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DESとはどのような手続き?メリットやDESを活用したスキームも紹介

2023年06月01日

DESは企業の財務状態を立て直す方法の1つです。実行すると企業と債権者双方にメリット・デメリットがあります。具体的にどのような特徴があるのか、DESの手続きと併せて見ていきましょう。

 

 

DESとは

DES(Debt Equity Swap)とは多過ぎる借入金の一部を株式に切り替え、財務状態を改善する手法のことです。借入金を減らすことで自己資本比率を高め、収益とキャッシュフローを改善できます。借入金の債務者である企業にとっては、財務状態が良くなり会社の立て直しを図れる方法として有効です。

 

DESを実施する理由

企業は財務状態が悪化すると、借入金を返済できなくなってしまいます。融資している債権者にとっては、債権を漏れなく回収するのがベストですが、無理に取り立てれば債権放棄せざるを得ない事態に陥るかもしれません。債権放棄すると融資した資金の回収は不可能です。

そこでDESが行われます。債権と企業の株式を交換することで、債権者は株式を保有します。そのまま企業の財務状態が改善しなければ株式の価値は0円になってしまいますが、改善していけば株価が上がり利益を得られるかもしれません。

回収できない可能性が高い債権をそのまま保有していると価値がなくなってしまいますが、DESを実行すれば長期的に見て利益を得られる可能性を高められます。

 

DESは2種類ある

借入金を株式に入れ替えるDESは、現物出資型金銭出資型の2種類です。それぞれの特徴を紹介します。

 

現物出資型

DESというと一般的には現物出資型をさします。企業の借入金を債権者からの出資とみなし、相当額の株式を交付する仕組みです。債権者に対する株式の交付は、特定の第三者へ新たに株式を発行する第三者割当増資により行われます。

既に企業は融資を受けているため、DESを実施するときに現金の移動はありません。記帳のみで完了します。

 

金銭出資型

現金の移動を伴うDESは金銭出資型です。債権者は債務者である企業に対し即座に返済に充てる約束のもと出資し、企業は出資額に応じ、第三者割当増資により債権者へ株式を交付します。

ただし企業は出資を受けてもその資金を自由に使えず、債権者へ返済するのみです。

 

企業にとってのDESのメリット

財務状況の改善につながるDESは企業にとってメリットの多い手法です。財務状況を改善でき、企業の信用を高められる可能性があるでしょう。

 

キャッシュ・フローの改善が期待できる

DESを実行すると、企業はキャッシュフローを改善できる可能性が高まります。借入金が減ることで元金と支払利息が減るためです。毎月の負担額が少なくなることで、返済が滞り債務不履行になるリスクを減らせます。

 

自己資本比率が高まる

借入金を株式に切り替えるDESを行うと、借入金の減少分が返済義務のない自己資本である株式になります。資本のうち純資産が占める割合である自己資本比率が高まることで、健全性が高い経営状態の実現が可能です。

 

企業の信用度が上がる

自己資本比率が高い企業は、必要なキャッシュフローを確保できており、信用度が高いのが特徴です。信用度の高さから融資の審査に通りやすくなり、支払利息も低く設定されやすくなります。

融資を受けることで事業拡大や新規事業に取り組み、経営状態を改善できるかもしれません。

 

 

 

企業にとってのDESのデメリット

経営状態の改善につながるDESはメリットばかりではありません。課税される可能性がありますし、配当金額が増え負担が重くなる可能性もあります。またこれまで自社のみで行っていた経営に、元債権者の株主が参画することも考えられるでしょう。

 

債務消滅益により税金を課される可能性

金融機関といった第三者の債権者が企業に対しDESを行う場合、企業の負担する法人税額が増えるかもしれません。税額が増えるのは、債権の時価相当額が額面金額を下回り、債務消滅益が発生しているときです。

 

配当負担の増加

DESにより元本や利息の返済額は減少しますが、全ての負担が減るわけではありません。新しく株式を発行して債権者に割り当てるため、その分配当負担が増える点はデメリットです。

 

元債権者の株主による経営への参画

DES実施に伴い、債権者は企業の株主となります。企業が意思決定を行う株主総会で議決権を持つため、元債権者の株主が経営方針を指導し始めることもあるでしょう。経営者はこれまでのように自由な経営ができなくなるかもしれません。

 

債権者にとってのDESのメリット

債務者である企業にメリットのあるDESは、債権者にもメリットのある手法です。経営に参画し企業が利益を出せるよう介入できますし、キャッシュフローの改善にもつながります。株価が上がれば利益が出る可能性もある方法です。

 

株主になることで経営に参画可能

保有している債権を株式と交換すると、債権者は企業の株主になります。株主になれば企業の意思決定を行う株主総会で議決権も行使可能です。株式の保有割合によって株主の権利は異なります。

10%以上の議決権があれば解散請求権がありますし、1/3以上持っていれば特別決議を単独で止められます。保有割合が高いほど、企業の重要な決定を単独で実施可能です。

積極的に参画し指導することで、経営改善を実施すれば、保有している株式から利益を得やすくなるでしょう。

 

貸倒引当金を減額可能

債権者は万が一債務不履行が起こったときに備え、取立不能見込額を貸倒引当金として費用に繰り入れています。債権と株式を交換するDESを実施すれば、債務不履行が起こる可能性のある債権を減らせるため、貸倒引当金を減額可能です。

貸倒引当金の減額により、債権者のキャッシュフローが改善する可能性があります。

 

株式から利益を得られる可能性

DESにより債権者から株主になるため、企業のその後の経営状態によっては配当金を受け取れるかもしれません。また将来的に上場すれば、株価が急激に上がり売却益で大きな利益を得られる可能性も考えられます。

 

債権者にとってのDESのデメリット

債権者にとってのDESは、経営に参画し将来的に大きな利益を得られる可能性がある一方、利息収入の減少や資金回収が不能になるデメリットもある手法です。

 

利息収入が減る

債権は返済のタイミングで元金に加え利息も受け取れます。利息は債権者にとって確実に得られる利益です。DESで債権を株式へ交換すると利息は発生しません。

株式を保有していることによる配当金や、取得時と売却時の差額による売却益を得られる可能性はありますが、

必ず受け取れる利益ではないため損失につながる可能性もあります。

 

 

企業が倒産すると資金回収できない

株式は企業が成長すれば価値が高まりますが、倒産すれば価値はなくなります。DESを行った企業が倒産すれば、元債権者は資金を回収できません。

 

非公開株式の売却は難しい

DESで取得した株式を売却したいと考えても、上場していない非公開株式を売却するのは難しいことです。株主総会か取締役会で株式を売却することに対し決議が必要ですし、株価算定の方法が複雑で計算をプロに頼まなければいけません。

業績が上がり株価が上がったとしても、非公開株式のままでは売却し利益を確定するのが難しいこともあります。

 

 

 

DES実行のための手続き

DESを実行する手順は以下の通りです。

1.債務者と債権者の合意形成
2.債務者の募集株式発行(第三者割当増資)についての株主総会決議
3.債権者の書面による申込み
4.目的物の給付
5.変更登記

 

手続きの詳細について説明していきます。

 

債務者と債権者の合意形成

DES実行にあたって最初に行うのは、債務者である企業と債権者の合意です。上場していない中小企業の株式は現金化が難しいため、債権と株式を交換するDESに対し債権者が慎重になるのが一般的です。

合意を得るには受け渡す株式を配当優先株式にするなど、債権者にメリットのある内容になるよう配慮しなければなりません。

 

債務者の募集株式発行(第三者割当増資)についての株主総会決議

株式会社が株式の発行または自己株式の処分を行う場合、株式数や現物出資に関する事項・払込の期日などの募集事項を決定します。募集事項の決定については、株主総会の特別決議を行わなければいけません。

このとき債権者へ「有利な金額」で株式を発行するなら、なぜその金額なのかも株主総会で説明する必要があります。

 

債権者の書面による申込み

株式の申込みは、企業が債権者へ募集事項を通知し、債権者が氏名または名称および住所、引き受けようとする募集株式の数を記載した書面を企業へ交付する形式です。

企業は債権者が提出した書面に基づき、取締役会の決議をへて割当先や割り当てる株式数を決定します。

 

目的物の給付

債務者である企業へ債権者から債権が引き渡されるには、債権譲渡契約や確認書・合意書のいずれかを締結しなければいけません。契約書を取り交わした上で、債権者は債権証書を交付します。

このとき現物出資型であれば現金の移動は伴いません。現金出資型は債権者からの現金の払込を受けた上で、債権の引き渡しを行います。

交換に企業は債権者へ株式を交付します。株式の効力が発生するのは、払込もしくは給付期日からです。

 

変更登記

新たに株式を発行することで、企業は変更登記の手続きをしなければいけません。発行済株式総数、種類、種類ごとの数、資本金等の額が変わるためです。変更登記は本店所在地において2週間以内に行うよう定められています。

 

中小企業M&AにおけるDESスキーム

中小企業ではオーナー経営者が企業に対し個人資産から資金を入れているケースがあります。企業が経営者から融資を受けている状態です。

このとき株式譲渡によるM&Aを行い、受け取った対価で債務を返済することがあります。ただし経営者が投入した個人資産の金額によっては、M&Aの対価のみで返済しきれないかもしれません。

そこで活用できるのがDESです。経営者からの借入金と株式を交換した上で株式譲渡を実施します。経営者が企業へ入れた資金はDESによって全て株式になっているため、株式譲渡により全額回収可能です。

 

メリット・デメリットを把握しDESを活用しよう

債務者である企業の借入金と株式を交換する手法をDESといいます。企業にとっては負債を減らし、財務状況の改善につなげられる方法です。

債権者にとっては、債務不履行で資金を回収できない事態を避けられるかもしれません。DESにより企業の株式を取得すれば、株主として経営へ参画し業績を改善でき、将来的に大きな利益を得られる可能性があるためです。

ただしメリットばかりではありません。企業にとっては課税や配当負担の増加が考えられますし、債権者にとっては利息収入の減少も考えられます。メリット・デメリットを考慮した上で活用を検討しましょう。

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