東京都でマイクロ波・ミリ波回路設計及び無線機器の製造・開発等を手掛ける「株式会社ビーコンテクノロジーズ」は、同じく東京都で電子部品の組み立て製造・販売を手掛けるEMS企業「株式会社ユニパーツ」を譲り受けされました。
ビーコンテクノロジーズの代表を務める林昌二郎様は、取引先の拡大による経営基盤の強化を目指し、M&Aを検討。すでに新たな設計開発にも取り組んでいるという林様に、M&Aの経緯や今後の事業展望などについてお話を伺いました。
譲渡側 | |
---|---|
社名 | 株式会社ユニパーツ |
業種 | 電子部品製造・販売 |
拠点 | 東京都 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受側 | |
---|---|
社名 | 株式会社ビーコンテクノロジーズ |
業種 | 電子回路設計開発 |
拠点 | 東京都 |
譲受理由 | 取引先拡大、経営基盤の強化 |
より幅広い業種の顧客を開拓するためにM&Aを検討
2016年に設立し、今年で9期目を迎えるビーコンテクノロジーズは、代表の林様が前職の仲間3人と共に創業した会社です。同社は、無線機器やレーダーなどに利用されるマイクロ波・ミリ波と呼ばれる周波数帯を使った電子回路設計・開発を手掛けており、卓越した技術を持つ企業として、クライアントからそのニッチな技術を求められてきました。
これらの設計・開発技術は、スマホの5Gや自動運転の自動車レーダーなど、最先端の産業にも必要不可欠な技術であり、グローバルな産業発展において欠かせない技術であるといえます。
「私は、前職で同業の営業技術部門に長く在籍しており、そのときのお客様や取引先様からの引き合いによって、創業当初から黒字経営を続けることができています。主力製品は艤装メーカー向けのレーダー機器で、高周波回路設計やRF基盤デバイス組立にも強みがあります。
無線に関するテクノロジーは日進月歩で進んでいるので、日々の研究も大切にしています。製品のアップグレードも欠かさず、ベンチャー企業としてチャレンジをし続けています。」
艤装メーカー向けのレーダー機器を中心に、数多くのマイクロ波・高周波製品の設計開発を手掛けてきたビーコンテクノロジーズですが、会社の将来を見据えたとき、取引先の事業領域を広げ、リスク分散をしていく必要性を感じたといいます。
「弊社はコアとなる取引先がいましたが、経営を安定化させるためには、特定のクライアントに依存するのではなく、裾野を広げる必要がありました。数年前から新たな展開を模索し始めた頃、M&Aを意識するようになりました。」
アナログな部分は、M&Aにおいて伸び代になり得る
その後バトンズに登録し、本格的にM&Aの検討を開始。林様は「ビジネススキームが類似していること」「広く取引先を持っていること」「技術力があること」を基準に譲渡案件を探しており、その中で目に留まったのが、電子部品の総合商社として30年以上続くユニパーツでした。
「ユニパーツが魅力的だったのは、広く取引先を持っていること、さらにお客様の業界がバラエティに富んでいたことです。また、ユニパーツは商社でありながらも、EMS企業でもありました。設計・開発は行っていませんが、部材を支給・調達し、外注工場に組み立てを依頼してお客様に納める。ファブレス企業である弊社とビジネススキームが似ているところも非常に魅力的でした。」
ユニパーツは技術力こそ備えていなかったものの、多種多様なクライアントとの取引があり、類似したビジネススキームを持った会社でした。林様はそれらの点に魅力を感じ、交渉を前向きに検討。交渉の中で、ユニパーツが「アナログな会社であったこと」もM&Aを進める要因になったといいます。
「ユニパーツは業歴がある会社で、ビジネスの進め方がアナログチックのままになっているところが要所に感じられました。そこは、M&A検討時にマイナスに捉える見方もあると思いますが、逆に考えると、デジタル化を進めて合理的にビジネスを進められるようになれば、事業はさらに成長できると感じたのです。
直近の決算書では、ユニパーツは3期連続で黒字を計上していました。現状で黒字経営ができていることに加えて、デジタル化による業務効率化・コスト削減を進める余地は十分にあり、伸び代を感じました。」
企業調査を丁寧に行い、無事に株式譲渡を完了
今回のM&Aで大変だったポイントに、名義株の論点をお話くださった林様。名義株とは、出資者と会社の株主名簿に掲載されている株主が異なるケースのことをいいます。とくに、平成2年の商法改正以前は、株式会社を設立する際に最低7人の株主が必要だったため、名義株を採用する会社も多くありました。
M&Aを実施する際、「名義株の対象者と連絡がとれない」「対象者が亡くなっていて相続人へ移管されている」等の理由で、M&Aの実行が遅延するケースなどがあります。ユニパーツ社でも名義株があったため、M&A実行前に名義株の対象者への確認等を行う中で、契約書の書き直しや契約日の延期が生じたことは、大変だったことのひとつに挙げられています。
また、今回のM&Aを行うにあたって重要だったポイントは、在庫商品の価値を見極めること。企業価値の評価の中に在庫商品も含まれていたため、林様と社員の2人で、実際に現物を見て数を確認されたそうです。
「在庫数と記載内容が一致しているかというのはもちろん重要ですが、それ以上に『そのモノにどれだけの価値があるか』を判断できることも重要です。そのため、モノの価値判断ができる人材が社内にいる必要があり、弊社は同じ電子機器・電子部品取り扱う会社であるため、その見極めができました。」
実物を一通りチェックしたことで、その在庫商品が価値あるモノだと確信できた林様は、M&Aの実行へと踏み切ります。
M&A成功の秘訣は、お互いの強みを活かせること
今回、バトンズを通じてM&Aのご成約をされたビーコンテクノロジーズ。バトンズを活用してみての感想について、以下のようにお話しくださいました。
「バトンズは、ソーティングできる機能性が良いですね。キーワードや業種、規模ごとの設定により、理想のターゲットに絞り込むことができます。M&Aの交渉相手を効率良く探せたことが、ユニパーツとの出会いに繋がったことは間違いありません。」
ユニパーツ社の譲渡掲載にあたり、20社近くの企業が買収候補に名乗りを挙げており、その中から選ばれたビーコンテクノロジーズ。ユニパーツの前経営者は譲渡先に『設計ができる企業』を望んでおり、その条件に当てはまったのが選ばれた理由だったのではないかと林様は推測しています。
実際に、ユニパーツはルート営業でお客様を確保できていた反面、改善・改良の要望に柔軟に応えられる技術力を有していなかったという課題がありました。ビーコンテクノロジーズと手を組むことで、お互いの強みを発揮できれば課題解決の可能性が高まります。ユニパーツとしても、会社の存続・発展に向けてプラスの要因があり、win-winのM&Aだったといえるでしょう。
現在は引継ぎ期間であり、前社長も引継ぎ業務のために会社に残っています。林様は、いずれはユニパーツをビーコンテクノロジーズに吸収合併させることを想定していたそうですが、ユニパーツの実状を知り、少しずつ考えが変わってきているといいます。
「ユニパーツの拠点は調布市なのですが、取引先や外注工場も近場に集中していて、一つの地場産業のようになっています。そのため、倉庫や配送センターは調布に残して、本社機能だけをビーコンテクノロジーズの拠点である池袋に持っていく、というのが一番良い方法かなと考えています。」
35年の歴史をもち、地元でネームバリューがあるユニパーツ社。社名を残してほしいという社員の希望もあるため、今は会社を残す方向で考えていると林様は話しています。
「設計開発のできる総合商社」の実現に向けて
ユニパーツとビーコンテクノロジーズの未来について、林様は次のように語っています。
「ユニパーツ社は、お客様に提案できる企業へと変革していきたいと考えています。これまでは、カスタマイズ化のような依頼は断らざるを得ない状況だったと思いますが、今後はそういう案件も積極的に引き受けたいと思います。それから、出来ること・出来ないことを仕分けして、出来る部分はビーコンテクノロジーズで設計を担うようにする。最終的に『設計・開発ができる総合商社』を目指していくつもりです。」
ビーコンテクノロジーズとユニパーツの枠組みの中で、新たに動き出している開発もあります。その一つがプールの監視装置。「溺水センサー」という、溺れている人を即座に見つけられる検知器を搭載した装置で、プライベートプールの所有者をターゲットに販売する計画が進んでいるそうです。
設計・開発はビーコンテクノロジーズが手掛け、お客様の望む改良をユニパーツで請け負っていく。その連携を軌道に乗せ、これまでにない商品を世の中に広めていくことが、今後の使命であると林様は語ります。
初のM&A成約を実現し、新たな開発にも既に動き出しているビーコンテクノロジーズ。今後の事業戦略として、M&Aによる事業拡大の可能性について、最後に伺いました。
「M&Aは、しばらくはお腹いっぱいという感じですかね(笑)。やはり、大変な労力がかかるものですので。ただ、今後エンジニアや営業等の人材集めに苦労すると思うので、人材獲得の手段としてM&Aは考えられるかもしれません。特に、若い人材を集めるのは非常に難しいですから。若い人がいて、技術力を持った会社があったら、ぜひ力を貸してほしいですね。」
ビーコンテクノロジーズの今後のさらなるご活躍を、バトンズ一同、心より応援しております!
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