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「経営者保証に関するガイドライン」とは?概要や制度趣旨を詳しく解説

2024年06月24日

監修者
今井法律事務所
今井丈雄 (いまいたけお)
中小企業者に対し、私的整理を含めた倒産・事業再生、事業承継、M&Aを中心に支援を行っている。
M&Aについては、法的な支援だけでなく、FAとしても支援を行う。

「経営者保証に関するガイドライン」とは

「経営者保証に関するガイドライン」(以下、「経営者保証ガイドライン」といいます。)は、中小企業(小規模事業者等を含みます。)の金融機関等からの借入れについて、経営者の(連帯)保証契約を検討する際や、金融機関等の債権者が保証の履行を求める際における、中小企業・経営者・金融機関の自主的なルールを定めたものです。

経営者保証ガイドラインの本文やQ&Aは、一般社団法人全国銀行協会のホームページで公表されています。平成26年2月1日から制度がスタートしており、法的な拘束力や強制力はないものの、中小企業・経営者・金融機関が自発的に尊重し、遵守することが期待されています。

では、この経営者保証ガイドラインは、M&Aの場面において、どのように活用されるのでしょうか。なお、本稿では基本的には法人の株式譲渡を念頭に置きますが、事業譲渡でもほぼ同様のことが当てはまります。

参考:一般社団法人全国銀行協会『「経営者保証に関するガイドライン」とは』

 

経営者保証ガイドラインの制度趣旨と概要

経営者保証ガイドラインの制度趣旨概要は次のとおりです。

中小企業の経営者保証には、経営への規律付けや信用補完として資金調達を容易にしてくれるという面があります。他方で、経営者による思い切った事業展開や、経営が窮境に陥った場合に早期の事業再生に着手することをためらわせる要因となっているなど、企業の活力を阻害する面もあるとされています。

そこで、経営者保証ガイドラインでは、このような経営者保証の課題をふまえ、①融資時における主たる債務者・保証人・対象債権者という当事者それぞれにとって合理性が認められる保証契約のあり方等を示し(いわゆる「入口場面」)、また、②主たる債務の整理局面(いわゆる「出口場面」)における保証債務の整理を公正かつ迅速に行い、経営者の再チャレンジを容易にするためのルールを定めています。併せて、③事業承継場面についても、新旧両経営者を保証責任から解放するための要件等を定めています。

つまり、経営者保証ガイドラインは、大きく3つの場面において、経営者保証の考え方について示していることになります。

 

平成25年6月14日に閣議決定された日本再興戦略では、新事業を創出し、開・廃業率10%台を目指すための施策の一つとして、「個人保証制度の見直し」が掲げられています。経営者保証ガイドラインは、この理念を具体化したものでもあり、上記の各場面において一定の要件のもとに経営者を保証責任から解放することで、経済の活性化を目指すための前向きな制度であるといえます。

 

M&Aの買い手にとっての経営者保証ガイドライン

続いて、M&Aの当事者にとっての経営者保証ガイドラインの活用場面について説明します。まず、M&Aの買い手にとっての活用場面は次のとおりです。

 

1.経営者保証に依存しない融資

買い手が金融機関等からM&Aをするための資金の融資を受ける際、経営者保証なしで融資を受けられる可能性があります(入口場面)。経営者保証ガイドラインには、「経営者保証に依存しない融資の一層の促進」という項が設けられ、経営者保証に依存しない融資慣行の確立が進められています。

なお、この考え方をさらに押し進め、令和4年に「経営者保証改革プログラム」が策定されました。金融機関向けの金融庁の監督指針等が改正され、経営者保証に依存しない融資慣行の確立を更に加速させることとされています。

信用保証協会に対しても、経営者の取組次第で達成可能な要件を充足すれば、保証料の上乗せ負担等により経営者保証の解除を選択できる制度が創設されることとなりました。

 

2.M&A後の新旧両経営者の保証

M&Aで買った会社の旧経営者が保証債務を負っていた場合、売り手が保証し続けるのでも買い手が引き継ぐのでもなく、保証を解除してもらうことが考えられます。

買い手からすれば、自分が行った借入れではないわけですから、保証責任を負わずにすむことで、ある程度思い切った経営ができるようになるといえます。特に事業承継場面においては、「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」も策定されており、金融機関は、原則として、前経営者・後継者の双方から二重には保証を求めないことなどが定められています。

 

3.経営者保証から解放されるための要件

これらのような場面で経営者保証から解放されるための基本的な要件として、経営者保証ガイドラインでは、対象事業者について、①法人と経営者との関係の明確な区分・分離、②財務基盤の強化、③財務状況の正確な把握・適時適切な情報開示等による経営の透明性確保、という3つが定められています。

要は、経営者保証に頼らずとも、事業の収益で借入れの返済が可能だということを示せるかどうかがポイントとなります。

【経営者保証から解放されるための3つの要件】

①法人と経営者との関係の明確な区分・分離

②財務基盤の強化

③財務状況の正確な把握・適時適切な情報開示等による経営の透明性確保

 

M&Aの売り手にとっての経営者保証ガイドライン

次に、M&Aの売り手にとって、経営者保証ガイドラインの活用場面は次のとおりです。

 

1.M&A後の保証債務からの解放

売り手にとっては、会社や事業を売ってそれで終わりではありません。旧経営者が借入れの保証債務を負っていた場合、その保証債務から解放されてはじめて、事業をすべて承継したと言えます

もし経営者保証が解除されなければ、将来買い手の経営がうまくいかなかったときに、その事業から離れたはずの売り手が保証責任を負担しなければならなくなってしまうことになります。

もちろん、保証契約を解除するか否かの最終的な判断は、債権者である金融機関等が行います。ただ、経営者保証ガイドラインは、上記で述べたように保証契約を解除するための要件等を定めており、金融機関等との交渉のための大きな要素となります。前述の「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」も参考になります。

なお、本稿執筆時点では、M&A後に売り手の保証契約が解除されないことによるトラブルを防止するため、買い手や仲介・FA、M&Aプラットフォーマーに対して留意事項を示すこととするよう、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」の改訂が検討されています。

 

2.主たる債務の債務整理時の保証履行

経営者保証ガイドラインは、事業の債務整理時で最も活用されるといえるでしょう(出口場面)。

例えば、債務超過企業がスポンサーや引継ぎ先に事業を譲渡し、残った法人等の債務整理をする際、事業譲渡対価で返済しきれない借入金があると、本来であれば保証人に請求がされます。しかしながら、保証人個人では弁済できないことがほとんどであり、経営者保証ガイドラインが策定される前までは、経営者は破産せざるを得ませんでした。

そこで、経営者保証ガイドラインでは、経営者の再チャレンジを容易にするため、経営者保証ガイドラインに則った一定の弁済さえ行えば、破産せずに債務整理を行える可能性があること、そして破産した場合よりも多くの資産を手元に残せる可能性があることが定められています。

事業が譲渡できずに廃業する場合であっても、「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」が策定されており、参考になります。

 

最後に

以上のように、経営者保証ガイドラインは、M&Aの売り手・買い手双方にとって大きな意義があります。特に売り手にとっては、譲渡した事業の保証責任から解放されるために非常に重要な制度となっています。

事業を譲渡したのに責任だけがいつまでも残ってしまうという事態にならないように、専門家の支援のもと、経営者保証ガイドラインを活用しましょう。

 

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