!』と感じる社会へ

GLOEグループは、合併や子会社化を通じて、社会に提供できるリソースを増やし続けています。中・長期的なビジョンとして、GLOEグループはゲームというコンテンツがエンターテインメントの領域を超えて、教育や医療、社会活動などさまざまな分野で役立つ社会の実現を目指しています。

「私たちのビジョンは、『ゲーミング・ライフスタイル・カンパニー』というキーワードに集約されます。ゲームは『楽しい』ことに加えて、『人との出会い、感動』や『学びのきっかけ』といった、多様な体験価値を生み出す力があります。

たとえばゲームには、『難しいことを簡単にする力』があります。通常の学習では幼児にカタカナを覚えさせるのは大変ですが、ポケモンのゲームで遊ぶためなら子どもたちは自ら進んでカタカナを覚えます。

また、これからの高齢者はゲームに親しんできた世代になるため、認知症予防やリハビリの一環として、ゲームが活用される未来も考えられます。ゲームを通じて、やりたくないことも自然と継続できる可能性がありますし、楽しみながら健康や知的好奇心を維持することができます。

そうした体験を通じて多くの方々が『ゲームを楽しむことを選んで良かった!』と感じられる社会を実現するため、私たちはさまざまなサービスやソリューション、プロダクトをお届けしていきます。」

また、今の世の中はゲームをやることに対して、まだまだ斜めな意見があることも事実。谷田様は、その解決には社会へのより広い理解と認知が必要だと分析しており、そのための目標として「オリンピック種目にeスポーツが加わること」をビジョンに描いています。

ゲームがさまざまな形で社会に浸透し、当たり前に人々が携わっていく未来を見据えて、GLOEグループは今後も事業を拡大していく方針だとお話しいただきました。

GLOEグループのさらなる発展をバトンズ一同、心より応援しています!

「株式会社28」の記事はこちら

 

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