東京都で電子部品の組み立て製造・販売を手掛けるEMS企業「株式会社ユニパーツ」は、同じく東京都でマイクロ波・ミリ波回路設計及び無線機器の製造・開発等を手掛ける「株式会社ビーコンテクノロジーズ」に会社譲渡を実施されました。
ユニパーツの前代表である長友信政様は、「75歳になったら引退する」と決めて経営を続ける中で、事業承継も選択肢として検討。M&Aに至るまでの経緯や、30年以上の経営人生の振り返り、無事にM&Aが成立した現在の心境などについて伺いました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社ユニパーツ |
業種 | 電子部品製造・販売 |
拠点 | 東京都 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社ビーコンテクノロジーズ |
業種 | 電子回路設計開発 |
拠点 | 東京都 |
譲受理由 | 取引先拡大、経営基盤の強化 |
電子機器製造のサポートを担う商社として事業成長
設立から30年以上、電子機器・基盤の商社として事業を展開してきたユニパーツ。商社機能だけでなく、基盤等の部品の組み立てをOEMにて受託しており、常時40社以上の取引先に電子機器部品の販売を行ってきました。
レントゲンなどの医療機器類や家電商品、産業機器向けの部品など、扱う製品は多岐に及びます。仕入れはメーカー及び代理店に依頼をしており、80社程度との取引があります。
「初めに会社を設立した頃は、電子機器部品の販売を専門にやっていました。しかし、時代が変わっていく中で、販売だけでは厳しくなってきたんです。そこで、EMS企業として少しずつ事業を転換し、メーカーさんのサポート的な立ち位置で経営を続けてきました。」
EMSとは、製造受託企業を意味し、他社の製品の製造を請け負う企業のことを指します。ユニパーツは、時代の流れの中で事業形態を柔軟に変化させながら、取引先の幅も変化に応じて広げてきました。
電子機器部品は年々納期が長期化しており、発注から納品まで一年以上かかるものも珍しくありません。そんな中でもユニパーツでは、定期的に受注する部品を中心に在庫を保有・即納しており、電子機器製造のバリューチェーンとしての重要な役割を担ってきました。
取引先の数と幅広さが功を奏し、コロナ禍も乗り越えられた
40代の頃に、ユニパーツを設立された長友様。会社創設の理由は「サラリーマンに向いていなかったから」だと語ります。
「もともと、長年商社で働いてきました。もうはっきり言って、自分はサラリーマンには向いていなかったんですよ(笑)。だったら、自分にできることで事業をしようと。とはいえ、長年会社を経営していると色々なことがあります。こういう小さい会社は、どうしても景気の浮き沈みに左右されやすい。特にリーマン・ショックの時の落ち込みは苦しかったですね。」
一方で、多くの企業にとって苦境となった近年のコロナ禍では、意外にも業績は伸びていったそう。ユニパーツは医療系の取引先も多く、レントゲン機器の製造部品の需要がコロナ禍に急増したのです。
「コロナ禍では、ドンと発注量が落ちた取引先もあれば、逆にグッと増えた取引先もありました。国連関係の機関から医療機器の発注がきたこともあります。大変な時期でしたが、助かった部分もありますね。」
小さい会社でありながら、さまざまな苦難を乗り越えてきたユニパーツの特徴のひとつに、取引先の多さと業種の幅広さがあります。意識して取引先を増やしてきたというよりは、時代の流れで柔軟に対応していく中で、自然と取引先が増えていったと長友様は振り返ります。
「もちろん、努力して取引先を開拓してきた部分もあります。ただ、それだけでなく時代の流れの中で事業を畳む会社がたくさんあったんです。10〜20年ほど前から、そういった会社が我々に取引先や在庫を引き継いでくれることが増えて。日本の企業がどんどん縮小していく中で、引継ぎによってお客さんを獲得してきたことは、弊社にとって大きかったですね。」
「75歳になったら引退する」と決め、事業承継を選択
さまざまな苦難を乗り越え、30年以上経営を続けてきた長友様ですが、「75歳になったら引退しよう」と決めていたのだといいます。さまざまな選択肢を検討する中で、コロナ禍を乗り越えてから本格的にM&Aに向けて動き始めます。
「今年で74歳になるのですが、コロナの頃から『75歳になったら経営を辞める』と宣言していました。従業員も70歳を超えており、会社としても長期の継続は難しい状態だった。後継者もいませんでしたし、やっぱり若い人に会社を引き継いでもらわないと、このままではまずいなと思って。
これまで我々が他社から顧客や在庫を引き継いできたように、同業者に少しずつ引き継いでいって会社を畳むことも考えました。色んな選択肢を考える中で、M&Aが手っ取り早いかもしれないなと思い、まずはうちの税理士さんに相談をしました。」
M&Aを検討する中で、今回のM&Aアドバイザーを務めた「株式会社リバースオリジナル」の原田様を紹介された長友様。原田様のサポートのもとM&Aを本格的に取組み始め、選択肢としてバトンズにも登録をされました。承継先の選定にあたり、長友様には「国内の同業社に譲りたい」という意向が強くあったと話しています。
「やっぱり、自分達と同じく電気関係のことをわかっている方や、同じような製造業に携わってきた人に会社を引き継いでもらいたいじゃないですか。中には、異業種や投資家、電子機器のことを全く知らないような海外の企業からの問い合わせもいくつかありましたが、なるべく同業者に絞って検討していました。」
予期せぬトラブルが発生するも、アドバイザーの存在に助けられて無事に譲渡成立へ
そんな中、今回成約に至ったビーコンテクノロジーズは、無線機器やレーダーなどに利用されるマイクロ波・ミリ波と呼ばれる周波数帯を使った電子回路設計・開発を手掛ける会社です。
「ユニパーツは、EMSがメインとなっていましたから、会社を成長・存続させるには、どうしても技術が必要だったんです。私としても、技術者を入れて事業を拡大したいという思いは長年あったものの、会社の体力や年齢的にも実現が難しかった。
そこに、技術力があるビーコンテクノロジーズさんからM&Aをしたいと問い合わせがあったわけです。まさにぴったりだなと。すぐに意気投合できましたし、まだM&Aもしていなかったのに、技術提携の契約書を結んでもらったくらいなんです。」
代表の林様とお会いした際には「とにかく人がいい」という印象だったという長友様。業界全体が人手不足である製造業において、技術がありかつ人柄もいい人材を探すのは一苦労だと同業者から聞いていたこともあり、「この人になら会社を任せられる」と感じたそうです。
お互いに意気投合し、前向きに交渉が進んでいきましたが、予想していなかったトラブルに見舞われます。それが「名義株」の存在でした。名義株とは、出資者と会社の株主名簿に掲載されている株主が異なるケースのことを指します。とくに、平成2年の商法改正以前は、株式会社を設立する際に最低7人の株主が必要だったため、名義株を採用する会社も多くありました。
ユニパーツの譲渡実行に向けて、名義株の対象者に確認の連絡を入れると、「名義株の対象者と連絡がとれない」「対象者が亡くなっていて相続人へ移管されている」等により、契約書の書き直しや契約日の遅延が発生。予期せぬトラブルに見舞われながらも、アドバイザーの原田様のサポートにより、無事に譲渡実行へと至ります。
「初めてのM&Aですし、名義株のトラブルもあって思っていたよりも手間がかかり、大変でした。M&Aのことは全く分かりませんでしたから、名義株の問題点も知らなくて。原田さんのサポートがあって、本当に助かったなと思っています。」
変わり続ける時代の中で、会社の変化も受け入れる必要性
無事に譲渡が成立し、現在は会社の引継ぎ業務を進めているという長友様。今の率直な心境について伺いました。
「時代は変化しているわけですから、新社長の林さんのやりたいようにやってもらって構わないと思っています。一方で、もう自分の思うようにはできないし、まだ正直そこが割り切れていない部分もありますね。」
M&Aを成功させる上で、M&A後の統合プロセスは重要な課題のひとつとして挙げられます。新しく経営方針が変わっていくことに葛藤しつつも、長友様は、お客様に変化を受け入れてもらい、会社としても自分自身としても変化を受け入れていくことが必要だと感じています。
「人間は、どうしても『変わる』ことにすごく抵抗があるじゃないですか。引継ぎをする上で、経営者や従業員にとって難しい部分だと思います。でも、本当にもう今の時代はどんどん変わっていく。これまでと同じようにやっていたのでは、会社として駄目になっていきますから。変わってもらうために引き継いだんですから、受け入れていきたいと思います。」
変化に戸惑いを感じながらも、会社の成長のために前向きに捉えている長友様。2社の強みを活かした取り組みは、すでに計画が進んでいます。無事に譲渡を終えて安堵の表情を見せる長友様に、最後にM&Aをお考えの経営者の方に向けたメッセージをいただきました。
「こうして無事に事業承継が成功できたのは、サポートしてくださった原田さんや、バトンズの皆さんのおかげだと思っています。本当にお世話になりました。まだまだM&Aの選択肢を迷っている方もいますし、M&Aのことを知っていても、バトンズさんのようにプラットフォームを活用できると知っている人はまだ少ないと思います。
私は今回本当に助かったので、後継者不足や経営難に悩んでいる周りの人たちにも、『こんなやり方もあるよ』と紹介しているくらいです。これから、もっとこういったサービスの認知が広がっていけばいいと思います。」
長友様と株式会社ユニパーツの今後のさらなるご活躍を、バトンズ一同、心より応援しております!
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