障害福祉サービスのプロフェッショナルである「相談支援専門員」としてNPO法人に従事されていた武鑓夏美様は、この度バトンズを通じて、千葉県の相談支援事業所「株式会社元気&Y」を譲り受けされました。
岡山県で10年以上、相談支援専門員の仕事に取り組まれてきた武鑓様は、理想の事業所モデルを作りたいという想いでバトンズに登録。M&Aを通じて経営者のキャリアをスタートされた武鑓様に、M&A交渉の経緯や今後の事業ビジョンなどについてお話を伺いしました。
譲渡企業 | |
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社名 | 株式会社元気&Y |
業種 | 障害福祉、相談支援事業 |
拠点 | 千葉県 |
譲渡理由 | 選択と集中 |
譲受側 | |
---|---|
区分 | 個人 |
業種 | 障害福祉、相談支援事業 |
拠点 | 岡山県 |
譲受理由 | 起業 |
全国の相談支援事業所が抱える課題に向き合い、M&Aを選択
岡山県で10年以上、NPO法人で相談支援専門員および管理者として勤務されていた武鑓様。相談支援専門員とは、障害福祉サービスや地域の特性などを把握したうえで、利用者に適した障害福祉サービスを紹介する仕事です。また、障害福祉サービスの利用サポートや、利用後のアフターフォローなど、まさに障害福祉サービスと利用者、地域や関係各所を繋ぐかけ橋としての役割を担っています。
「私が勤めていたのは、0〜18歳までの子をもつ親御様に特化した相談支援事業所になります。親御様からの相談を受けて、公平な立場から障害福祉サービスを紹介し、サービス利用の計画を伴走したり、関係機関との連絡・調整を行ったりしています。
学校に行けなくなったお子様や、衝動的もしくは自閉的な傾向があるお子様を持つ親御様から相談を受け、どのような療育先にどれくらいの頻度で通うのが良いかなど、一緒に話し合って計画を立てることが主な仕事です。」
福祉業界全体で人材不足が叫ばれている中で、相談支援専門員も例に洩れず人材不足が課題となっています。相談支援専門員に相談をしたくても、人員不足から断られてしまうケースもある一方で、実際に相談があるのは障害福祉サービス利用者全体の2割程度。相談支援専門員の存在自体が認知されていないという逆の課題もあるのが現状だと武鑓様は話しています。
相談支援専門員という立場から、障害福祉サービスを取り巻く業界課題を感じていた武鑓様は、理想とする事業所像を実現するために、自分の手で経営をしていきたいという気持ちが強くなったといいます。
「働いている中で、『こうすればもう少し利益も担保できるのではないか』『親御様のためにはこうした方がいいのではないか』というような、相談支援事業所としてあるべき姿を思い描いていました。
その思いを実現するために、バトンズに登録して1年ほど前から本格的に事業を探し始めました。しかし、相談支援事業所が売りに出ることは少なく、探し始めてから1年ほど経って、ようやく出会えたのが今回の事業所になります。」
1年探してついに出会えた、千葉の相談支援事業所
バトンズで譲渡案件を探す中で武鑓様が出逢われたのは、現在住んでいる岡山からは距離が離れた千葉の事業所でした。物理的距離に際して、引継ぎの迷いはなかったのでしょうか。
「相談支援事業所が掲載されていること自体がかなり貴重だったので、まずは話を聞いてみようと思い、すぐに連絡しました。距離は遠いですが、岡山から東京行きの飛行機がありますし、新幹線もそこまで不便ではないので、東京近郊であれば大丈夫かなと思っていました。
また、岡山に強い拘りがあったわけではなくて、相談支援事業所は全国で体制を整えていく必要性を感じていたので、マッチングできることの方が最優先でした。ただ、実際に話を聞いてみると、相談支援事業所は地域特性があり、岡山と千葉ではかなり違うことが分かりました。例えば、利用者と契約するタイミングが違ったり、提出する書類の方法が違ったり。岡山とは異なる点が多くて驚きました。
全国に拠点を広げていきたいと思っている私にとっては、そのような違いを知ることができたのは大きなプラスでしたし、全国展開するためには、私が現場にいなくてもうまく経営が回る状態であることが理想です。そのためのテストケースとして、岡山から離れた事業所はふさわしいと思い、決断しました。」
相談支援事業所を全国に増やしていきたいという目標を持ち、その第一歩目となった今回のM&A。このタイミングで経営者としてもスタートを切った武鑓様は、経営面の戸惑いがあったものの、前オーナーからアドバイスを受けることができ、スムーズに引継ぎすることができたと話しています。
「会社経営に関しては、本当に分からないことだらけでした。例えば、税理士の方に経理面のお伺いをする際、今まで関わった経験がなかったので、まず何からお願いすればいいのか、どこまでやっていただけるのかが分からないという手探りの状態でした。しかし、前オーナーには引継ぎ後も経営に関するアドバイスをしていただいていたので、本当に良い方と出会えたなと思っています。」
社会性の高い事業を、全国に広げるための経営戦略とは?
これまでの経験を活かし、18歳未満の子どもに特化したサービスを全国展開していきたいと話す武鑓様。18歳未満の子どもと18歳以上の大人では、支援内容やお金のやり取りなどが異なるため、相談員の作業が煩雑化していることも現状の懸念材料であるといいます。
「どの事業所も、お子様も大人も両方支援するケースが多いのですが、そのせいで事務作業が煩雑になり、本来やるべき仕事に時間を割けられなくなっているのではと懸念しています。
そのため、私は経験のある18歳未満のお子様に特化した事業所として展開していく予定です。加えて、事務作業を岡山で一貫して行えるように体制を整えることで、相談支援専門員がお客様に向き合える時間を増やしていきたいです。」
また、1人の相談支援専門員がサポートできる件数が少ないというのも課題に感じていると話す武鑓様。その背景には、虐待に遭っているケースや児童相談所が関わっているケースなど、難しい相談事項を受け持つことで、サポート件数を増やすことが難しくなっているという現状があります。
「そのため本事業では、気軽に相談したいと思っている親御様たちの受け入れ体制を整えたいと思っています。そうすることで、相談支援専門員が担当できる相談案件数も増やすことができますし、他の事業所ではお断りされてしまった方々の相談にも対応できると考えています。
今後、全国に20ほど相談支援事業所を増やし、100名の相談支援専門員を雇いたいと考えています。できるだけ多くの方々の相談を受け付けられるよう、体制を整えていきたいです。」
相談支援専門員は必要性があるにも関わらず、認知の低さにより利用割合が少ないことや、専門員の人員が不足している現状は、大きな社会課題であるといえます。武鑓様は、その現状を変えるために更なる事業拡大を構想中。M&Aによる起業に踏み出し、働き方が大きく変わった武鑓様は、現在の心境と変化について以下のように話しています。
「従業員だった時代と経営者になってからでは、普段生活している景色が全然違います。ふらっと入ったカフェでも、テレビでニュースを見ているときも、経営者としての視点で世の中を捉えるようになりました。本当に貴重な経験をさせていただいているなと感じます。
たとえ経営がうまくいかなかったとしても、そのチャレンジが人生の経験として豊かになることは間違いないと思いますので、起業に興味がある方は、ぜひM&Aに挑戦してみて欲しいなと思います。」
株式会社元気&Yと武鑓様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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