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ROI(Return On Investment)は中小企業M&Aに適用できるのか?

2019年02月05日

▼ROIという指標について聞かれたことのある方は少なくないでしょう。このROIはM&Aや様々なビジネスの場で使用される機会が多く、ビジネスマンなら是非とも意味はもちろん、活用方法を知っておきたい指標です。

ROIの基本的な意味に加え、M&Aやその他のビジネスシーンでの活用方法をご説明します。

 

 

 

 

ROIとは?

ROIとは、「Return on Investment」のことであり、略してROIと呼ばれています。また、日本語では投資利益率や、投下資本利益率などと呼ばれます。

ROIは正式名称を見て解る通り、Return(利益)をInvestment(投下資金)で除して計算する指標であり、以下の計算式で確認することができます。

ROI=利益(=売上高‐売上原価‐投資額)÷投資額

*利益には経常利益や、償却前経常利益を用いることもあります。

このROIですが、投資する金額に対して、どれだけの収益を得られるかを示す指標であり、投資効率の良し悪しを測る指標となります。そして、ROIは数値が大きい方が、投資効率が高くなることを意味しています。

 

M&AでROIが重視される理由

ROIは主に投資家としての立場の企業が、事業や設備、不動産に対する投資を行う場合に使用されることの多い指標であり、もちろんM&Aの場面でも利用されます。M&Aの場面でROIが重要視される理由や、どのように活用されているのかをご紹介しましょう。

 

・ROIを見れば何が解るのか?

ROIは投下資本に対して、どれだけの利益を生み出すことができるのかを示す指標です。

経営者や、投資担当者はROIを見ることで、投資案件の魅力を評価したり、複数の投資案件のなかから、魅力的な投資対象を選択するといった判断を行うことができます。

ROIを活用した投資案件の判断を具体例で確認してみましょう。例えば、100万円の投資によって1年後に10万円の利益を得られる投資案件(A)と、250万円の投資によって、同じく1年後に20万円の利益が得られる投資案件(B)があったとします。

この時、(A)と(B)のどちらが投資案件として魅力的かを判断する際にROIが活用できます。

(A)と(B)のROIはそれぞれ10%(=10÷100)と、8%(=20÷250)になります。ROIは値が大きい方が、投資効率が高い案件ということになりますので、その他の条件を無視すれば、(A)の投資案件の方が魅力的だと判断できます。

 

・M&Aでは何を見るのか?

ROIはM&Aを行う場合にも頻繁に活用されます。前述のように、複数の投資案件のなかから1つを選択する場合にも活用できますが、投資を行うかどうかの判断基準としても活用できます。

通常、M&Aを実施する場合、ある程度のリスクを引き受けることや、手間暇もかけて投資を行うことになるため、投資から得られる期待利益に対して最低水準の基準を設けています。

例えば、M&Aを実施するためには、投資対象のROIが最低でも20%以上を期待できることが条件であるという投資基準を設ける場合があります。複数の選択肢から選び抜かれた案件であっても、このROIの基準を超えられないのであれば投資対象としては不適切であり、そもそも投資を行わないといった使い方を行います。

さらに、ROIの投資効率は「投資に対する利益率」としての意味だけでなく、「回収期間」としての意味もあります。M&Aのような投資においては、投下資金を何年で回収できるかという判断基準も重要です。

投資した資金が短い期間で回収できれば、投資が失敗して資金回収できなくなるリスクも軽減しますし、さらに別の投資を実行に移すこともできます。ROIの投資効率が高いというのは、回収期間が短くなることも意味しており、さらに投資しやすいという判断に繋がります。

 

 

ROIの目安は?

M&Aにおいて重要な判断基準となる得るROIですが、それではROIはどの位の水準であれば良いのでしょうか。ROIを算出して単独の数値を見ても、目安となる水準がなければ良し悪しを判断できません。

結論を言えば、求めるROIの水準は各企業の考え方や状況によって異なります。M&Aによる目的も異なりますし、引継ぎ対象となる企業の業界によっても異なるでしょう。

例えば、飲食業などのROIは一般的に高く、スーパーなどの小売業は低くなる傾向があります。そのなかでも、M&Aにおいては、ROIとして求める水準を10%~20%とする企業が多いようです。

なお、ROIとよく似た指標にROAがあります。ROAとは、「Return on Asset」の略で、ROIが投資資金に対する利益率を見る指標であったのに対し、ROAは企業の総資産に対しての利益率を意味します。

通常、ROIの前提となる投資資金は自己資本や有利子負債などになるため、総資産よりは少ない金額となります。

日本の上場企業の場合、ROAの平均的な水準が5%程度であり、10%を超えれば優良だと考えられています。ただし、ROAも同様に業種などによって目標値が異なるので(例えば、飲食業であれば店舗を賃借さえすれば極端な話営業できますが、製造業であれば工場を持たねばならず資産が大きくなりやすい)、一概に〇%を目指せばよいというなく、業界をしっかり分析する必要があるでしょう。

いずれにしても、ROIについても10%~20%というのは、かなり高めの水準であると考えられますが、リスクの高い事業投資においては、それだけ期待される効果が高くなければ投資に値しないとも言えるでしょう。

 

ROIは新規事業にも活かせる

なお、ROIという指標は、M&Aの場面でも使用されますが、その他の場面でも多く活用されており、新規事業を行う場合や、不動産投資を行う場合などが挙げられます。

新規事業を始める場合、事業に失敗しないための準備や、資金を出してもらう投資家への説明などを目的として事業計画を作成します。

出資者や金融機関など、事業計画を見る者は、様々な観点から事業を評価しますが、その1つが投資資金を何年で回収できるのかです。例えば、1,000万円の投資を行って、毎年200万円の経常利益が見込まれる場合、ROIは20%(=200÷1,000)となります。

そして、この時、投資した資金は5年間で回収できることが見込まれます(1÷0.2)。ROIの20%という水準はかなり高く、当初投資した資金も5年間という比較的短い期間で回収できるため、こういった事業計画であれば比較的投資しやすい事業だと言えるでしょう。

一方、ROIの水準が低く、投資回収までに10年以上もの期間を要する投資であれば、事業計画を見る投資家からは新規事業としての収益性が低い、事業計画の内容が不十分といった判断をされてしまう可能性も高くなります。

そのため、新規事業を始めようとする開業者は、投資家などが期待するROIの水準を意識した事業計画を作成する必要があります。

 

 

中小企業M&Aにおいても投資効率を測るには

以上のように、金融機関や投資家、M&Aを行う経営者などはROIという指標を重要視しています。経営者や投資家は日々様々な投資案件のなかから最適なものを選び、投資すべきかどうかを判断しています。そのための判断基準の1つとなるのがROIです。ROIは投資対象が生み出す利益(経常利益など)が、投資資金に対してどの程度の比率で発生しているかを測る指標であり、投資資金をどれだけ効率的に活用できているかを示します。そのため、ROIを見れば、案件の投資効率の良さや、投資資金の回収期間を予測することができます。

同じように中小企業M&AにおいてもROIの考え方が役に立ちます。例えばEV/EBITDA倍率という指標がありますが、これも投資効率を測る指標に他なりません。利益=EBITDA、投資額=EV(株式譲渡対価+金融借入金の引継ぎ―預金同等物)としたときの、ROIの逆数であることがお分かりかと思います。

ただし、中小企業M&Aにおいては、対象となる企業の資産や収益の正確性が担保されていません(むしろ、例えば収益の多くは節税対策などで意図的に低くなっているます)。投資効率を測るにも正確な資産、収益を定めてから活用することが必要です。中小企業M&Aや新規事業に携わる可能性のある方は、ROIの意味だけでなく、適切な活用方法について知っておく必要があるでしょう。

 

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