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「張り子の虎」の製造・販売業を事業承継!伝統工芸品を後世に残すため、M&Aを選択

2024年09月30日

岡山県瀬戸内市で「張り子の虎」の製造・販売を手掛ける「有限会社武久守商店」は、2024年1月、大阪府でプラスチック加工を手掛ける「株式会社UP ON THE BRIDGE」に事業譲渡しました。契約後、製造設備やノウハウをUP ON THE BRIDGEへと引き継ぎ、2024年8月より武久守商店は張り子の虎の小売業として事業を継続しています。親子二世代に渡り、張り子の虎の製造・販売を手掛けてきた武久守商店。二代目を務める武久忠様に、M&Aに至った背景等についてお話を伺いました。


 

譲渡企業
社名 有限会社武久守商店
業種 製造・卸売業(伝統工芸品)
拠点 岡山県
譲渡理由 後継者不在

 


 

譲受企業
社名 株式会社UP ON THE BRIDGE
業種 プラスチック加工
拠点 大阪府
譲受理由 事業の多角化、新規事業への参入

 


「伝統工芸品を後世に残したい」という思いで事業承継を検討

武久守商店は、武久様のお父様によって1957年に創業(1985年に法人化)されました。「張り子の虎」の製造・販売を手掛ける会社として設立し、二代目の武久様に事業を引き継いで以降も、60年以上に渡り「張り子の虎」を作り続けてきました。

張り子の虎は、首がゆらゆらと揺れる虎の形をした玩具で、子どもの健やかな成長を祈る縁起物として多く飾られています。創業時のお話について、武久様は以下のように話しています。

「父が創業した当時は戦後間もないころで、第1次ベビーブームによって子どもの数が急増したころでした。そのため、子どものために何かやりたいと思ったんだと思います。今は、子どもの数も少しずつ減ってきていて、当社の売上も徐々に減少してきました。

また、事業を引き継ぐ後継者がいないなどの理由で、張り子の虎を製造する会社も少なくなってきています。岡山県では、今では2社くらいにまで減ってきています。」

雑貨製造販売を行う大手企業など、法人への卸売をメインに事業を展開してきた武久守商店ですが、少子化や時代の変化に伴い、売上は徐々に減少。また、武久様が緑内障を患い、思うような視え方ができなくなってきたことや、年齢が60歳を超えていたこともあり、3年ほど前から業容を縮小していたそうです。

それでも、伝統工芸品を後世に残したいという思いでM&Aを実施された武久様。最初のきっかけは、商工会で事業承継についての話題が出たことだったといいます。商工会で事業承継の話題になり、会話の流れで「自分も承継をできたらと思っている」ということを話したところ、岡山県事業承継・引継ぎ支援センター(※)の紹介を受けたのだそう。そこから、張り子の虎の製造・販売業の後継者探しが始まりました。

(※)事業承継・引継ぎ支援センターとは ‥ 国が設置する公的相談窓口。 全国47都道府県に設置されており、後継者不在の中小企業・小規模事業者と譲受を希望する事業者とのマッチングを支援する機関。

他エリアの複数社から交渉依頼。譲渡の決め手は熱意をもって取り組んでもらえる方

岡山県事業承継・引継ぎ支援センターを通じて後継者探しをスタートした武久様。3名ほどの候補者と面談をしたそうですが、なかなか前に進まず、提案先を広げるためにM&Aプラットフォームであるバトンズの紹介を受けます。

バトンズに登録後は、担当者の宮原サポートのもと、再度お相手探しを開始。ご相談を受けたバトンズの宮原は、当時を振り返り以下のように話しています。

「武久守商店様は、伝統工芸品を取り扱っており、もし誰も名乗りを上げなければ文化継承が途絶えてしまう可能性もあるというような状況でした。しかし、伝統工芸品というのはビジネス的な側面から見るとなかなか採算が合わないような、工程に時間がかかるものも多いため、後継者探しのハードルの高さを感じていました。

加えて、武久守商店様は岡山に工場を構えて製造を行っていましたが、その場所は譲渡が難しいという状況でした。そのため、工場内の機械やノウハウのみを提供する事業譲渡という形をとり、それらを引き受ける場所を自前で準備できるかどうかというのも大きな論点でした。」

交渉に名乗りを上げたのは、大阪に拠点を置くUP ON THE BRIDGEと、東京の候補者の2社。バトンズからの提案もあり、武久様は2社を同時並行で進めていきました。

「バトンズの担当者から、大阪と東京の2社からご興味をいただいていると伺い、面談させていただきました。東京の方も熱心な方だったんですが、先方の都合で折り合いがつきませんでした。

もう一方の大阪の方が、譲渡させていただいたUP ON THE BRIDGEの橋上さんです。交渉中、10回近く岡山まで足を運んでいただき、大変熱意を感じました。私は、譲渡するならものづくりが好きで、熱意をもって取り組んでくれる方が良いと思っていたので、橋上さんと前向きに進めました。」

交渉中、九州の企業からも新たに交渉依頼が入ったそうですが、橋上様と交渉が進んでいたため、橋上様に絞って交渉を進めたそうです。また、譲渡後もしばらくは張り子の虎の小売業を行い個別依頼に対応したいという武久様のご要望を快く受け入れてもらえたことも、譲渡を決断した要因となりました。

製造場所の移転が完了し、武久様は小売業に専念

事業を譲り受けたUP ON THE BRIDGEは、大阪府でプラスチック二次加工をメインに手掛ける会社です。新規事業として3Dプリンタを利用した造形事業を始めており、その技術を活用して「張り子の虎」を作りたいとM&Aに踏み切りました。

今後、橋上様は伝統工芸品を後世に残すために既存顧客とも取引を続けながら、3Dプリンタを活用したオリジナルの張り子の虎の製造にチャレンジすると話しています。

武久守商店は、契約後もしばらくは機械設備を完全移転するまで個別の製造依頼を受けていましたが、2024年8月に設備の移転が完了。現在は、製造をUP ON THE BRIDGEへと完全に引き継ぎ、武久守商店は数年ほど「張り子の虎」の小売のみを続けるそうです。

武久様は現在66歳。譲渡を終えたばかりで、今後のライフプランはまだ考えていないそうですが、次世代の経営者へと伝統を繋ぐことができ、安心したご様子でした。

【成約を支援したバトンズ 宮原弘樹のコメント】

岡山県事業承継・引継ぎ支援センター様からご紹介を受け、M&Aをサポートさせていただきました。伝統工芸品は、日本全体で後継者不足が進んでおり、その技術や文化が廃れていってしまうことは、私自身寂しい思いを感じます。今回のご相談は、まさに日本を代表する文化の継承という事案だったと捉えています。

 

誰かがやらなければ文化が途絶えてしまう寂しさを感じながらも、伝統工芸品をビジネスとしてやっていくハードルの高さから、ご成約まで至るのかという不安はありました。それでも、UP ON THE BRIDGE様という会社に事業を引き継ぐことができ、大変嬉しく思っています。

 

今回のM&Aにより、古くからある伝統を次世代が新しい形で広げていく、伝統工芸品が生きる道を示してくれたのではないかと感じています。張り子の虎という伝統工芸品を、UP ON THE BRIDGE様独自の形で広げていっていただけることを心より応援しております。

 

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