兵庫県神戸市で産業機械の電気設計及び装置の開発・設計を行う「株式会社室住設計」は、2023年7月、新潟県に本社と工場を構え、制御盤製造と電気配線を専門に手掛ける「ロジックメイト有限会社」を譲り受けました。室住設計の代表を務める室住孝一様は「設計だけでなく製作までをワンストップで実現したい」という想いから、製作を手掛ける企業とのM&Aを検討。今回、その中からロジックメイトを選ばれた背景や、M&Aから1年経った現在の状況などについて、お話を伺いました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | ロジックメイト有限会社 |
業種 | 製造業 |
拠点 | 新潟県 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社室住設計 |
業種 | 専門サービス業 |
拠点 | 兵庫県 |
譲受理由 | 事業拡大 |
設計から製作までを手掛ける企業に成長させたい
大学卒業後、2年間のサラリーマン経験を経て、2008年に個人事業主として独立された室住様。電気設計の分野に携わる父が、仕事を家に持ち帰ってきてやり抜く姿を見て育った室住様は、「自分もいつかはこういう世界で働いてみたい」と子供心に思っていたそうです。
産業機械の電気設計に特化した組織として独立した後、2011年に法人化を果たした室住設計は、産業機械のさまざまな業務に関わる形に事業を広げながら、売上や社員数も増やしていきました。そして、起業から10年を過ぎた頃になると、室住様の中に「設計だけなく製作までワンストップで引き受けたい」という思いが芽生え始めたといいます。
「これまでは、設計まではやるけど製作は別会社にお願いする、というケースが多かったのですが、そのやり方を変えたいと思うようになりました。ただ、いくら製作を自前でやりたいと言っても、すべての工具を調達したり、ましてや工場まで自前で用意するのはあまりに現実的ではないなと。それなら、既に製作を専門としている企業と一緒になる方が効率的かなと考えました。
幸い、設計については私がいなくても会社としてそれなりに回せるようになっていたので、本格的に製作部門のグループ化を視野に入れてM&Aを検討し始めました。」
同業の製作を手掛ける会社で、自社と同等かそれ以下の事業規模、そして後継者不在の企業をターゲットにM&Aを検討し始めた室住様。検討先の条件としては、制御盤の製作をしている企業がベストだったそうですが、それ以外の企業も含め約10社と面談を実施。意向表明書を出しても交渉が進まないケースもあったものの、事業規模や財務状況が理想的で、制御盤を手掛けるロジックメイトに出会ったことで、交渉が前進し始めます。
ロジックメイトの所在地(新潟県見附市)は、室住設計のある神戸市から約600kmも離れていますが、その点に関して室住様は特に気にはならず、むしろ可能性を感じたと言います。
「新潟県は、ものづくりに力を入れている企業が結構多いんですよ。そのため、周辺で得意先を広げて設計の仕事まで受託できるかもしれないという思惑もありました。室住設計の拠点が神戸なので輸送費はかかってしまいますが、ロットで受注できるようなものだったら逆に新潟で作って輸送してもらえばペイできるという算段もあったので、『ここが一番良いかもしれない』と思い、最終的に決断しました。
距離についてはまったく弊害だとは思いませんでしたね。600km離れていると言っても、車で6時間もあれば行ける距離なので。ロジックメイトに向かう時は、日曜の夜に神戸を出て月曜日の朝に出社する感じです。私にとっては、それくらいの長距離移動は苦にはならないです。」
M&A後に気をつけたのは「従業員との間に波風を立てないこと」
ロジックメイトの前経営者だった藤澤様と初めてお会いしたときの印象は、「真面目で温和そうな方」だったと話す室住様。藤澤様の仕事に向き合う姿勢から、不在時でも信頼してお任せできると思えたそうです。
この人となら、きっと上手くやっていける。室住様は確信めいた予感を抱きながら、新生ロジックメイトの経営に取りかかりました。
M&Aを実施してから約一年が経過した現在、ロジックメイトの舵を取る上で気をつけていることについて、室住様は以下のように話しています。
「社員とパートの方々に波風を立てないことには気を配っています。私がこれまでと違うことを突然押し付けることで、仕事のモチベーションが下がったり不平不満が溜まって作業効率が落ちたら困りますから(笑)。
また、何かやりたいことが出てきたときは、まず藤澤さんに相談するようにしています。藤澤さんの奥さんは『社長なんだから好きにやっていいですよ』と言ってくれますが、必ずお伺いを立てていますね。波風を立てていいことなんてないし、相手を敬う気持ちがないとおそらく長くは続かないと思うので。」
良好な人間関係の構築には人一倍気を配ってきたことが伺える室住様ですが、当然変えていきたいと考える部分もあります。それが現場の環境、いわゆる5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)への取り組みだったそうです。
「現場に必要なものがどこにどう管理されているのか、わかっている人はわかっているのでしょうが、みんなでちゃんと共有できているのかな? という点が気になっているので、そこはもう少し何とかしたいという部分です。
もっとも、私が1ヶ月のうち1週間くらいしかロジックメイトにいないので『社長が見ていないだけで、みんなわかっていますよ』と言われたら、『はい、すみません』の一言で終わってしまうのですが(笑)。いずれにしても、もっと上手な整理の仕方、共有方法を探りつつ、変えていける部分は変えていきたいと思っています。」
安価に頼めるバトンズDDでリスクを回避
譲渡企業を探すにあたり、バトンズだけでなく他社のサービスにも登録された室住様。複数のサービスを利用されたからこそわかる、ユーザーから見たバトンズの特徴について室住様にお話しいただきました。
「M&A仲介会社さんが入らなくても進めることができたので、仲介手数料が抑えられたところは非常にありがたかったです。また、バトンズのデューデリジェンス(バトンズDD)は比較的安価にお願いできるので、これもすごく助かりました。M&A後に何か問題が見つかっても、後の祭りですから。
もしこのサービスがなかったら、知り合いの業者にお願いするつもりだったのでもっとコストがかかっていたと思います。たまたまだとは思いますが、他社サービスでは意向表明まで出して上手くいかなかったM&Aもあったので、成約まで進んだバトンズにいいイメージがありますね(笑)。」
5年計画でロジックメイトの業務体制を整えたい
最後に、今後の展望について伺ったところ、5年計画の構想を伺うことができました。
「ロジックメイトは男性が藤澤さん一人しかいなかったので、まずは室住設計の新潟事業所の社員として、地元の男性を一名雇いました。当面の目標は、藤澤さんが今やっている仕事を、彼に引き継いでやってもらうこと。女性陣だけではできないことが多々あり、たちまち立ち行かなくなってしまうので。ロジックメイトとしては、彼をいち早く戦力として育てることが使命になります。
また、藤澤さんだけでなく他の社員もベテランのため、世代交代を進めつつ人数を増やしていきたいです。藤澤さんがあと2年半は居てくれる予定なのですが、その間に仕事をきちんと引き継ぎながら、5年くらいを目安に理想とする業務体制を整えたいですね。」
今後のM&Aの可能性についても言及してみたところ、笑いながら以下のように答えてくれました。
「今は2つの会社で十分忙しすぎるので、M&Aをしたくてもそこに割ける時間がないです(笑)。あと一年半くらい経てば、少し余裕もできて検討するかもしれません。かなりニッチな業種を狙うことになると思うので、検討を始めてすぐに成約、というわけにはいかないとは思いますけどね。
機械設計を専門としている会社で、後継者不在の企業があれば、手を挙げる可能性は高いと思います。私の究極の夢は『総合エンジニアリング企業』になること。そこに近づくためは機械設計の会社が必要になるので、その時はぜひバトンズさんの力を借りたいと思います。」
株式会社室住設計の今後のさらなるご活躍を、バトンズ一同、心より応援しております!
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