大阪府を拠点にアルミミラーを中心とした製造・加工業を営む「株式会社尾崎鏡工業所」は、2024年9月、愛知県でガラス製品の製造加工等を手掛ける「MARUJOU株式会社」へ会社譲渡を実現されました。後継者不在を理由に検討を始めたM&Aで、「この人なら」と思える社長に出会えたと話す、尾崎鏡工業所の二代目を務める尾崎浩三様。事業承継の背景や思い、引継ぎを終えた今の心情について、同じく会社を長年支えてきた奥様の尾崎和枝様とともにお話を伺いました。
譲渡企業 | |
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社名 | 株式会社尾崎鏡工業所 |
業種 | 製造・加工業 (アルミミラーなど) |
拠点 | 大阪府 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
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社名 | MARUJOU株式会社 |
業種 | 製造・加工業 (ガラス製品) |
拠点 | 愛知県 |
譲受理由 | 技術力・開発ノウハウの強化 |
父から引き継いだ、家族のような会社。父の背中を見る中で、いずれは自分が継ぐものと思いを固めていた
1960年に尾崎様のお父様が始めた尾崎鏡工業所は、大阪府を拠点に自動車のバックミラー製造等を手掛ける会社です。
創業時からアルミミラーの加工に特化し、社内一貫で切断から研磨まで、小ロット多品目の加工受注に対応。新規参入は殆どなく、得意先から重宝されてきました。
尾崎浩三様(以下、浩三様):「尾崎鏡工業所は、先代にあたる父が始めた会社です。昭和35年というのは、私の生まれた年でして。父が個人の工場として始めたところから、少しずつ仕事が増えていって、株式会社化したのが昭和45年になります。」
高度成長期の最中、幼い頃から父親の背中を見て育ってきたという尾崎様。自分もいずれは会社を継ぐものだと自然と思っていたため、大学を卒業後にそのまま家業の仕事に就きます。お父様のもとで長年仕事に携わってきた浩三様でしたが、40代の頃にお父様が大きな病気を患います。その後はしばらく浩三様の叔父が会社を継ぎ、浩三様が50代のころに浩三様へと経営が引き継がれていきます。
浩三様:「社員の中には、私が小さい頃から知っているような、長年勤めてくれている方もいるんです。社員が7名の小さな会社とはいえ、家族のような形で続いてきた会社ですから。会社を継いだとき、『社員全員の生活を自分が守っていく』という責任を感じました。」
後継者不在を理由にM&Aを検討。「余裕のあるうちに始めた方がいい」というアドバイスが後押しに
そんな浩三様が事業承継を検討し始めたのは、後継者不在による会社の将来を案じてのことでした。
浩三様:「うちには息子が2人いますが、どちらもそれぞれの道に進んでいて、継ぐ意思はないと。従業員にも打診はしてみましたが、『とても僕らでは』といった反応でしたので、押し付けるのは違うなと。昔はM&Aというのはあまりピンとこんかったんですが、昨今そういった話を聞くようになって、うちでもできるのかな、と。」
地元の信用金庫経由で大阪府事業承継・引継ぎ支援センターに相談に行ったところ、会社にとってM&Aは現実的な選択肢だと背中を押されたという浩三様。しかし、当時は「あと5年くらいは頑張って、70代になってから譲り先が見つかればいいのではないか」という思いもあったそうです。
浩三様:「ですが、信金さんや引継ぎ支援センターさんと話をする中で『あんまり切羽詰まってからするよりは、年齢的にも余裕のあるうちに話を進めておいた方がいいですよ』とアドバイスをいただきまして。そういうものかと覚悟を決めて動き出してみたら、トントン拍子に進んだんです。これはこれで、きっとご縁だなと感じました。」
浩三様が引き継ぎ支援センターからの紹介でM&Aの支援先として選んだのは、以前からお付き合いがあったという大阪商工信用金庫。大阪商工信用金庫のM&A担当である白尾谷様のサポートを受けながら、会社譲渡に向けて動き出しました。
尾崎和枝様(以下、和枝様):「商工さんにお願いしようと決めた理由が一つあって。担当の方に初めてお会いした時、『うちはM&Aで儲けようとは思っていません。たしかに成功報酬はありますが、M&Aによってその先も会社が存続・成長することで、今後もその会社様とお付き合いが続く。M&A後の存続・成長支援こそ、私たちが目指すところなんです』とお話くださったんです。M&Aだけを商売として見てはるんじゃないから、信用してもいいかな、というのは主人と2人で話しましたね。」
浩三様:「大阪商工信用金庫さんには、大変親身になっていただいきました。ものすごく誠実でね。お忙しい中、うちにもよく足を運んでいただいて感謝しています。」
また、大阪商工信用金庫からの提案により、バトンズへのM&A募集掲載も実施。大阪商工信用金庫のサポート体制に信頼を置いていたことから、ネットでやり取りすることにも不安はなかったと振り返ります。
和枝様:「最初は商工さんが大阪を中心にご紹介してくれていたんですが、なかなか手堅い反応がなくて。そこで、『バトンズに掲載してみませんか』とお話をいただきました。私たちはバトンズさんのことは知りませんでしたが、商工さんがそう言うならと信じてお任せしましたね。」
初めての会社訪問時に感じた熱意。最初に「この人なら」と思うことができた
バトンズ掲載直後に問い合わせがあったのが、愛知県でガラス製品の製造加工を営むMARUJOUでした。
和枝様:「去年の暮れくらいに反応があって、『正月明けに大阪の方にいく予定があるから、一度会社を見させてもらえませんか?』と連絡があったんです。挨拶程度なのかな、と軽い気持ちでお迎えしたら、中山社長ご本人が直接いらして、たくさん質問してくださって。真剣にうちを買う気できてくれてはるんだなと、熱意を感じましたね。」
浩三様:「それまである程度まで進んだ話もあったんですが、実際に会ったのはMARUJOUさんが初めてでした。直接お話をして、45歳という若さにしてはしっかりされていましたし、話を進めていこうかなと思えましたね。
私個人としては、引継ぎ先に求めるこれといった条件は特になくて。ただ、父が作った会社ですし、私も小さい頃からずっと父親の仕事ぶりを見て、子供ながらに『世の中の役に立ってる』と感じていた仕事です。どんな方であっても、父の精神は受け継いでいってほしいという願いはありました。」
その後、MARUJOUとの交渉を進めていった浩三様。中山社長と会った第一印象から信頼できると感じたため、他社と比較して進めようとは考えなかったといいます。
浩三様:「昔、家内の友人がお見合いをした際、十回以上お見合いをした上で、最終的に『一番最初の方が一番良かったわ』と言っていたと。私もタイミングをすごく大事にするタイプなので、社長さんを見て『この人なら』と感じたことを信じてみようかと。」
和枝様:「それから、やっぱり中山社長はものすごいやる気を感じたんです。私たちがこのまま会社を続けていたら、なんとか潰れないように今のことを続けるくらいで、年齢的にも、新しいことをやろうという発想はもうなかった。それだったら、中山社長に引き継いでもらった方が、会社としてもいいんじゃないかと感じましたね。」
浩三様:「変な表現かもしれないですけどね、その方が、会社が喜ぶんじゃないかと思ったんです。」
誇りを持って続けてきた、命を守る仕事。今後も会社に貢献していきたい
写真)左から尾崎和枝様、浩三様、MARUJOUの中山豪社長、長谷川正博様、高橋健一郎様
大阪商工信用金庫のサポートのもと、無事に成約へと進んだ尾崎鏡工業所。尾崎様ご夫妻は、現在も会社に残り仕事を続けています。最後に、M&Aを終えた現在の心境と、今後について伺いました。
浩三様:「私はね、この仕事が好きやから、辛いことがあっても今までやってこれたもんで、仕事ができる限りは続けていきたい。やっぱり仕事が好きやと思うんですよ。だから、今度は自分の仕事で中山社長に貢献できるようにしたいですね。」
和枝様:「会社がこのまま続いてくれたらいいなと思っています。中山さんが『もうええで』というまで、主人には仕事を続けてほしいですね。私は引継ぎが終わったら退職して、次は自分のやりたいことをやってみようと考えています。」
浩三様:「安全面を考えると、車のバックミラーがないと運転自体ができないわけです。どんな部品にもいえることですが、ついていて当たり前、だけどなければ困る。そういうものを私たちは作ってきました。
新聞やニュースで取り上げられるようなことはないですが、『バックミラーがあったから助かった』ということも多いと思うんです。人の命を守る仕事、人に安心を与える仕事だと。それを誇りに今までやってきましたから。中山社長にバトンを渡してからも、そういう思いで会社を続けていただきたいなと思います。」
株式会社尾崎鏡工業所とMARUJOU株式会社のさらなるご活躍を、バトンズ一同、心より応援しております!
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